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April 2023

タンザニアの女性アスリートを支援

  • 2023年1月に開催された「レディース・ファースト」の100メートル走でスタートダッシュする選手 (全ての写真は2023年1月撮影)
  • 100メートル走決勝で走る選手
  • 閉会式に集まった選手
  • 女性のエンパワメントに関するワークショップで議論する参加者
  • 地域対抗戦の頂点に立ち、表彰されるザンジバルのチーム
2023年1月に開催された「レディース・ファースト」の100メートル走でスタートダッシュする選手 (全ての写真は2023年1月撮影)

国際協力機構(JICA)は、タンザニア連合共和国において女性陸上競技会「レディース・ファースト」の開催を支援している。

100メートル走決勝で走る選手

2017年11月、東アフリカのタンザニア連合共和国で、国際協力機構(JICA)とタンザニアの国家スポーツ評議会との共催で、同国初となる女性陸上競技会「レディース・ファースト」が2日間にわたって開催された。同国の最大都市のダルエスサラームの国立競技場で開催された競技会には、全国31州のうち24州から105人の選手が参加し、100メートル走、5000メートル走、やり投げなど11種目の競技が実施された。

JICAとともに、この競技会の開催に尽力したのが、タンザニアの元マラソン選手のジュマ・イカンガーさんである。彼は、1984年のロサンゼルスと1988年のソウルのオリンピックに出場、また、1984年と1986年に参加した東京国際マラソンでは優勝している。現在、タンザニアで陸上クラブを主宰し、若手陸上選手の育成に力を入れている。

「実は、国際的な陸上競技大会でタンザニアが初めてメダルを獲得したのは1965年、やり投げの女性選手によるものでした。しかし、タンザニアではスポーツは男性がするものという考えが根強く、スポーツに参加する女性は増えてきませんでした」とイカンガーさんは話す。「『レディース・ファースト』は、より多くの女性がスポーツに参加することを後押しするために開催したのです」

閉会式に集まった選手

タンザニアでは、あらゆるスポーツにおいて、女性選手を育成する機会が限られているため、国際的に活躍する女性選手はほとんどいない。しかし、隣国のケニア共和国、あるいはエチオピア連邦民主共和国には、国際大会でメダルを獲得する女性陸上選手もいることから、タンザニアにも才能ある女性が埋もれている可能性は高い。「レディース・ファースト」は、これまで練習や大会出場の機会が十分になかった女性陸上選手に焦点を当て、国際大会で活躍できる選手を発掘し、育成することも大きな目的の一つとなっている。

「レディース・ファースト」は回を追うごとに参加者が増加している。2018年には129人、2019年は138人、そして今年(2023年)1月に開催された第4回となる競技会では30州から210人と、過去最大の選手参加者数となった。競技会を支えるために、日本企業も運営資金やTシャツなどの寄附を行っている。

「レディース・ファースト」を通じて、海外とのつながりも生まれている。「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会」において、タンザニアのホストタウン*に登録された山形県長井市は、2018年10月に同市で開催したマラソン大会に、2017年の「レディース・ファースト」で好成績をおさめた選手を招待した。大会ではフルマラソンとハーフマラソンに参加した選手がそれぞれ優勝している。この他、2019年の「レディース・ファースト」には、JICAが全国スポーツ大会の開催を支援している南スーダン**からも4人の選手が参加している。

女性のエンパワメントに関するワークショップで議論する参加者

「非常に才能ある選手も見つかっています。近い将来、女性選手が国際大会でメダルを獲ることが期待できます」とイカンガーさんは話す。「この競技会がきっかけとなり、タンザニアで、スポーツは女性にとっても重要という認識が、より広がっています」

JICAは「レディース・ファースト」を単にスポーツへのアクセスを開くだけに留まらず、広く女性のエンパワメント推進のための機会と位置づけ、様々なサイドイベントも開催されている。今年は、日本の大学教授による「女性のエンパワメント」をテーマにした選手向けワークショップ、ジョギングイベント、若年妊娠予防啓発プログラムの実施のほか、ヘルスチェックや、女性に対する暴力について相談できるブースが出展された。また、競技会にはダルエスサラーム市内の小学校、中学校の生徒約1,000人が招かれ、競技を観戦した。

「私を含め、タンザニアの女性にとって、レディース・ファーストはとても重要なイベントです」と第1回目から競技会の運営に携わっている国家スポーツ評議会の事務局長のネーマ・ンシサさんは話す。「レディース・ファーストは女性が直面している様々な問題に関するサイドイベントも行っているので、スポーツだけではなく、社会にもインパクトを与えているのです」

「レディース・ファースト」は、テレビ、新聞、ラジオなどのメディアに加え、SNSを通じて、広く人々に知られるようになっている。タンザニア政府もその重要性を認識しており、今後、より多くの女性に参加の機会を与えるために、「レディース・ファースト」の予選会を各州で開催することを検討している。

地域対抗戦の頂点に立ち、表彰されるザンジバルのチーム

「スポーツが女性に与える最も大きな意義は、女性の自信を育むことです」とンシサさんは話す。「私はスポーツにはタンザニアの女性を変える力があると信じています」

* Highlighting Japan 2021年6月号「ホストタウンの取組:東京2020大会へ向けて」参照。 https://www.gov-online.go.jp/eng/publicity/book/hlj/html/202106/202106_01_jp.html
** Highlighting Japan 2019年7月号「スポーツで国民をひとつに」参照。 https://www.gov-online.go.jp/eng/publicity/book/hlj/html/201907/201907_02_jp.html