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  • 本殿4棟が船団のように配置されている様子が分かる上空からの写真
  • 4棟の本殿がある住吉大社
  • 妻入り式切妻造屋根の国宝「住吉造」の本殿
  • 第二本殿の金扉

January 2021

海の神をまつる神社

4棟の本殿がある住吉大社

「すみよっさん」の愛称で親しまれて信仰を集める大阪の住吉大社は、日本古来の神社の建築様式を今日に伝えている。

本殿4棟が船団のように配置されている様子が分かる上空からの写真

大きな内海である大阪湾のお陰で古くから栄えた大阪は、今なお日本を代表する商都である。その繁栄を支えてきたのが、湾の奥に位置する大阪港を中心とする内外との海運であり、その海上交通の守護神として人々が崇拝してきたのが211年に創建されたとされる住吉大社である。現在は海から8キロメートル余り内陸にあるが、当時は海辺に建ち、7世紀の遣隋使や、9世紀まで続いた遣唐使、さらに江戸時代の廻船(かいせん)業者らが渡航の無事を祈願してきた「海の神」である。

その住吉大社の社殿の大きな特徴は、国宝に指定されている四棟の本殿に見ることができる。日本神話において海中から出現されたとされる三柱の神々と、大社を創建された神功(じんぐう)皇后を祀る。第一から第四まで、それぞれの祭神を祀る本殿が全て大阪湾を向いて建てられている。第一、第二、第三本殿が縦直列に、第四本殿は第三本殿の横に並ぶ独特の配列で、海原をゆく船団のような古代の祭祀形態を伝えるデザインである。その海岸線に江戸時代の廻船業者らが寄進した石灯籠が600基余り建ち並び、その火を頼りに彼らは運行してきたと言われている。内外の物資や文物を集め、商人の町「大阪」の繁栄を築いた人々を支え見守ってきた神社であり、今も1月1日から3日の初詣だけで、例年であれば約200万人が訪れるほどの信仰を集めている。

「大阪では親しみを込めて“すみよっさん”と呼び、人々の新年はすみよっさんから始まるというのが伝統です。住吉大社は、人生の節目となる儀礼の場としてだけではなく、普段の生活でも大阪の人々の心のよりどころとなっています」と、住吉大社の河野充浩さんは語る。

妻入り式切妻造屋根の国宝「住吉造」の本殿

その約1万平方メートルの住吉大社の境内に建つ、多くの建物群が長い歴史を今に伝えている。

いずれも国宝建造物に指定され、なかでも四棟の本殿は、「住吉造(すみよしづくり)」と呼ばれる古来の様式で建てられている。その特徴は薄く剥いだヒノキの樹皮を幾重にも重ねる「桧皮葺(ひわだぶき)」の切妻造屋根である。屋根の四角が反り上がる羽黒山五重塔(Highlighting JAPAN 2020年5月号)や正福寺地蔵堂(同7月号)と異なり、反りのない直線的な勾配で、室内は外陣(げじん)と内陣(ないじん)と呼ばれる二間に分かれ、柱は「丹塗(にぬり)」と呼ばれる朱塗り、壁は貝殻を磨り潰した塗料を使う「胡粉塗(ごふんぬり)」 で白く仕上げられている。

第二本殿の金扉

これら現存する本殿は1810年に建てられたものだが、それ以前の古代からの建築様式をよく伝えており、神社建築史上の価値も極めて高い。

昨年(2020年)12月に日本がユネスコ無形文化遺産に申請していた「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」の登録が決まった。その17の選定保存技術には、建造物の修理から材料に関わる技術が指定され、住吉大社を特徴づける本瓦葺や桧皮葺、桧皮の採取なども指定されている。大阪の歴史を物語る大社の歴史的価値の保存にとっても、大きな前進となったと言える。