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INDEX

  • 炊き込みご飯(左)、肉や野菜の串カツ串(中央)、生春巻き(右)など、GAP食材を使った作られた生徒たちの料理
  • 「おもてなしコンテスト」のために準備した料理を手にする福島県立福島明成高等学校の生徒たち
  • 福島市内に住むベトナム人の方々を招いた交流会
  • 地元で育てられたGAP認証のモモやリンゴをふんだんに使ったムースケーキ

June 2021

「GAP食品」でおもてなし

福島市内に住むベトナム人の方々を招いた交流会

東京オリンピック・パラリンピック競技大会に参加する国・地域の人々と交流する「ホストタウン」の取組の一環として、全国の農業高校の生徒たちがGAP(Good Agricultural Practiceの略。農業生産工程管理)認証の食材を用いたおもてなしに取組んでいる。

「おもてなしコンテスト」のために準備した料理を手にする福島県立福島明成高等学校の生徒たち

選手村などで活用される食材は大会組織委員会により定められた持続可能性に配慮した調達コードに基づいて調達されることになっている。農産物、畜産物、水産物でそれぞれ調達コードが定められており、食品安全、環境保全、労働安全といった要件(畜産物はこれらに加えてアニマルウエルフェア*も要件になっている)を満たした認証としてGAP認証などが位置付けられている。近年、グローバルな大手流通事業者や食品メーカーが取引の条件にGAP認証を求める傾向にあり、日本でも積極的にGAPに取り組む生産者が増えている。

内閣官房東京オリンピック・パラリンピック推進本部事務局は、調達コードに位置付けられたGAP認証の普及が東京大会のレガシーとなるといった観点から、2019年度に「GAP食材を使ったおもてなしコンテスト」を実施した。これは全国の農業高校などの生徒たちが、自分たちの手で生産したGAP食材を用いた料理を開発しホストタウンに来訪する選手等に「おもてなし」をするといった企画を提案してもらうものである。この背景として、東京大会の調達コードにも位置付けられたGAP認証を取得する動きが全国の農業高校で進んだことがあげられる。コンテストには全国から40チームが参加したが、このうち5校が福島県からのエントリーだった。福島県はGAP日本一宣言をして以降、生産者や農業高校のGAP認証取得が進み、今や県内の全農業高校がGAP認証を取得するまでになっている。

その一つ、福島県立福島明成(めいせい)高等学校は、1896年創立の長い伝統をもつ農業高校だ。同校には牧草地や関連施設も含めると約30ヘクタールの農地があり、参加チーム中で最多の21品目の農産物でGAP認証を受けている。

同校のある福島市はベトナム社会主義共和国(以下「ベトナム」)のホストタウンになっており、コンテストに参加した当時の2年生8名は、まずはベトナムの選手の方々をおもてなしすることを念頭に料理を考案することとした。そして、GAP食材をどう生かすか、料理のベースを日本料理とベトナム料理のどちらにするか、そこからまず検討し、ベトナム料理をベースにしながら、日本らしさや福島らしさが出るような料理とするべく、アイディアを出し合った。

生徒たちの指導に当たった教諭の舘下大恵(たてした・ひろえ)さんは「ベトナムの文化や、料理の特徴について調べたり、料理に使用する食材についても多くの先生からアドバイスをもらいながら、生徒たちは放課後、学校に残ってメニュー作りに、試行錯誤を繰り返していました」と当時の様子を振り返る。

こうしてできあがったのが、古くからベトナムの人々が理想と考える「五味・五彩・二香」**を備えたおもてなし料理である。ベトナムの主食米や米粉を使った生春巻き、炊き込みご飯に、多彩な肉や野菜を素材とする串カツ、それに、福島県特産のモモやリンゴをふんだんに使ったロールケーキとムースケーキの5品にまとめたのである。

炊き込みご飯(左)、肉や野菜の串カツ串(中央)、生春巻き(右)など、GAP食材を使った作られた生徒たちの料理
地元で育てられたGAP認証のモモやリンゴをふんだんに使ったムースケーキ

新型コロナウイルスの影響によって、実際にベトナム選手たちをもてなすことはできなかったが、生徒たちの料理はコンテストのWEBページなどで紹介されたほか、2020年1月に開催された、福島市内に住むベトナムの人々を招いた交流会で振る舞われたのだった。自分たちの考案した料理を通じて、ベトナムの人々と交流を持つことができるとともに、福島明成高校が生産するGAP食材の素晴らしさについても理解が広がったのである。

今春、福島明成高校を巣立っていった8人の挑戦は、彼ら自身にとって貴重な経験になったばかりではなく、食を通じた交流が、国と国との理解へとつながることを示す貴重な一例となったに違いない。

* サプライヤーは「快適性に配慮した家畜の飼養管理のため、畜産物の生産に当たり、アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針に照らして適切な措置が講じられている」畜産物の調達を行わなければならない。(持続可能性に配慮した農産物の調達基準)
** ベトナム料理の理想の形を表す言葉。五味は、塩味、酸味、辛味、甘味、コクを指し、五彩は、白黄緑赤黒の色彩のこと。そして二香は、香りと香ばしさを表している。