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  • 山口真さんの作品「連獅子」
  • 日本の伝統的な人形をモチーフとした山口真さんの作品「お雛様」
  • 山口真さん
  • 山口真さんの代表的な作品の一つ、「クリスマスツリー」
  • 宮本宙也さんの作品「死神」
  • 山口真さん(後列の右端)の作品である人形を持つOrigamiUSAのコンベンション参加者
  • アメリカのニューヨークで開催されたOrigamiUSAのコンベンションで行われた山口真さんの講習会に参加した人々。山口さんは中列、左から3番目。

December 2021

折り紙の世界

山口真さん


紙を折って、様々な形を作り出す「折り紙」は、日本の伝統文化の一つである。折り紙作家で日本折紙学会事務局長、東京都内の折り紙専門ギャラリー「おりがみはうす」代表を務める山口真さんに日本の折り紙の歴史や特徴について話を伺った。

山口真さんの作品「連獅子」

日本の折り紙の起源について教えてください。

日本においていつ折り紙が始まったのかは、実ははっきりとは分かっていません。ただ、武家が政権を握っていた室町時代*に、贈り物や手紙を紙で包む時の折り方である「折形」(おりがた)が武家の礼法として発展し、その伝統は江戸時代**へと伝えられました。この折形が、現代につながる日本の折り紙の起源の一つと考えられています。

江戸時代に入ると、紙が大量生産されるようになり、遊戯としての折り紙が一般の人々にも広がります。18世紀初頭の浮世絵や着物の柄を紹介した書物には、現在も日本で最も一般的な折り紙作品である「折り鶴」が描かれています。1797年には、遊戯折り紙の本としては世界最古と言われる『秘伝千羽鶴折形』が出版されました。この本では、複数のつながった鶴を1枚の紙から折り上げる「連鶴」が紹介されています。

日本の伝統的な人形をモチーフとした山口真さんの作品「お雛様」

ヨーロッパでも、起源ははっきりとしていませんが、折り紙は作られていました。その一つが、スペインの「パハリータ」(スペイン語で「小鳥」の意味)と呼ばれる伝統的な折り紙です。パハリータの中では、その言葉通り、「小鳥」を模した作品が有名で、それは日本人にとっての折り鶴のように、スペイン人にとって馴染み深いものとなっています。

また、世界で初めて幼稚園を創設したことで知られるドイツの教育家、フリードリッヒ・フレーベル(1782-1852年)は、幼児教育の一環としてヨーロッパの伝統的な折り紙を取り入れました。この幼児教育としての折り紙は、明治時代(1868–1912)に日本が西洋を参考にして教育制度を作る中で、日本にも伝わりました。そして、日本で、日本とヨーロッパの伝統的な折り紙が幼稚園や小学校で教えられ、やがて、家庭でも日常的に親しまれるようになったのです。

いつ頃から日本の折り紙は世界に広がったのでしょうか。

日本の折り紙が、アートとして認識されて世界に広がったのは第二次世界大戦後でした。そこで大きな役割を果たしたのが、折り紙作家の吉澤章(1911-2005年)です。吉澤は、動物などをモデルにした生命感あふれる、芸術性の高い折り紙を次々と作り出しました。吉澤は世界各国で展覧会やセミナーを開催し、海外での折り紙の普及にも熱心に取り組みました。そのため、吉澤は、今でも、日本のみならず海外の折り紙作家からも尊敬されています。また、吉澤など世界中の折り紙作家と交流したアメリカ人のリリアン・オッペンハイマー(1898-1992年)は、アメリカでの折り紙の普及に努めるとともに、折り紙を表す言葉として、日本語の「origami」を用いることを提案しました。このお陰で、origamiが世界で共通して使われる言葉になったと言えます。

山口真さんの代表的な作品の一つ、「クリスマスツリー」

私が折り紙作家としてのキャリアをスタートさせた1970年代後半は、まだ、折り紙は海外では一般的ではありませんでしたが、近年は、様々な国で折り紙協会が設立されたり、折り紙のフェステイバルが開催されているので、海外のほとんどの人々が折り紙を知るようになりました。新型コロナウイルス感染症が流行する前は、私は、ほぼ毎年、折り紙の講習会や会議のために海外に行っていました。かつては、空港の入国審査官に「折り紙を教えに来た」と言うと、折り紙とは何かを尋ねられることも多かったですが、最近はそうしたこともほとんどなくなっています。

山口さんは、御自身が折り紙作家として活動されるとともに、これまでに約150冊の折り紙に関する著書を記されています。特に、どのような作品を作ることを心掛けていらっしゃいますでしょうか。

私は、誰もが作れるシンプルで、かわいい作品を作るのが好きです。紙の一部を切って作る作品にもユニークなものがありますが、基本的には紙は切らずに、1枚の正方形の紙を使って作ります。折り方を易しくし、デザインも美しくするために、複数枚の折り紙を組み合わせて一つの作品にすることもあります。例えば、折り紙の紙を作る会社の依頼に応じて作った、日本の伝統芸能である歌舞伎の演目で有名な「連獅子」をモチーフにした作品は、「上半身」と「下半身」をそれぞれ1枚の紙で作り、それらを組み合わせることで、1体の歌舞伎役者を表現します。また、私が折り紙作家となってから間もない時に作った「クリスマスツリー」は、大きさの違う5〜6枚の紙で作る「葉」と1枚の紙で作る「幹」を重ね合わせて1本の木を作ります。

嬉しいことに、これらは国内外で多くの人に作られており、私の代表作となっています。これからも、多くの人たちに愛されて、後世に伝承されるような作品を作っていきたいと思っています。

折り紙の世界の近年の動向を教えてください。

折り紙は日本固有のものではありませんが、折り紙の文化、技法を発展させてきたのは日本であると私は考えています。ただ、近年はインターネットを通じ、国境を超えて折り紙の情報が広がることで世界中に愛好者が増え、折り紙の世界がますます国際化していると言えます。その中で、非常に優れた、若い折り紙作家が国内外で登場しています。

特に近年は「超複雑系」と呼ばれる、非常に複雑な折り紙に人気があります。例えば、「龍神3.5」など超複雑系の作品を数多く作り出している神谷哲史(かみや さとし)さんは、超複雑系折り紙の愛好家の中ではスター的な存在です。また、宮本宙也(みやもと ちゅうや)さんの作品「死神」は、完成までに約460工程が必要な作品です。これは、正方形1枚の紙から作る作品としては世界で最も工程数が多い作品の一つと言えます。

宮本宙也さんの作品「死神」

山口さんにとって折り紙の魅力とは何でしょうか。

アメリカの折り紙作家、マイケル・シャル(1949-95年)は「折り紙は、誰でも、どこでも、いつでも(できる)」という言葉を残しています。折り紙の魅力はまさしくその言葉の通りで、1枚の紙があれば、誰もが楽しむことできることです。

さらに、折り紙を通じて人と人とのつながりができます。たとえ、言葉が通じなくても、折り紙を作って渡すと、誰もがとても喜びます。折り紙を通じてこうした人的な交流ができることが、私にとって何よりの楽しみなのです。今はインターネットで折り紙の作り方を簡単に学べます。何か自分が好きな折り紙の折り方を覚えておけば、どんな人との交流にも大いに役立つでしょう。

山口真さん(後列の右端)の作品である人形を持つOrigamiUSAのコンベンション参加者
アメリカのニューヨークで開催されたOrigamiUSAのコンベンションで行われた山口真さんの講習会に参加した人々。山口さんは中列、左から3番目。

* 1430年代~16世紀後半半ば
** 1603年~19世紀後半半ば