VOL.214 APRIL 2026
THE APPEAL OF YOSHOKU: JAPANESE-STYLE WESTERN CUISINE (PART 2)
日本で独自に進化した洋食「ハンバーグ」

日本で親しまれている洋食のハンバーグの一例。
Photo: 日本ハンバーグ協会
ドイツが発祥とされるひき肉料理「ハンバーグ」は日本の食卓で独自の発展を遂げ、洋食の定番メニューとなっている。日本人にとって身近なこの料理の歩みをたどる。
ハンバーグとは、牛や豚などのひき肉にパン粉・玉ねぎ・卵などを混ぜて、平たく焼き上げた肉料理だ。一般社団法人日本ハンバーグ協会の理事長として活動するバーグマン 田形さんによると、ハンバーグが日本に初めて登場したのは140年以上前だという。
「1882年、日本初の料理学校「赤堀割烹教場」(現 赤堀料理学園)の開校披露の席上に、原点となるハンバーグ料理が披露されたという記録があります。この時の名称は「ハンブローグステーキ」。ルーツであるドイツの都市「ハンブルグ」から名前を取った「ハンブルグ風ステーキ」が転じた名称です。その後、「ハンバーグ」という名称に統一されていきました」
当時、日本に創設された軍隊はフランスやドイツから士官やコックを招聘していた。その後、日本に残ったコックが西洋料理店を開き、1890年代後半には東京の洋食店のメニューにもハンバーグが登場したとされる。
やがて昭和30年代(1955年から1964年)になると、冷蔵技術の発展により、それまで傷みやすいため取り扱いが難しかったひき肉が精肉店で売り出され始め、家庭料理としてのハンバーグが少しずつ浸透していく。
「1962年に株式会社マルシンフーズより、調理・加工済の「マルシンハンバーグ」が発売されフライパンで焼くだけのお手軽なハンバーグとして食卓の人気メニューとなりました。テレビCMも頻繁に流れ、ハンバーグの認知度アップに貢献しています。さらに、昭和40年代(1965年から1974年)には、学校給食(参照:日本の学校給食制度の意義と歩み | DECEMBER 2025 | HIGHLIGHTING Japan)の献立にハンバーグが登場し、子どもたちに大人気のメニューとなりました」

Photo: 株式会社マルシンフーズ
また同じ頃、ファストフード店「マクドナルド」が日本に上陸し、ハンバーガーの認知度が広がったことで、ハンバーグは日本の食卓により身近な存在となっていった。
「「ハンバーグ」のルーツであるハンブルグでは「フリカデレ」と呼ばれることが一般的です。香辛料で下味がしっかり付いた小ぶりサイズの惣菜的感覚の料理で、ソースも必要としません。それに対して日本のハンバーグは、デミグラスソースをはじめとする多彩なソースや、野菜などの付け合わせと組み合わせて楽しみます。レストランなどでよく見られる鉄板に乗せて冷めないように提供するスタイルも日本独自のものです」
さらに食感も欧米とは異なる日本独自の進化を見せている。
「欧米では牛肉100%の肉の食感が重視され、つなぎ1を用いない調理法が一般的です。一方、日本では牛肉と豚肉を合わせて挽いた合挽肉や豚ひき肉がよく使われ、パン粉などのつなぎを加えて柔らかく仕上げるスタイルが広く親しまれています」
近年では、ハンバーグを主菜とし、ご飯や味噌汁、小鉢を組み合わせた定食形式で提供する店も増えている。
「炭火焼きや薬味2で味の変化を楽しみながら味わう点や、鉄板に乗せて提供される点など、日本スタイルのハンバーグは、海外の方にも楽しんでいただけると思います」

Photo: 日本ハンバーグ協会
このように日本独自の発展を遂げたハンバーグは、近年では静岡県でご当地洋食としても注目されている。
「1977年創業の「炭焼きレストランさわやか」が人気店として知られています。看板メニューは牛肉100%つなぎなしの「げんこつ3ハンバーグ」で、県内のみに35店舗展開し、年間来店者数は約580万人にのぼり、県外からの来訪者も多い店となっています」
その影響で県内にはハンバーグ提供店が増え、地域の食文化の一つとして定着している。

Photo: 日本ハンバーグ協会
田形さんによれば、静岡県は日本列島の中央部に位置し、東日本の豚肉文化と西日本の牛肉文化が交わる地域にあたる。そのため、牛肉と豚肉を合わせた合挽き肉料理が広く親しまれてきたという。
「静岡県ではブランド牛肉やブランド豚肉が少なかったことから、肉を加工して提供する料理が発達し、ハンバーグを扱う店が多い地域でした。そうした土壌の上で、牛肉100%のハンバーグを看板メニューとする店が人気を集めて広がり、現在では地域を代表するご当地洋食の一つとなっているのではないでしょうか」
2024年には「ハンバーグの年間購入額」で静岡市が全国1位、浜松市が2位と上位を占めるなど、ハンバーグは静岡県の食文化を象徴する存在となっている。こうした地域独自の発展も、日本で独自の進化を遂げてきた洋食文化の一側面といえる。現地を訪れた際には、ご当地の洋食に触れることで、日本の洋食文化の広がりを感じることができるだろう。
- 1. ひき肉をまとめて形を整えるために加える材料。パン粉や卵などが用いられる。
- 2. 日本料理に香りや風味を加えるために添える調味素材。
- 3. 握りこぶしのこと。
By MOROHASHI Kumiko
Photo: Japan Hamburg Association; MARUSHIN FOODS Co., Ltd.

