VOL.214 APRIL 2026
THE APPEAL OF YOSHOKU: JAPANESE-STYLE WESTERN CUISINE (PART 2) 海の幸を活かした洋食

エビにパン粉などで衣をつけて揚げるエビフライは代表的な洋食の一つ。

四方を海に囲まれ、古くから魚介を食する文化が根付いていた日本。魚介を用い、西洋の調理技法で仕上げる洋食がどのように発展してきたのか、その背景を取材した。

日本には海の幸を活かした洋食が数多く存在する。代表的なメニューとしては、エビフライ、カニクリームコロッケ、カキフライ、アジフライ、シーフードドリアなどが挙げられる。一般社団法人日本洋食協会会長であり、自身も東京都港区で洋食店を営む岩本いわもと ただしさんによると、パン粉を用いたフライは、日本独自の洋食として発展してきた代表的な料理である。


たっぷりの油で揚げるのが日本のフライの特徴。

「パン粉をまとわせ、たっぷりの油で揚げる日本式フライは、日本独自に発展してきた調理法です。西洋料理が日本に伝わった当初、レストランで使われていた海外製のパン粉は、ビスケットや乾パンを砕いたような細かいものでしたが、日本の料理人たちは食パンを自らほぐして作った粒の大きいパン粉を使うようになりました。こうして生まれた日本独自のパン粉によって、現在のような軽やかな食感のフライが定着しました。また和食の天ぷらの調理技術を応用し、たっぷりの油で揚げる点も日本のフライの特徴です」

シーフードフライと並び、洋食の定番として親しまれているのが「シーフードドリア」である。


シーフードドリアも日本で生まれた洋食の一つ。
Photo: TARO azabujuban

「シンガポールや香港などでは、チャーハンの上にソースとチーズをのせて焼く「ベイクドライス」と呼ばれる料理があり、見た目がドリアに似ているものもありますが、日本のシーフードドリアは、バターライスの上に海老や帆立の旨みを含んだベシャメルソース1を重ねて焼き上げる料理です。神奈川県横浜市の「ホテルニューグランド」で考案された洋食で、ご飯をベースに、フランス料理のソースを組み合わせて一つの料理に仕上げるところに、日本の洋食らしさが表れていると思います」

このような海の幸を活かした洋食が日本で発展した背景には、地域ごとに特色ある水産資源と、西洋料理の技法との親和性の高さがあったと考えられる。


宮城県や広島県で盛んな牡蠣の養殖

「ドリアやグラタンなどのベシャメルソースを使う洋食は、乳製品と魚介を組み合わせた料理として各地で親しまれています。乳製品の生産が盛んな北海道では、ホタテ・カニといった海産物を使った同様の洋食もよく見られます。また牡蠣の養殖が盛んな宮城県や広島県では、家庭料理としてカキフライが定着しています。さらに、港町として栄えてきた長崎県では、魚介フライとバターライスを組み合わせたトルコライス(参照:洋食文化の起点となった長崎 | April 2026 | HIGHLIGHTING Japan)がご当地洋食として親しまれています。このように、地域ごとの水産資源や食文化が洋食に取り入れられてきた点も、海の幸を活かした洋食の大きな特徴だと思います」


魚介フライが盛られたトルコライスの一例。

海外から日本を訪れた際には、街の洋食店で、ご飯と味噌汁が添えられた定食スタイルの洋食を体験してほしいと岩本さんは語る。

「日本では、主菜にご飯と味噌汁を添える定食という食べ方が一般的で、洋食もそのスタイルで提供されることが多いです。箸で食べる洋食ですね。フライなどを主菜にした定食スタイルの洋食は、日本ならではの楽しみ方だと思います。特にフライは、日本独自のパン粉による軽やかな食感が魅力です。「海の幸を活かした洋食」を体験する入口として、ぜひ味わってほしいと思います」


定食スタイルで提供される洋食の一例。
  • 1. ホワイトソースとも呼ばれる。溶かしたバターに小麦粉を加え炒めた白いルウに、牛乳を加えてなめらかになるまでかき混ぜたソース。

By MOROHASHI Kumiko
Photo: TARO azabujuban; PIXTA

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