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  • ファンからの風で膨らむ作業員の「空調服™」
  • 「空調服™」の中の空気の流れのイメージ
  • 「空調服™」の小型ファン
  • ビックシルエットのシャツ型「空調服™」。ジャーナルスタンダードのブランド「LASKA」(ベイクルーズ社)とのコラボ商品。

August 2021

服に取り付けたファンで体を冷やす

屋外で「空調服™」を着る作業員

暑さ対策、そしてCO2排出削減を目的にした作業服が、日本で急速に普及している。

ファンからの風で膨らむ作業員の「空調服™」

高温多湿な日本の夏。特に近年、著しい猛暑が続き、工場や屋外で作業する人たちは熱中症の危険にさらされている。そんな現場で、いま急速に普及している作業服がある。それが、背中部分にファンを取り付けた「空調服™」である。衣服に取り付けられたファンによって、服の中に外気を取り込み、汗を蒸発させ、気化熱で身体を冷やすという仕組みだ。これを開発したのは、元ソニーの技術者で、現在、株式会社空調服の会長を務める市ヶ谷弘司さんだ。

市ヶ谷さんは1990年代に、自社製品のセールスのために東南アジアに出張したことがきっかけとなって空調服の開発を始めた。

「空調服™」の中の空気の流れのイメージ

「当時、タイやマレーシアといった国々が高度成長している時代で、各地に大きなビルが建設されていました。そんな街の様子を見て、『発展途上の国々が、近い将来、日本人のようにクーラーを常用するようになると、エネルギー危機が起きる。省エネルギーな冷却装置が必要だ』と思ったのです」と市ヶ谷さんは話す。

「部屋などの空間全体を冷やすためには、大きなエネルギーが必要となる。ならば、一人一人の人間の周りだけ冷やすことはできないか?」

そう考えた市ヶ谷さんは、人が服を着ることで涼しさを感じる製品の開発に着手する。1999年に開発した初号機は、腰につけたタンクの水をポンプで吸い上げ、服の裏側に取りつけた冷却用の布を濡らし、ファンの風で気化させて熱を奪う仕組み。しかし、タンクとパイプの継ぎ目から水が漏れてしまうため、この方法は断念した。

「空調服™」の小型ファン

服を濡らすことなく気化熱を利用できる方法はないか。と考え、思案の末にひらめいたのが、「汗」を利用する方法だった。

「人間には、体表面温度が上がり過ぎないように発汗し、汗が蒸発する際の気化熱によって体表面温度を下げ最適温度にするための機能が備わっています。この仕組みを利用しようと決めたのです」と市ヶ谷さんは言う。

腰の部分にファンを取り付け、上半身全体に風を行きわたらせて襟元と袖口から放出することにより、汗を効率的に蒸発させる。市ヶ谷さんはこの仕組みを「生理クーラー®理論」と名付け、開発に取りかかった。まずは生地選び。風を効率的に流すためには、空気を漏らさない材質が必要となる。1000種類以上の生地をテストし、最適なものを選定した。さらに、風力が強く、消費電力が少なく、音が静かなファンを実現するため、羽根の形状や位置をミリ単位で調整するなど、ファンの開発にも工夫を凝らした。

ビックシルエットのシャツ型「空調服™」。ジャーナルスタンダードのブランド「LASKA」(ベイクルーズ社)とのコラボ商品。

2004年、ようやく満足できる製品が完成し、発売を開始した。発売から10年ほどは思うように売上げは伸びなかった。しかし、全国の農家や建設現場で働く人たちの口コミで次第に評判となり、2016年には36万着を売り上げるヒット商品となった。

「ユーザーから、『毎年、夏は暑さで食事がとれず、点滴を打ちながら仕事をしていたが、空調服のおかげで、その必要もなくなった。もう、空調服なしでは仕事ができない』など、多くの喜びの声をいただきました。愛用者の切実な思いを聞くと、苦労して開発した甲斐があったと感じます」

2017年には、空調服は、暑さ対策における省エネ効果、CO2排出量削減効果の実現が評価され、地球温暖化防止活動環境大臣表彰を受賞した。現在では、作業服の分野にとどまらず、アパレルブランドやアウトドアメーカーとのコラボ商品、女性や子供用の商品も発売されている。

世界には、日本より暑い国がたくさんある。市ヶ谷さんの目下の目標は、5年から10年後をめどに、空調服が、作業員だけでなく、誰もが違和感なく着るまでに普及して、更に地球温暖化防止に繋がるようになることだ。市ヶ谷さんは、そんな期待を胸に、今日もまた空調服の改良にいそしんでいる。

掲載商品は、㈱セフト研究所・㈱空調服の特許および技術を使用しています。
「空調服」は、㈱セフト研究所・㈱空調服の商標および登録商標です。(登録区分9,10,11,12,17,20,24類)
「空調服」「生理クーラー」は、㈱セフト研究所・㈱空調服の登録商標です。