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  • ランディー・チャネル宗禜さん
  • 茶会を開くチャネルさん
  • お茶をたてるチャネルさん
  • 京都にあるカフェ「らん布袋」

January 2021

自らを磨き上げる「茶の道」

ランディー・チャネル宗禜さん

カナダ出身のランディー・ チャネルさんは、30年以上前に武道を学ぶために来日して、今や、宗榮(そうえい)を名乗る茶道家として活躍している。

茶会を開くチャネルさん

「茶道には『一期一会』という言葉があり、「一生に一度の出会い」という意味で理解されています。これは、二度と訪れない“今”の瞬間を大切に思う心のことで、茶事や茶会では主人も客もその同じ心で臨みます。そうした人と人との交流が、茶道の一番の魅力だと思います」

そう語る、カナダ出身のランディー・チャネル宗榮(そうえい)さんは、茶道の代表的流派の一つである裏千家の教授の資格を持つ茶道家である。

香港でカンフーを通じて文武両道という言葉を知り、武道を学ぶために来日したチャネルさんは、長野県松本市に住み、剣道、弓道、居合道、薙刀(なぎなた)、二刀流など武道漬けの日々を送り、その後、茶道を本格的に学ぶために京都へと移り、30年以上日本に住み続けている。チャネルさんが興味を抱いた「道」とは、単なる技術の習得や勝ち負けなどの結果にとらわれず、その過程を経て精神的な成長を求める生き方を表している。武道だけではなく伝統的文化や芸術の中にも「芸道」と呼ばれ、「道」の字がつくものがある。それは例えば華道であり香道である。この両方に通じることを「文武両道」と言う。チャネルさんは松本で、剣道や弓道の道場に通う傍ら、茶道、書道のほか、箏(こと)などの伝統器楽の稽古にも励むようになった。なかでも、特にチャネルさんの心を捉えたのが茶道だった。

「面白いことに、茶道の水指を持つカタチと剣道の中段の構え、そして弓道の弓を引く構えは同じもので、上半身の基本の姿勢は一緒なのです。背筋をまっすぐに伸ばし、腕は円形のように弧状とすると、体にしっかりと芯ができます。類似点は体の動きや姿勢にとどまりません。茶道は禅の思想に深くしみ込んでいます。「お茶と禅は一体のもの(一味)だ」と訳される「茶禅一味」という言葉もあります。

茶道の四つの精神、『和(調和)敬(尊敬)清(清浄)寂(静けさ)』は、剣道など日本の武道全てに共通する精神でした」とチャネルさんは言う。

お茶をたてるチャネルさん

チャネルさんは1993年に京都に移り、裏千家学園茶道専門学校で本格的に茶道の勉強を始めた。1996年に卒業し、1999年に15代家元から直々に「宗榮」という茶人としての名前を授かった。「栄える」という字を戴いたその名には「末永く活躍してほしい」との願いが込められている。

現在、チャネルさんは、京都市内に居を構え、京都御所の東側にある梨木(なしのき)神社で茶道を教える。その門人には日本人が多いという。その梨木神社には京都の三名水に数えられる「染井」の井戸があり、そのほんのり甘くまろやかな水が茶の湯に適していると言われ、その水でお茶を点てるのである。

また、チャネルさんは、京都市内にカフェ「らん布袋(ほてい)」を開いている。築100年を超える町家を改修したカフェでは、京田辺産のオリジナルの抹茶で香りが良く滑らかに泡立つ抹茶や抹茶スイーツを提供している。また、初心者でも気軽に参加できる茶道体験や茶会を開催している。茶会のもてなしに欠かせないのが、器などの道具である。チャネルさんは、長年蒐集(しゅうしゅう)したたくさんの道具の中から、その茶会ごとに、テーマにあわせて、お客様が楽しめるような道具を組み合わせたり、カフェでも月ごとに変わる茶碗で茶道を知らなくても抹茶を身近に感じられるよう工夫している。そして、チャネルさんは、茶会の間口を狭めることのないよう、畳に正座するのが苦手な人たちや、初心者が気軽に参加できるように、椅子に座って茶を楽しむ茶会(立礼(りゅうれい)の茶会)も開き、茶の楽しさを伝える話を心掛けている。

京都にあるカフェ「らん布袋」

「茶道を難しく捉える必要はありません。まずは客として茶を楽しむところから始めれば良いのです。少しずつ茶道の精神を学んでいけば、その奥深さに気が付くでしょう。『道』にはここで終わりという到達点がない。私もまだまだ修養を続けなければなりません。そこがまた、茶道の魅力なのです」とチャネルさんは語る。

茶会という一期一会の出会いを重ね、茶を楽しみ茶の道に触れつつ、精神を磨いていく、チャネルさんの笑顔が、その道を歩む楽しさを体現している。