VOL.214 APRIL 2026
THE APPEAL OF YOSHOKU: JAPANESE-STYLE WESTERN CUISINE (PART 2)
日本独自の食文化「総菜パン」

総菜パンの代表として知られる「カレーパン」の一例。
洋食文化の広がりと共に、日本ではパンにおかずを組み合わせた独自の食文化「総菜1パン」が発展してきた。その定義や背景について、専門家に話を聴いた。
パンに副食材を合わせる食文化は世界各地に見られるが、日本ではその形態によって「調理パン」と「総菜パン」という独自の呼び分けがなされてきた。一般社団法人日本パン技術研究所でパン製造の技術教育に長年携わっている井上 好文さんは、定義の違いについて次のように説明する。
「パンに副食材を挟んだサンドイッチやハンバーガーなどは「調理パン」と呼ばれ、これらは世界中で広く食されています。一方、日本で「総菜パン」と呼ぶ場合、一般的にはパン生地に副食材を合わせてから焼成、あるいはフライにした「焼き込み調理パン」を指すことが多いですが、調理パンも含めた広い意味を持つこともあります」
井上さんによれば、こうした「生地と一緒に焼き上げる」手法自体は、日本独自のものではなく世界各国に存在する。各国の違いは、その土地で一般的な副食材が用いられることや、使用されるパン生地の特性にあるという。
「欧米のパンがしっかりとした噛み応えを重視する傾向にあるのに対し、日本の総菜パンの最大の特徴は、ソフトな食感のパン生地にあります。この柔らかくしっとりとした生地に、日本で親しまれている多種多様なおかずを組み合わせることで、独自の進化を遂げました」
このようなソフトなパン生地と多様なおかずの組み合わせは、洋食文化の広がりと共に日本で発展してきた。総菜パンの歴史を紐解くと、1874年に考案された甘いあんこ2をパン生地で包んで焼いたパン「あんぱん(参照:西洋と日本の文化が融合して生まれた「あんぱん」 | August 2025 | HIGHLIGHTING Japan)」が、パン生地で具材を包んで焼くという日本独自の総菜パンの原点となった。その後、1927年には東京のパン店で「カレーパン」が誕生し、当時、洋食として広まっていたカレー(参照:日本の味「カレーライス」の変遷 | August 2025 | HIGHLIGHTING Japan)をパンと組み合わせて手軽に食べられる商品として人気を集めた。

第二次世界大戦後、1954年に学校給食法が成立し、全国の小中学校の給食(参照:日本の学校給食制度の意義と歩み | December 2025 | HIGHLIGHTING Japan)で主食としてコッペパンが採用されたことは、家庭の食卓にパンが定着する大きな契機となった。
こうしたパン食の広がりの中で、家庭や食堂で親しまれていた様々な料理をパンと組み合わせた総菜パンが多く生まれた。焼きそば3をコッペパンに挟んだ「焼きそばパン」や、コロッケ(参照:日本の家庭で親しまれている「コロッケ」 | August 2025 | HIGHLIGHTING Japan)を挟んだ「コロッケパン」など、和洋の要素を組み合わせた製品などがその代表例である。


井上さんは「各地のパン店の感性で日々新しいパン製品が生み出されており、そのバリエーションも非常に豊かです」と語る。
近年は地域ごとに特色のある総菜パンも各地で生まれている。例えばツナサラダを詰めたちくわをパン生地で包んだ北海道の「ちくわパン」、マヨネーズで和えた刻んだたくあん4をコッペパンに挟んだ滋賀県の「サラダパン」など、地域で長く親しまれている個性的な製品もある。

こうした総菜パンについて、井上さんは「日本ならではの創意工夫が詰まった総菜パンはアジアを中心に海外でも注目されており、製法や商品開発に関心を持つ人も増えています」と語る。外来のパン文化を日本の味覚や製パン技術と融合させながら、洋食文化と共に独自に進化してきた日本の総菜パンは、海外へ逆輸出される日本発の豊かな食文化の一つとなっている。
- 1. 日常的に家庭で調理されるおかずを指す。市販総菜を含む場合もある。
- 2. 豆などを煮詰めて、砂糖と共に練ったペースト状のもので、和菓子などによく使われる。
- 3. 蒸した中華麺を肉や野菜と共に炒め、ソースなどで味付けをした麺料理。
- 4. 大根を塩や糠などで漬け込んで作る、日本で広く食べられている漬物。
By TANAKA Nozomi
Photo: PIXTA

