VOL.210 DECEMBER 2025
SCHOOLS IN JAPAN 日本の小学生を象徴するカバン「ランドセル」

ランドセル専門店の様子。
Photo: 村瀬鞄行

小学校6年間、毎日通学を共にするランドセル。毎年春になると、小さな背中に大きなランドセルを背負った新一年生の姿を見かける。身体より大きかったカバンが、子どもの成長とともに自然に馴染み、そこにはたくさんの思い出が詰め込まれていく。この日本独自のランドセル文化の歴史と特徴について見ていこう。

ランドセルの原型は、オランダの軍隊が使っていた四角いカバン「はいのう」であると言われている。19世紀後半に日本に伝わり、オランダ語で「ランセル」と呼ばれていたことから、その発音が日本語で「ランドセル」となり、箱型の背負うカバンを指す言葉として広まった。

それが小学生のカバンとして定着したきっかけは何だったのか。

1877年に華族のための学校として創立された学習院(現在の学習院初等科)では、「教育の場での平等」の理念に基づき、「学用品は自分の手で持ってくるべき」とし、馬車や人力車での通学や使用人に荷物を預けることを禁止した。その際に採用されたのが、両手が空いて持ち運びの利便性が高かった、軍隊で使用していた背のうだった。

リュックサックのようなデザインから、現在の箱型ランドセルが生まれたのは1887年のこと。当時の総理大臣だった伊藤いとう 博文ひろぶみ1が大正天皇(第123代天皇。在位1912年から1926年)の学習院入学に際し、箱型のランドセルを献上したという記録が残っており、それが今のランドセルの始まりとされている。


ランドセルの原型となった、軍隊が使用していたカバン「背のう」
Photo: 村瀬鞄行

1940年代前半まで主に富裕層の子どもたちが使用していたランドセルは、現在の義務教育の形となった1947年以降、全国の小学生たちに普及した。高度経済成長期2にはメーカー各社が百貨店などで展示販売会を開き、更なる拡大につながった。当時は男の子が黒、女の子が赤の牛革製が主流だったが、2000年以降はピンクやブルーなど色の種類が増え、現在ではアニメなどのキャラクターを思わせる色合いや柄など、多様なタイプが登場している。

ランドセルには、子どもの使いやすさを支える五つの工夫が隠されている。それは、①水に浮くため浮き輪の代わりになる、②箱型で丈夫なため中身を守る、③後ろに転倒した際に頭を打たない、④汚れがつきにくい、⑤軽量かつ猛暑でも背中が熱くなりにくいことである。実際に交通事故の際、ランドセルのおかげで頭を打たずに済んだという話もある。

また、海外の多くの国でもランドセルは知られている。日本の小学生を主人公としたアニメが世界中で放送されているからだ。「ドラえもん」3や「ちびまる子ちゃん」4などの登場人物が背負っている影響もあって、海外でもランドセルが少しずつ広まっており、来日した際にお土産として購入する方もいる。

「小学生のカバン」として日本で定着したランドセルは、子どもの成長の象徴でもある。ランドセルは小さい子どもたちにとってはお兄さん・お姉さんが背負う憧れのカバンであり、子どもの小学校入学という節目を祝う親や祖父母からの特別な贈りものでもある。ランドセルは、家族それぞれの思いが詰まっているカバンなのである。


ランドセルを背負って登校する小学生の様子。
  • 1. 1841年生まれ、1909年没。政治家。初代内閣総理大臣。近代立憲主義社会の基礎を築いた。
  • 2. 日本が急速に経済成長を遂げた1955年頃から1973年頃の期間。国民の生活水準が急速に向上した。
  • 3. 藤子ふじこFえふ不二雄ふじおによる日本の漫画作品及びそれを原作とするテレビアニメ番組。未来から来たネコ型ロボット・ドラえもんと、勉強もスポーツも苦手な小学生・野比のび太が繰り広げる日常生活を描いた物語。
  • 4. さくらももこによる日本の漫画作品及びそれを原作とするテレビアニメ番組。小学校3年生の主人公「まる子」と家族や友だちとの日常生活を描く。

監修・取材協力: 一般社団法人日本鞄協会ランドセル工業会会長 はやし 州代くによ

By TANAKA Nozomi
Photo: MURASE KABANKO Co., Ltd.; PIXTA

あの頃のランドセル、今のランドセル


1945年頃の野球柄

戦後の材料が入手困難な時代に作られたブリキ製

1960年代の牛革製

紙製のランドセル(年代不詳)。花柄のデザインも目を引く。

今は色とりどり!カラフルなランドセル

写真提供: 村瀬鞄行

「ランドセルって実はすごい!」—小学校6年間を支える機能美の秘密(ランドセルの形状の一例)

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