VOL.214 APRIL 2026
THE APPEAL OF YOSHOKU: JAPANESE-STYLE WESTERN CUISINE (PART 2)
[私が伝えたい日本(日本人インフルエンサー)]華道やいけばなに宿る日本の心

Photo: 西村 大樹
現代華道家である大薗 彩芳さん。今月号では、大薗さんに華道やいけばなにおける西洋文化と日本文化の違いや、華道やいけばなに宿る日本の精神性について語ってもらった。
2026年3月号では、華道、いけばなの基礎や歴史に触れ、さらに進化した「現代華道」の定義をご説明しました(参照:進化した華道といけばな「現代華道」 | March 2026 | HIGHLIGHTING Japan)。現代華道に必要な要素として、日本文化だけに閉じ過ぎない西洋文化とのMIXの必要性について言及しましたが、今号では、お互いにリスペクトされるべき西洋文化と日本文化の違いや、日本の精神性について紹介します。
「フラワーアレンジメント」に代表されるような西洋の花文化は、贈答用や装飾用として発展を遂げ、基本的に「美しさ」や「可愛さ」が重視されます。また、作品の中に仕込む吸水スポンジを隠すために、多くの花を使い足し算で空間を埋めていき、作品の外郭で形を取る「有形文化」が基本となります。
一方で、華道やいけばなは、伝えたいメッセージ性やテーマ設定が、美しさよりも優先されます。使用する花そのものはどれも美しいですが、人の手が加わったいけばな作品には個性も出ますし、中には必ずしも美しい、綺麗とは言えない作品も存在します。もちろん、綺麗で可愛いいけばな作品を意図的に作ることも可能ですが、美しさを追求しないいけばな作品は、その作品に込めた「メッセージ」を大切にしています。

Photo: 大薗 彩芳
また、華道やいけばなでは少ない花材で隙間を多用して空間を広げることが重要で、作品の形は外郭を取らない「無形文化」となります。物理的には形が100%表現されている訳ではない小さな作品から、外に無限に広がる大きな世界を感性や感覚で感じ取らせることが、いけばな作品の醍醐味となります。私は数メートル規模の大きな作品作りも得意としていますが、仮に作品に込めるメッセージが壮大な地球の山や海全体であれば、人間にとって大きなサイズの作品であっても、それに比べればちっぽけで微塵なのです。

Photo: 大薗 彩芳
この感覚は、例えば日本の「俳句」にも似ていると私は考えます。俳句では、千文字でも一万字でも書けるような季節全体や思い出の描写を五・七・五のたった17文字で表現し、さらに、たった一文字の配置を替えるだけでがらっと作品の印象が変わります。小さな作品から大きな世界観やメッセージを感じ取らせるいけばな作品に近しいものを感じます。
このように西洋文化と日本文化には様々な違いは存在しますが、私はどちらの文化にも長所、短所がそれぞれあり、どちらもリスペクトすべきだと考えます。例えば、古くからの伝統的ないけばな作品を商業施設に置いたとして、それは見る者に十分な満足をもたらすでしょうか。また、万人に理解されるでしょうか。こうしたアンバランスさに調和をもたらすためには、日本文化としての作品を前提としつつ、西洋のエッセンスも加えながら現代風に作品を作っていくことが求められており、それを表現しているのが「現代華道」です。

Photo: 一色 卓丸
その他にも、例えば、「守破離1」という文化を発展させていくためのフローや、植物の内面を見たり(表や裏、枝の曲がり、フラクタル構造2など)、陰影を大切にしたりするなど、多くの日本の精神性が華道やいけばなには含まれます。華道やいけばなには、短い文章では伝えきれない奥深い魅力がたくさん詰まっておりますので、ぜひお近くの教室や流派を覗いてみてください。

大薗 彩芳
いけばな三大流派の一つである草月流の一級師範、現代華道家。1987年東京都生まれ。「現代華道家」として独創性に溢れたモダンないけばな作品をデザイン、制作している。作品の特徴は、「現代的」であること。花以外の異素材も活用し、モダンでおしゃれな表現の中にメッセージ性を込めた作品作りを心がけている。
第103回「草月新人賞」(2022年)、第1回「草月優秀賞」(2024年)、いけばな大賞2019審査員特別賞受賞など、様々な賞を受賞。中国やイタリア等海外での実績も多く、メディアへの出演も多数。![]()
- 1. 学ぶ姿勢や成長する過程、段階を表した言葉。段階は「守」「破」「離」の三つに分けられ、「守」は基本を身につける段階、「破」は良いものを取り入れ工夫をする応用の段階、「離」は自分なりの独自の形を生み出す段階とされている。
- 2. 同じような構造が繰り返し現れる構造のこと。樹木や入道雲、雪の結晶など自然界で多く見られる。
By OZONO Saihou
Photo: ISSIKI Takumaru; OZONO Saihou; NISHIMURA Daiki


