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  • 長嶋俊介・鹿児島大学名誉教授
  • 頂上付近に雪が積もった屋久島の宮之浦岳
  • 五島列島の野崎島にある1908年に竣工した旧野首教会
  • 鹿児島県の「悪石島(あくせきじま)のボゼ」
  • 愛媛県の亀老山展望台からの瀬戸内海の島々の眺め
  • 佐渡島の能舞台

November 2021

多様な日本の島々

長嶋俊介・鹿児島大学名誉教授


日本は、世界でも有数の島国であり、島の数が極めて多い。長嶋俊介・鹿児島大学名誉教授に日本の島の特徴について話を伺った。

頂上付近に雪が積もった屋久島の宮之浦岳

長崎先生は国内外の数多くの島を訪れていますが、日本の島の特徴を教えてください。

日本は大陸から隔絶しており、国土の全てが島で構成されています。その島々が東西、南北に非常に広範囲に散らばっているのが大きな特徴です。多くの日本人は「島」というと北海道、本州、四国、九州、沖縄島以外の小さな島々を思い浮かべますが、そうした島は非常に多く、世界でも有数の島国です*。

また、日本の島々の多くは、それぞれ、固有の自然や文化を持ち、多様性に富んでいることが特徴です。その固有性が国際的にも高く評価され、ユネスコの世界遺産に登録されている島もあります。例えば、世界自然遺産の鹿児島県の屋久島は、海岸から一気に標高約2000メートルの山へと続く急峻な地形を持っています。海岸は亜熱帯の気候ですが、山頂では冬に雪が降ります。一つの島の中で、南北に長い日本の気候の全てがあるような島なのです。また、長崎県と熊本県の世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」は、キリスト教の信仰が禁止されていた江戸時代、日本の伝統的な宗教や一般社会と共生しつつ、信仰を密かに継続した潜伏キリシタンの伝統を物語る遺産群ですが、五島列島などの島々の集落が構成資産となっています。

五島列島の野崎島にある1908年に竣工した旧野首教会

世界遺産だけではなく、同じくユネスコの無形文化遺産に登録されている「来訪神:仮面・仮装の神々」には10件の年中行事が登録されていますが、実は、そのうちの4件、鹿児島県薩摩川内市の「甑島(こしきじま)のトシドン」、同県三島村の「薩摩硫黄島のメンドン」、同県十島村の「悪石島(あくせきじま)のボゼ」や、沖縄県の「宮古島のパーントゥ」は、島で行われている行事です。いずれも、島民が奇抜な仮面や仮装を身に付け来訪神となって村落内を巡り、怠け者をいさめたり、人々の邪気を払ったりするものです。

鹿児島県の「悪石島(あくせきじま)のボゼ」

新型コロナウイルス感染症の流行収束後、海外の方々に訪れることをすすめたい島を教えてください。

日本には宮城県の松島、長崎県の九十九島(くじゅうくしま)など、海に浮かぶ小さな島々によって生み出される美しい景色を楽しめる場所が多くありますが、その中でも特に、瀬戸内海の島々がおすすめです。瀬戸内海とそこに浮かぶ島々の美しさは、1823年にオランダ商館付医師として来日したシーボルトがその美しさを著作に記したことが早い例ですが、日本と世界との交流が活発化した19世紀の後半になると、海外でも広く知られるようになりました。多くの欧米人が日本を訪れた際、瀬戸内海へ行って実際にその景色を見て、海と島々の美しさを絶賛し、旅行記などに記しています。1934年には、その環境や景観を守るために、日本最初の国立公園の一つに指定されました。近年は、直島(なおしま)など、瀬戸内海の島々は現代アートの会場として国際的に有名となっています。2010年からは、国内外の著名アーティストが参加する瀬戸内国際芸術祭が3年ごとに開催されており、前回の2019年には約110万人もの人が来場しました。

愛媛県の亀老山展望台からの瀬戸内海の島々の眺め

私が現在住んでいる新潟県の佐渡島も、自然や文化が豊かで、海外の方々が楽しめる島です。見どころの一つは伝統芸能です。実に様々な伝統芸能が長年にわたり住民によって受け継がれてきました。例えば、日本で600年以上の歴史をもつ歌舞劇である能です。島内には約30棟の能舞台がありますが、これは全国の能舞台の約3分の1にあたります。また、鬼の面を被った人が太鼓に合わせて踊る鬼太鼓(おんでこ)のグループも約120組が活動しています。佐渡島では、一年を通じて、こうした伝統芸能を祭りや舞台で見ることができます。特に1988年から毎年夏に開催されている国際芸術祭「アース・セレブレーション」が有名で、佐渡島を拠点とする世界的な太鼓芸能集団「鼓童」など、国内外のアーティストによるパフォーマンスを楽しめます。

佐渡島の能舞台

日本は離島の発展のためにどのような政策を実施してきたでしょうか。

四方を海に囲まれ、面積が小さく、都市から遠く離れた離島は、かつて、インフラの整備が非常に遅れていました。こうした中、1953年に制定された「離島振興法」は離島の発展に大きく貢献しました。この法律により、離島に対する財政的な支援が強化され、電力、上下水道、港湾、道路、橋などのインフラの整備が進み、漁業や観光業といった産業の振興にもつながりました。

日本は、国内の離島だけではなく、太平り洋の島嶼(とうしょ)国に対して、インフラ、エネルギー、環境など様々な分野で支援を実施しています。その一つがごみ処理です。土地の限られた島嶼国では、ごみ処分場の不足、処分場からの悪臭や汚水などの問題が深刻です。そうした問題に解決するために、 JICA(国際協力機構。Japan International Cooperation Agency)は、「準好気性埋立構造」(福岡方式)**という廃棄物処分方法を、サモア独立国、バヌアツ共和国、パラオ共和国などの国々へ導入し、廃棄物の減量、悪臭の抑制に貢献しています。また、東京都八王子市はJICAの支援を受け、太平洋に浮かぶミクロネシア連邦でのごみ問題改善に協力しています。ごみ収集車の供与のほか、同市から派遣された職員によるごみ収集車の整備・点検の支援、及び率先して自らごみの回収の指導に当たる活動をしました。また、レジ袋の使用削減のための啓発活動などの取組を行っています。

日本の島のこれからの可能性について、どのようにお考えでしょうか。

日本は「人生100年時代」と言われるようになっていますが、今後、日本のみならず世界の人々の長寿命化が進む中、「人々が健康的な生活を長く送ることができる社会」をいかにつくっていくかが重要な課題です。この課題への対応という観点から、島は人々の健康づくりの場として高い可能性があると思います。例えば、鹿児島県の沖永良部島(おきのえらぶじま)や奄美大島(あまみおおしま)、三重県の賢島(かしこじま)などの島では、海水を使ったプールに入るなどの活動を通じて健康回復を図る海洋療法「タラソテラピー」の取組が行われています。また、鹿児島県徳之島は子宝と長寿の島と言われ、出生率が極めて高く、かつ、100歳以上の長寿者が多いことでも知られおり、独自の食生活や文化によるものではないかとして注目されています。人々の健康長寿に貢献し得るポテンシャルが島にはあります。これまで、離島は、都市部から行くのに不便で、隔絶されていることが欠点でしたが、リモートワークが奨励されているような今は逆に、そうしたことがむしろ長所になりつつあるではないでしょうか。都市で暮らしている人が離れ島を訪れると、日常の世界から遠く離れ、豊かな自然や独自の文化に接することで、心身ともにリフレッシュできます。新型コロナウイルス感染症収束後には、国内外の多くの人に日本の様々な離島を訪れて頂きたいです。

* 2021年「日本統計年鑑」(総務省統計局)によれば、国土構成島数は北海道、本州、四国、九州、沖縄を含んで6,852島である。なお、長嶋俊介名誉教授が、最新の国土地理院地図データに基づき、計算したところ外周100メートル以上の14,000島以上あるという。
** 「準好気性埋立」(福岡方式)は1970年代に福岡市と福岡大学で共同開発した廃棄物処分方法。処分場にパイプを張り巡らせ、そのパイプを通して、ごみから滲み出る汚水を排出させると同時に、外気を埋立地内に取り入れることで、ごみの中の微生物の活動を活発化させ、ごみの分解を促進するという仕組み。