VOL.199 JANUARY 2025
[NEW YEAR'S ISSUE 2025] CELEBRATING A BRIGHT NEW YEAR IN JAPAN
日本の正月のしつらいの意味と心

日本の家庭の床の間*における正月のしつらいの例。
Photo: 室礼三千
日本に古来より伝わる様々な年中行事。その折に、主に室内の空間を美しく整えることを「しつらい」という。その研究や実践の第一人者である山本 三千子さんに、日本の正月のしつらいについて話を聴いた。

Photo: 室礼三千
日本には、1月はお正月、3月は雛祭り**、5月は端午の節句***など、時節ごとの年中行事がある。 山本さんによると、古来から日本人はこうした行事に際して、主に室内の空間を整えることを「しつらい」と呼び、伝統的に大切にしてきたという。
「お正月は、新しい年の1月1日、元旦に各家々を訪れるとされる年神様(「日本の正月文化の起源と意味」参照)をお迎えし、お酒やご馳走を差し上げるという意味を持つ伝統行事です。清々しい気持ちで新年、年神様をお迎えするために、家を整え、門松****などを飾って準備をすることがしつらいです」
日本では、伝統的には12月になると、13日頃からは大掃除や煤払い*****を行い、それを「正月事始め」と呼ぶ。29日はお休みして30日にはお飾りを飾るのが通例だ。それぞれの日付に意味があるという。

Photo: 室礼三千
「29日は日本語の発音に「く」が含まれ、同じ発音の「苦」に通じることから正月の準備を避けます。そして、30日までに正月のための飾り付けを終えることがよいとされます。神様が訪れる新年1月1日の前日31日に飾り付けを行うのは、直前すぎて神様への誠意に欠け、良くないとされています。しつらいの具体例としては、門松や鏡餅があります。門松は玄関先や門の両サイドに松を2本立て、その松に藁******で作られた“和飾り”を下げます。「松」は日本語で同じ発音である“待つ”に通じるとされ、年神様が訪れてくださることを「待つ」心を表しています。また、松は常緑樹ですから、不老長寿の象徴として正月飾りによく使われます」
「そして、床の間や玄関には鏡餅*******を飾ります(写真参照)。鏡餅の形は昔の鏡を模していますが、日本では「鏡」は神様が宿る神聖なものとされてきました。つまり、鏡餅は新年に年神様を迎えて、その神様へのお供えといった意味が込められています。さらに、餅を二つ重ねることで「福が重なる」「円満に年を重ねる」形を表現するとともに、陽と陰、太陽と月を表しています」

Photo: 室礼三千
お正月のしつらいのお飾りは、鏡餅以外に華やかさを添えるため、特別な花や果物を飾るのも良いとされている。
「例えば、大きな柑橘類の実********を飾るのは良いですね。日本語で大きな幸運を意味する「大吉」を祈る象徴です。芽が出ている紅白のかぶ(写真参照)は、日本語でお祝いの際に言う言葉“お芽出とうございます”の文字上の意味(特に漢字)を表現し、特別な飾りとして好まれます。また、柳、松、椿、南天、水仙、百合、菊などの季節の植物も縁起物として、新年を彩ります。」

Photo: 室礼三千
海外のかたが日本に来られて、しつらいを見る機会があったら、一つひとつの飾りに込められた意味に思いを馳せ、その精神性、心を少しでも汲み取ってほしいと、山本さんは語る。
「旧年中に部屋の片づけ、掃除を済ませ、庭に水をまき穢れを祓い、清め、神様と共に、新年を清々しい気持ちで迎えるいうこと、これが日本人の精神を育ててきたのではないでしょうか。しつらいには新しい1年が良き年になりますように、という人々の願いが受け継がれているのです。」
* 日本建築で、座敷の床を一段高くし、掛け軸・置物・花などを飾る所。中世、書院造りの発達とともに形成され、近世以後の重要な座敷飾りとなった。
** 3月3日に女の子の幸せと健やかな成長を願ってお祝いする日本の行事。「桃の節句」ともよばれ、人形を飾りごちそうを食べる習慣がある。
*** 5月5日の端午の節句は、男の子の誕生を祝うとともに、その健やかな成長を祈る行事。人形や甲冑、鯉の形をしたのぼりを飾る習慣がある。
**** 新年に神様を家に迎える目印として門や玄関に飾られる。主に松と竹、時には梅が使われ、縁起の良い植物として新しい年の繁栄や長寿を象徴する。門松は左右一対で設置されることが多く、竹が中心となり、その高さや切り口に意味が込められている。
***** 屋内や神棚、仏壇などの埃りや汚れを掃除し、清めること。神様を迎えるために家を清めるという意味もある。
****** 稲や麦の茎を刈り取り、乾燥させたもの。
******* 餅米を蒸したものを、粘り気が出るまで、搗いて作る食品のこと。できたもちを大と小に切り分けて丸め、重ねてものを鏡餅と呼ぶ。
******** 文旦、晩白柚、鬼柚子などを飾ることが多い。どれも大きな果実が特徴。
By MOROHASHI Kumiko
Photo: Shitsurai Sanzen

