VOL.199 JANUARY 2025
[NEW YEAR'S ISSUE 2025] CELEBRATING A BRIGHT NEW YEAR IN JAPAN
[日本の技術]日本で多発する線状降水帯による豪雨を予測してその被害を最小限にするための技術

日本国内では近年、激甚な災害をもたらす豪雨が多発している。しかし、これまで、いつどこでどの程度の豪雨が発生するかを正確に把握することは困難であった。台風を除く豪雨の原因の6割は「線状降水帯」(別図参照。定義は本文に後述)であるが、最近、防災科学技術研究所、日本気象協会及び気象庁気象研究所は、その自動検出技術を共同で開発した。そして、その技術によって把握できた情報によって、自治体の正確な避難勧告の実現を目指している。
近年、日本では、「線状降水帯」と呼ばれる気象現象による豪雨によって、河川氾濫や土砂災害などの深刻な被害が急増している。2020年に気象庁気象研究所は、線状降水帯を「雨域が長さ50kmから300km、幅が20kmから50km程度(具体的にはアスペクト比*が2.5以上)で線状」であり、「3時間積算雨量が80mm以上の地域が500km2以上ある」、そして「3時間積算雨量100mm以上の地域がある」の三つの検出基準を定めて定義した。
線状降水帯は、列をなして発生する積乱雲群によって、数時間にもわたって同じ場所に集中豪雨をもたらす。日本では台風を除くと、豪雨災害の6割以上が線状降水帯によって引き起こされているという。
近年の線状降水帯の多発は、地球温暖化の影響もあると言われ、そのメカニズムや今後の予測研究などが気象研究所始め多くの研究機関や大学等で進められている。2023年9月には同研究所等六つの研究機関、大学の共同予測シミュレーションが実施され、日本においては「地球温暖化がさらに進行した場合、線状降水帯を含む極端降水は増加することが想定」と発表されている**。さらに、日本のみならず東アジア一帯でも多発し、近年被害が拡大しているという。

線状降水帯の発生メカニズム
積乱雲は地表付近の水分を多く含む温かい空気が強い上昇気流で上昇し、上空で冷やされることで発生する。線状降水帯が発生した場合には、積乱雲は風の流れによって移動するが、同じ場所で次々と新しい積乱雲が発生するため多量の降水が長く続く。
そのような状況から、防災科学技術研究所を始めとする多くの研究機関は、豪雨を予測してその被害を最小限にするため、特に、線状降水帯が発生する前兆となる気象条件の解明に取り組んできた。その最初の一歩として、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(略称SIP)***の課題である「国家レジリエンスの強化」の枠組みの中で、防災科学技術研究所と日本気象協会、気象庁気象研究所が共同で、災害をもたらす線状降水帯の自動検出技術の開発に取り組んだ。その結果、災害発生の危険性が急激に高まっている地域(具体的には危険度4****とされる避難指示が発表されている地域)において線状降水帯を検出することが可能となった。また、線状降水帯の発生をわかりやすく伝えるために、発生エリアを長楕円で表示する工夫も取り入れた。

そして、この検出技術によって検出された線状降水帯に関する情報は、ついに2021年6月、気象庁の「顕著な大雨に関する情報」として初めて一般国民向けに運用されることとなった。この「顕著な大雨に関する情報」は自治体の避難指示が出ているような災害の発生が差し迫った状況において発表されるため、災害発生前までに避難を短時間で完了する必要がある。この「顕著な大雨に関する情報」が夜間に発表されることもあり、短時間での避難が困難な場合もある。より余裕のある避難や日中避難を実現するために、線状降水帯の発生予測の精度改善にむけた研究は現在も続けられている。

この線状降水帯の自動検出技術と線状降水帯の予測技術が進歩していけば、日本のみならず、世界各地においても、豪雨発生を事前に予知して、的確な避難指示を出すための重要な情報となるだろう。今後、内外の豪雨被害を最小限にするために大いに貢献してくれるに違いない。
* 画像などの長辺と短辺の長さの比率のこと。ここでは雨域の長さと幅の比を指す。
** 2023年9月に気象研究所らが合同で発表。気象庁気象研究所「【共同プレスリリース】地球温暖化がさらに進行した場合、線状降水帯を含む極端降水は増加すると想定されます」参照。
*** 内閣府総合科学技術・イノベーション会議が指揮を執り、府省の枠や分野を超えて社会課題の解決につながる研究を推進する日本の国家プロジェクト。産学官連携で科学技術イノベーションの推進に取り組む。
**** 集中豪雨や台風などによって、水害や土砂災害などの災害が発生するおそれがあるときに、その危機レベルを図る指標がレベル1から5まで設定されている。1はもっとも低く、5はすでに災害が発生し逼迫した状況をさす。
By FUKUDA Mitsuhiro
画像・資料提供: 防災科学技術研究所、SHIMIZU Singo
Photo: PIXTA

