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May 2023

福島国際研究教育機構(F-REI)の設立-世界に冠たる「創造的復興の中核拠点」ヘ-

  • 山崎光悦・F-REI理事長(写真左)の岸田内閣総理大臣表敬訪問(2022年7月22日。表敬当時、山崎氏は理事長予定者)
  • F-REI開所式における除幕式(2023年4月1日。右から3人目が岸田内閣総理大臣)
  • 福島県浪江町(なみえまち)にあるF-REI本部
    福島国際研究教育機構提供
山崎光悦・F-REI理事長(写真左)の岸田内閣総理大臣表敬訪問(2022年7月22日。表敬当時、山崎氏は理事長予定者)

東日本大震災(2011年3月11日発生)から10年以上が経過した現在、原子力災害に見舞われた福島浜通り地域*等には、長期にわたる住民の避難等の影響により、人口減少や産業の担い手不足、残された広大な未利用地・未活用地など、中長期的な課題が残されている。これらの解決に向けて、日本国政府は、福島復興再生特別措置法に基づき、2023年4月、福島国際研究教育機構(Fukushima Institute for Research, Education and Innovation 略称:「F-REI」)を設立した。新たに生まれた特別な法人であるF-REIのミッションや今後の展望を紹介する。

F-REIのミッション

F-REIの大きなミッションは、福島を始め東北の復興を実現するための夢や希望となるものであるとともに、我が国の産業競争力を世界最高の水準に引き上げ、経済成長や国民生活の向上に貢献する、世界に冠たる「創造的復興の中核拠点」を目指すことにある。福島や世界の課題解決を現実のものとするため、研究開発を行うのみならず、研究成果の社会実装・産業化や人材育成についてもその主要な業務として取り組む。さらに、福島に既に立地している研究施設等の取組について横串を刺す調整機能を持った司令塔としての役割も果たしていく。

F-REI開所式における除幕式(2023年4月1日。右から3人目が岸田内閣総理大臣)

F-REIの取組

F-REIでは理事長**のリーダーシップの下で、以下のとおりF-REIの持つ研究開発・産業化・人材育成・司令塔の四つの機能を発揮するための取組を一体的に推進する。

(1)研究開発

福島の優位性が発揮できる次の5分野で、東日本大震災の被災地ひいては世界の課題解決に資する、国内外に誇れる研究開発を推進する。
<5分野>1. ロボット、2. 農林水産業、3. エネルギー、4. 放射線科学・創薬医療、放射線の産業利用、5. 原子力災害に関するデータや知見の集積・発信

(2)産業化

F-REI発ベンチャーへの出資、企業との共同研究を可能とする産学連携体制を構築。最先端の設備や実証フィールド等の活用、大胆な規制緩和等により、国内外の関係者の参画を推進する。また、戦略的な知的財産マネジメント等による、研究者のインセンティブ確保にも努めていく。

(3)人材育成

研究開発活動を通じた連携する大学院等による研究人材の育成、高等専門学校との連携のほか、小中高校生等を対象とした出前授業の実施など、先端的な研究や学術分野に実際に触れられる意義深い 機会を提供し、関心の醸成を促していく。加えて、企業人材・社会人向けの専門教育やリカレント教育を通じ、産業化に向けた専門的な技術スキルの育成も目指す。

(4)司令塔

協議会を組織し、既存施設等の取組に横串を刺す司令塔としての機能を最大限に発揮するほか、経済安全保障の観点からも、研究資源の配分、セキュリティの実施等について戦略的に判断していく。また、研究の加速や総合調整を図る観点から、福島に既に立地している研究施設等の施設統合及び予算集約を実施する。

福島県浪江町(なみえまち)にあるF-REI本部 福島国際研究教育機構提供

創造的復興の中核拠点へ

F-REI設置の効果が広域的に波及するよう、地域の市町村や住民、企業・団体等との間で様々な形のパートナーシップで連携し、F-REIの施設の中だけでなく、施設の外も含めて広域的な実証研究フィールドととらえ、「世界でここにしかない多様な研究・実証・社会実装の場」を実現し、国際的に情報発信を進めていく。

F-REIが担うこれらの極めて重要なミッションは、一朝一夕に達成できるものではない。一つ一つ成果を積み上げ、創造的復興に貢献できるよう、全力で取り組んでいく。

* 福島県の東部の太平洋沿岸一帯を指す呼称。
** 現在、理事長(初代)は、2023年4月1日に就任した山崎光悦・元金沢大学学長。専門は機械工学。