Skip to Content

November 2023

日本ASEAN友好協力50年の歩み

インドネシア共和国の首都ジャカルタにて第26回日ASEAN首脳会議を開催(2023年9月6日)
Photo: ASEAN 公式

  • 日本ASEAN友好協力50周年のオフィシャルロゴマーク

本年・2023年は日本ASEAN友好協力50周年の節目であり、12月16日から18日、東京で日ASEAN特別首脳会議が実施される。日本は世界に先んじて1973年にASEANとの対話を開始し、幅広い分野で友好協力関係を構築・強化してきた。過去半世紀の日ASEANの友好協力関係や交流の歴史を振り返り、節目の年にあたる2023年の取組を紹介する。

ASEANの概要

ASEANは東南アジア諸国連合(Association of Southeast Asian Nations)の略称で、域内の平和と経済成長を目的として1967年8月に設立された。1990年代に生じたアジアの政治経済構造の変化の中で、1992年にASEANはASEAN自由貿易協定(AFTA)を締結するなど域内経済協力の強化に取り組み、2007年には民主主義、人権、法の支配、紛争の平和的解決、内政不干渉等のASEAN諸原則を再確認し、ASEAN共同体の構築に向けて「ASEAN憲章」を採択した(2008年12月発効)。その後、2015年の首脳会議において、ASEANは、「政治・安全保障共同体」、「経済共同体」、「社会・文化共同体」から成る「ASEAN共同体」の構築を宣言し、更なるASEANの統合を深めるべく、「ASEAN共同体ビジョン2025」を採択した。現在、ASEAN内では、ポスト2025ビジョン策定のための協議が続けられている。

日本とASEANの友好協力の歩み

日本とASEAN全体としての関係は、日本とASEANが日本の合成ゴム輸出について協議するためにフォーラムを設置することで一致した1973年に遡る。当時、多くが天然ゴムの輸出国であったASEANは日本の合成ゴムに市場を奪われることを懸念していた。日本はASEANの声に耳を傾け、ASEAN諸国に技術協力を行うことに合意し、この日ASEAN間の貿易交渉の結果は、設立初期のASEANの成功体験でもあった。それ以来、日本とASEANは、今年まで50年にわたり、経済問題に限らず、地域の平和と安定、発展と繁栄のために、緊密な協力関係を築いてきた。1977年には、マレーシアのクアラルンプールで初の日・ASEAN首脳会議が開催され、福田赳夫内閣総理大臣(当時)が出席した。同総理は、その直後にフィリピン共和国を訪問し、後に「福田ドクトリン」*と呼ばれるようになる対ASEAN外交の原則を発表した。こうした関係が日ASEAN友好関係の礎となり、日本はASEANにとって最も重要な対話国の一つとなっている。

日本ASEAN友好協力40周年に当たる2013年には、安倍晋三内閣総理大臣(当時)が対ASEAN外交5原則(別掲参照)を発表した。そして、同年12月には東京で開催された日ASEAN特別首脳会議において、日本とASEANの首脳が、「日ASEAN友好協力に関するビジョン・ステートメント」及びその「実施計画」を採択し、日本とASEAN諸国は「平和と安定のパートナー」、「繁栄のパートナー」、「より良い暮らしのパートナー」、「心と心のパートナー」の4つのパートナーを柱として協力を進めていくことを表明した。

日本ASEAN友好協力50周年ロゴマーク及びキャッチフレーズ

2023年の日本ASEAN友好協力は50周年に向けて作られたロゴマークのデザインは、日本とASEANが築いてきた友好関係が未来永劫続いていくよう、ASEAN加盟国を表した10本の稲の束をリボンに見立て、メビウスの輪になって日の丸を包んでおり、その下には日本と東南アジア諸国をつなぐ海があしらわれ、各国が豊かな海から受ける恩恵を共に享受して、友好的な関係をつないでいく願いが込められている。

日本ASEAN友好協力50周年のオフィシャルロゴマーク

50周年のキャッチフレーズ「Golden Friendship, Golden Opportunities/輝ける友情 輝ける機会」には、50年の長きにわたって友情をはぐくみ、生産的で協力的な関係の中で、強い絆を紡いできた日本とASEANが、パンデミックからの経済回復の兆しの中で、次の50年に向けて、日本とASEANの輝ける友情によって、再び輝ける機会を持てるようにとの願いが込められている。

2023年の取り組み

2023年には、2月にインドネシア共和国のジャカルタ、3月に東京で50周年記念シンポジウムが開催された。また6月の日ASEANビジネスウィーク、7月の日ASEAN特別法務大臣会合、10月の日ASEAN観光大臣特別対話をはじめ、多くの50周年記念行事・事業が官民で実施された。

この50周年の締め括りとして、12月16日から18日に東京において日ASEAN友好協力50周年特別首脳会議が開催される。

これに先立ち、岸田文雄内閣総理大臣は3月に自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の新プランを発表し、東南アジアを重要地域と明確に位置づけた。また日・ASEAN統合基金(JAIF)に新たに1億ドルの拠出を表明した。また、9月のジャカルタでのASEAN関連首脳会議のサイドイベントとして開かれたASEANインド太平洋フォーラムで、岸田総理は「日ASEAN包括的連結性イニシアティブ」を発表した。日本はこのイニシアティブの下で、交通インフラ整備、デジタル、海洋協力、サプライチェーン、電力の連結性、人・知の連結性といった幅広い分野で連結性強化の協力を進めていく考えを示している。12月の特別首脳会議では、将来の日ASEAN関係と協力の大きな方向性を示すビジョンが日本とASEANにより共同で発出される。

注記: 本記事は外務省の了解の上、同省の公表資料に基づき作成している。

日ASEAN関係略史

1967年 ASEAN 設立(タイ、インドネシア、シンガポール、フィリピン、マレーシア)
1973年 「日ASEAN合成ゴムフォーラム」開催。最初の協力関係
1977年 福田赳夫総理(当時)がマニラで「福田ドクトリン」*を表明。初の日ASEAN首脳会議開催。
1978年 初の日ASEAN外相会議開催
1981年 東京に「日本アセアンセンター」開設
1997年 アジア経済危機。日本は800億ドルの支援実施を表明。第3回日ASEAN首脳会議開催(以後、毎年開催)。
2003年 日ASEAN特別首脳会議。「日・ASEAN東京宣言」
2005年 「日ASEAN戦略的パートナーシップ」の深化・拡大」に関する共同声明採択
2008年 日ASEAN包括的経済連携(AJCEP)発効
2013年 「対ASEAN外交5原則」(別掲コラム参照)発表
2017年 ASEAN設立50周年
2023年 日本ASEAN友好協力50周年

* (1)日本は軍事大国にならない、(2)ASEANと「心と心の触れあう」関係を構築する、(3)日本とASEANは対等なパートナーである、という3つのASEAN外交原則。

日ASEAN基本データ(数値は2022年に基づく)
出典:国際通貨基金 世界経済見通し(2023)、国・地域(外務省)

対ASEAN外交5原則

日本がASEANの対等なパートナーとして共に歩んでいくとの観点から、安倍晋三総理は2013年1月に「対ASEAN外交5原則」を発表した。その内容は、以下のとおりである。

  1. 自由、民主主義、基本的人権等の普遍的価値の定着及び拡大に向けて、ASEAN諸国と共に努力していく。
  2. 「力」でなく「法」が支配する、自由で開かれた海洋は「公共財」であり、これをASEAN諸国と共に全力で守る。米国のアジア重視を歓迎する。
  3. 様々な経済連携のネットワークを通じて、モノ、カネ、ヒト、サービスなど貿易及び投資の流れを一層進め、日本経済の再生につなげ、ASEAN諸国と共に繁栄する。
  4. アジアの多様な文化、伝統を共に守り、育てていく。
  5. 未来を担う若い世代の交流を更に活発に行い、相互理解を促進する。