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March 2022

いいだ人形劇フェスタ

  • ホーボーズ・パペットシアター「おおきなかぶ」(2021)
  • 劇団なんじゃもんじゃ「ベッカンコおに」(2019)
  • 人形劇団くりきんとん「モーリーの見つけもの」 (2019)
  • ネヴィル・トランターのスタッフド・パペット・シアターによる公演 (2019)
  • 鼎中学校人形劇部「にゃんにゃん学園!大運動会! 」(2021)
  • 人形劇団むすび座「かくれ山の大冒険」 (2019)
  • 人形劇団京芸「とどろヶ淵のメッケ」(2019)
  • アンタマパンタホウ(ギリシャ)「ストリングス オブ ミュージック」 (2019)
ホーボーズ・パペットシアター「おおきなかぶ」(2021)

日本最大の人形劇イベント「いいだ人形劇フェスタ」は、国内外から多くの人形劇団が参加し、様々な人形劇が繰り広げられる。伝統芸能の宝庫といわれる、長野県飯田市で毎年開催されるイベントだ。

劇団なんじゃもんじゃ「ベッカンコおに」(2019)

「いいだ人形劇フェスタ」は、毎年8月初旬に長野県飯田市(人口約9.8万人。2022年1月現在)で開催される日本最大規模で、世界でも有名な人形劇イベントの一つだ。4日間の会期中に国内外から約300劇団が集り、近隣の市町村を含む約140会場で、400以上の公演が開催され、新型コロナ感染症の影響前の2019年には、4万人もの参加者があった。

人形劇団くりきんとん「モーリーの見つけもの」 (2019)

日本のほぼ中央に位置する飯田市は古くから東西を結ぶ文化の回廊の要地として栄え、特に、人形芝居が好んで演じられてきた。中でも約300年前に伝わった人形浄瑠璃は、現在も、四つの団体が伝統を継承しつつ活動を続けている。

ネヴィル・トランターのスタッフド・パペット・シアターによる公演 (2019)

このように人形にまつわる芸能が伝承されてきた飯田市では、1979年、市の主催によって全国から60劇団が参加し「人形劇カーニバル飯田」の開催がスタートし、20回続いた。そして、1999年からは、複数の市民グループ主催による「いいだ人形劇フェスタ」として再スタートを切って、現在に至っている。

鼎中学校人形劇部「にゃんにゃん学園!大運動会! 」(2021)

フェスタは観客・演者・運営者が協力してつくりあげるものとなっている。ボランティアで運営に参加する市民は2000人を数える。プロ、アマチュア問わず、「誰もが参加できる」このフェスタには海外からも毎年4〜5組の自主参加がある。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行のため、2020年は中止され、2021年は長野県の劇団のみによる約100の公演と規模を縮小して開催している。

人形劇団むすび座「かくれ山の大冒険」 (2019)

いいだ人形劇フェスタ実行委員会の実行委員長を務める原田雅弘さんは、「(新型コロナウイルス感染症の流行前のフェスタでは)伝統的な糸操りから前衛的な人形劇、地元の高校生による人形浄瑠璃など300もの劇団が集まり、世界中のほとんどすべての人形劇の形式を見ることができました。最近ではコンピュータや映像技術を駆使したハイテクな人形劇も増えていました」と語る。

人形劇団京芸「とどろヶ淵のメッケ」(2019)

例えば、2019年のフェスタでは、海外から、韓国、ギリシャ、ポーランド、オランダなどの国々の劇団が参加した。韓国の劇団「ブックテラーズキルト」は、楽器の演奏にあわせ、語り手がスプーン、電気ポット、ほうきといった日常道具を、あたかも人形のように操るユニークな作品を演じた。また、世界的な人形遣いネヴィル・トランターの一人劇団「スタッフド・パペット・シアター」は、社会風刺に富んだ作品を日本で初めて公演した。

アンタマパンタホウ(ギリシャ)「ストリングス オブ ミュージック」 (2019)

「洋の東西で人形劇のあり方も違うし、普段見る機会のない国や地域からの参加もあり、すごくエキサイティングです。このフェスタをきっかけに他国の異なる人形劇文化に興味を持たれた方々による新しいスタイルの人形劇も出てきています」と原田さんは言う。

いいだ人形劇フェスタは、国内の、そして世界の様々な国の歴史や文化を背景とする人形劇を楽しめる。この地で人形劇に親しみながら育った子どもたちが、今、フェスタ運営に積極的に参加し始めている。人形劇をめぐる世界的な交流が次世代へと引き継がれる、そんなドラマが静かにそして確実に繰り広げられているのである。