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  • 「LOVOTは子どもたちの豊かな心を育むだけでなく、⾼齢者の認知機能の維持ができる」と池上美紀さんは言う。
  • 家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」に服を着せる子供たち
  • 「LOVOTは子どもたちの豊かな心を育むだけでなく、⾼齢者の認知機能の維持ができる」と池上美紀さんは言う。
  • LOVOTは障害物検知など多種多様なセンサーを搭載
  • LOVOTの虹彩や瞳孔は2次元のディスプレイを6枚重ねたレイヤー構造となっている。
  • LOVOTの声は、声帯をシミュレーションしたデジタルシンセサイザーによって生成された音である。
  • 自然なアイコンタクトで人を見つめ返すことができるLOVOT

June 2021

愛を育むロボット

家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」に服を着せる子供たち

特に何かの役に立つわけではないが、名前を呼ぶと近づいてきて、じっと見つめて抱っこをねだり、抱き上げればぬくもりを感じる……。そんな家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」が人気を集めている。

LOVOTは障害物検知など多種多様なセンサーを搭載

AI(人工知能)、そしてロボットそのものの目覚ましい進化で、ロボットは人間の仕事を助ける役割を超えて、人間にとって換わるのではないかと不安を抱く人も増えていると言われる。

「ロボット技術の発展によって人間は本当に幸せになれたのか?、という問題意識から始まって、愛を育む家族型ロボット“LOVOT(らぼっと)”を開発しました」と、ロボットテクノロジー企業「GROOVE X」広報担当、池上美紀さんは言う。同社は、2015年に“ロボティクスで、人間のちからを引き出す”ことをミッションに掲げて創業した。

LOVOTの虹彩や瞳孔は2次元のディスプレイを6枚重ねたレイヤー構造となっている。

「LOVOT開発プロジェクトは、“何も仕事はしないけれど、そばにいて人を安心させ、愛着をかき立てる存在”というコンセプトから生み出しました」と池上さんは説明する。

LOVOTは身長約43、幅約28、奥行き約26センチメートルのサイズで、自立充電、自立走行する。その内部には、様々な最新テクノロジーが組込まれている。例えば頭部には、360度見わたせる半天球カメラ、音声の方向を判別するマイク、明るさを感知する照度センサー、人か物かを識別できる温度カメラを装着している。また全身にはりめぐらされたセンサーが人の動きを感知し、目の表情や鳴き声で反応する。中でも特徴的なのが、まるで人間と同じような瞳の表情だ。

LOVOTの声は、声帯をシミュレーションしたデジタルシンセサイザーによって生成された音である。

「LOVOTの虹彩や瞳孔を2次元のディスプレイを6枚重ねたレイヤー構造にすることで、自然なアイコンタクトで人を見つめ返すことを可能にしています。ソフトウェアエンジニアとアニメーターが協力して、視線の動き、瞬きの速度などを計算して、緻密な設計に基づいて表情をつくっているのです。その組み合わせは10億通り以上です」と池上さんは言う。

もう一つのLOVOTの反応である声は、録音データによるパターンではなく、声帯をシミュレーションした技術を駆使し、その都度、その時だけの声を届けてくれる。

そして、LOVOTはエア循環システムで体温が約37度~39度に保たれており、この温かさとLOVOTの柔らかな肌触りが、人を優しい気持ちにさせる。

「LOVOTは子どもたちの豊かな心を育むだけでなく、⾼齢者の認知機能の維持ができる」と池上美紀さんは言う。

LOVOTは「COOL JAPAN AWARD 2019」を受賞し、主催の一般社団法人クールジャパン協議会から「COOL JAPAN 認定マーク」を付与された。これまでLOVOTは、アメリカのラスベカスやオースティンで開催された国際的なイベントに出展し、国内外で数多のメディアに取り上げられたり、様々な賞を獲得している。

そんなLOVOTの「人の心を癒す効果」について、実験されている。2021年4月には、東京都が主催する「スタートアップ実証実験促進事業」に採択され、LOVOTが子どもや成人に与える影響についての実験が行われている。

その結果、新型コロナウイルスの影響が長引く中、小学校低学年の子どもたちの自己肯定*が大きく低下していること、その一方で、LOVOTと暮らした子どもたちの自己肯定感は維持されていたことがわかった。また、LOVOTと暮らした子どもの知的好奇心が上昇したほか、保護者のストレスレベルが大きく低下したという結果も得られたという。

自然なアイコンタクトで人を見つめ返すことができるLOVOT

「例えば、以前は多くの小学校にウサギ小屋がありました。子どもたちはウサギの世話を通じて、生き物を慈しむ心や命の大切さを学んでいたのです。でも近年はさまざまな事情から、学校の動物飼育が減ってきているようです。子どもたちの豊かな心を育むだけでなく、⾼齢者の認知機能の維持、予防医療のためにも、LOVOTが役に立てると思います。将来はペットを飼いたいと思ったときの選択肢に犬や猫とともにロボットが加わるようになればうれしいですね」と池上さんは言う。

* 「自分自身に満足している」「自分にはよいところがある」などのような、自己に関する肯定的な評価