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INDEX

  • 木目金の板
  • 同じ木目金からカットされた指輪
  • 木目金の板から切りとられ、形作られる結婚指輪「つながるカタチ」
  • 刀と木目金の技術を使って作られた鐔
  • 異なる色が組み合わさった金属の板が、木目状の文様を生み出すために、叩きの前に、ねじられる。

April 2021

伝統技法を用いた指輪

木目金の板

刀の鐔(つば)を作るために使われてきた伝統的な日本の金属加工技術が今、婚約や結婚の指輪などの制作に応用されている。

刀と木目金の技術を使って作られた鐔

繊細な細工を施された指輪の表面に、木目のような自然な文様がある。この指輪は、今から400年前に、刀の鐔を装飾するために発達した「木目金(もくめがね)」の技術を用いて作られている。木目金は、異なる色の種類の金属を何層も重ね合わせ、加熱接合した金属に、彫りや叩きを繰り返すことによって木目状の文様を創り出す日本発祥の金属加工技術である。

「杢目金屋(もくめがねや)」の代表取締役の髙橋正樹さんが、指輪の制作に応用するために、この技法を改良することに成功した。髙橋さんは「東京芸術大学の彫金科で木目金について学び、その技術に魅了されたので1997年に杢目金屋を創業しました。武士の帯刀を禁じた廃刀令(1876年)後、木目金の技術は廃れていた時期もあったようですが、職人の間でその特殊な技術は、伝承されていました。この技術が再び埋もれることなく、現代の生活の中でも活かされる方法を模索してきたのです」と語る。

異なる色が組み合わさった金属の板が、木目状の文様を生み出すために、叩きの前に、ねじられる。

昔の木目金の技法では一般的に、職人は金、銀、銅などの素材を使い、最後の工程の着色で、薬液で煮ることで金属の表面に酸化被膜を形成させていた。しかし、この方法では、表面の薄い被膜がはがれてしまうため、日常的に身につけるジュエリーに活用するには向かない。そこで同社は、この化学的着色の工程を行わず、ゴールド、シルバー、プラチナなど異なる色の金属を組み合わせて、複雑な色模様を表現した指輪を制作している。

金属を重ね、加圧・加熱結合し、叩き、ねじり、削り、磨く…、杢目金屋はその全ての工程を手作業で行うため、完成した文様に二つと同じものはない。

木目金の板から切りとられ、形作られる結婚指輪「つながるカタチ」

同社の革新的な「つながるカタチ」と名づけられた結婚指輪は、1枚の木目金から、一部分がつながっていて、木目模様も連続している2つのリングをつくる。それを2人自身の手で実際に、2つに分かち合う。この指輪は2015年に「グッドデザイン賞」(Highlighting JAPAN 2017年8月号参照)を受賞し2019年には「ものづくり大賞」の経済大臣賞を受賞。世界3大デザイン賞である「reddotデザイン賞(ドイツ)」「iFデザイン賞(ドイツ)」「IDEAデザイン賞(アメリカ)」においても評価されている。

同社には、桜の花びらの形にカットしたダイアモンドをはめ込んだ、様々な婚約指輪や結婚指輪もある。非常に日本的なモチーフのこれらの指輪は、日本発の工芸として木目金を世界に広げたいとの思いから制作している。

同じ木目金からカットされた指輪

「漆器や漆芸は、海外では時に“japan”とまで呼ばれ、日本の象徴的存在となっています。木目金の魅力を世界の人たちに知っていただき、やがては漆のように日本を象徴する技術として認識されることを切望しています」

髙橋さんはこう語った。