VOL.199 JANUARY 2025
[NEW YEAR'S ISSUE 2025] CELEBRATING A BRIGHT NEW YEAR IN JAPAN
一年の幸せを願う新年のおせち料理

おせち料理の一例。漆塗りの重箱*に見た目にも華やかに盛り付けられている。左の三つ重ねの円形の器は漆塗りの酒杯である。
現代の日本で正月料理と言えば、家庭でいただくおせち料理が定番だ。料理の由来などについておせち料理の研究家に話を聴いた。
おせち料理とは、保存のきく食材を使って、手間をかけて準備された彩り豊かな料理を重箱*に詰めて提供するのが一般的な形だ。日持ちする料理になっているのは、普段料理をしている者を新年の間は休ませたいという思いも込められているという。おせち料理研究家で行事食協会代表理事の小宮 理実さんに、話を聴いた。

Photo: 行事食協会
「おせち料理を海外のかたにお伝えするときは、日本を代表するハレの日のお料理と説明しています。ハレとは特別な日や非日常を表す言葉です。日本人が新年最初に味わうお祝いの料理と言えます。もともと、おせち料理とは一年に5回巡ってくる節日**のときに神に供える料理のことを指していました。しかし、やがて、その5回のうち、一年の最初の新年の節日が特別視されるようになり、やがておせち料理という言葉そのものが新年、正月を迎える際の料理を意味するようになったのです」。
現代のように重箱に料理を詰め合わせる形式となったおせち料理についての起源は諸説あるが、始まりは14世紀ごろと言われている。ただ、漆塗りの重箱自体が高級であり当時は普及までには至っていなかった。それが一般にも広がったのは17世紀ごろからあととされる。

Photo: 行事食協会

Photo: 行事食協会

Photo: 行事食協会

Photo: 行事食協会
おせち料理に使われる食材や料理には、それぞれ特別な意味が込められている。小宮さんは次のように話す。
「味つけや盛り付け、詰められる重箱の形も含め、地域によって特色があって異なります。ただし、数の子***、田作り****、黒豆*****、たたきごぼう******などは、全国的に共通して食べられています。実は、それぞれの具材には願いが込められており、数の子は子孫繁栄、田作りは豊作、黒豆は健康、たたきごぼうは安泰を意味します。これら全て、家族や大切な人が幸せで良い一年が過ごせるようにと願いが込められているのです。また、おせち料理のほか、餅を使った汁物の雑煮も重要です」。
雑煮は、年中行事で神様に供えた餅や供物を下げたあと、それらを煮て食べたことが由来で、その恩恵をいただきながら良い一年を願う料理であり、お正月料理として欠かせない一品だ。

Photo:行事食協会
「おせち料理は、華やかな見た目もさることながら、料理に込められた意味を重視する古くからの日本の文化が残っている典型になります。海外のかたからは、その意味も含めて日本の誇る料理だという感想をいただくこともあります。これからも、おせち料理を始めとして、季節や行事に合わせた日本の伝統的な食文化を後世に伝えていきたいと考えています」と小宮さんは話す。
* 料理を詰める箱型のふたつきの容器。伝統的には黒又は朱の漆器で蒔絵などを施した優美な器である。祝い事を重ねるという願いが込められているため、ハレの日に使用することが多い。蒔絵とは、器の表面に漆で文様を描いて、その上から金や銀などの粉を蒔いて付着させる技法である。
** 季節の変わり目などに行う祝いの日。節句ともいう。1月7日、3月3日、5月5日、7月7日、9月9日の五つがあり、それらを総称して「五節句」という。新しく迎える月日を無事に過ごせるようにと願うことから様々な行事が生まれた。
*** ニシンの卵の塩漬け。子孫繁栄意味する。
**** イワシの稚魚の乾燥品を炒り、醤油と砂糖の甘辛いたれにからめたもの。イワシが田畑の肥料として使われていたため、豊作を意味する。
***** 黒豆を甘く煮たもの。元来、体が丈夫、健康という意味の言葉「まめ」と、豆が同音語のため、健康で仕事に精を出すということを意味する。
****** 叩いて柔らかくし食べやすくしたごぼうの煮物。ごぼうが地中深く根を張ることから安泰を意味する。
******* 鮮やかな赤い色をした細長い京人参は、京都で親しまれている野菜。里芋は東南アジア原産の植物で、地下茎が肥大した部分を食べる。また、京都の雑煮に用いられる大根は小さめのものを用いる。
BY TANAKA Nozomi
Photo: Adobe Stock; Gyojishoku Association

