VOL.211 JANUARY 2026
JAPAN AND UME 個性豊かな梅の花の楽しみ方


早咲きの代表的な品種である八重やえ寒紅かんこう

冬の寒さの中、いち早く春の訪れを告げる梅の花。日本には約400品種の梅があり、12月から3月にかけて全国各地で観梅かんばいを楽しむことができる。梅の花の楽しみ方について専門家に話を聴いた。

奈良時代(8世紀頃)から日本の文化や生活に深く根付いてきたとされる梅。その奥深い魅力について、「日本梅の会」会長で農学博士の大坪おおつぼ 孝之たかゆきさんは、「桜が春の華やかさを象徴する花なら、梅は寒さに耐えて凛と咲く気高さを象徴する花です。その品種は驚くほど多く、楽しみ方も多様です」と語る。

日本には花を観賞する「花梅」だけで約400品種あると言われている。これほど品種が多い花木は世界的にも珍しい。その多様性の背景には、長い歴史の中でアンズとの交雑が進み、複雑な進化を遂げてきたことがある。

大坪さんによると、「花梅」は大きく三つに分類できるという。

「香りが良く、梅の原種に近い「野梅やばい系」、アンズの性質が強く、花が大きくて遅咲きの「豊後ぶんご系」、そして、枝の断面が赤い「緋梅ひばい系」の3系統があります。花の色は白、ピンク、赤と多彩で、咲き方も一重や八重やえの花があるなど、実に個性豊かです」


「緋梅ひばい系」の鹿児島紅梅。枝も赤いのが緋梅系の特徴である。

例えば、早咲きの代表品種「八重やえ寒紅かんこう」は12月から咲くため、正月の飾り付けに使われることもある。また、「道知辺みちしるべ」はピンク色で花形が美しい一重咲きの品種で、人気が高い梅だという。


一重のピンクの花びらが美しい「道知辺みちしるべ」

品種によって開花時期が異なるため、鑑賞できるシーズンが長いことも梅の魅力だ。「早咲き」「中咲き」「遅咲き」とリレーするように咲き継ぐため、品種が豊富な梅林ばいりんでは2から3か月近く梅の花を楽しむことができる。長い冬の間、少しずつ春が近づいてくるのを感じられるのが、梅ならではの風情だ。

梅の観賞ガイドも務める大坪さんは、「桜と梅では観賞の仕方が大きく異なります」と語る。

桜の花見と言えば、満開や桜吹雪の下で宴を楽しむのが一般的だ。しかし、梅の花見(観梅)には、早咲きの梅を探す「探梅たんばい」、にぎやかに咲き誇る梅を愛でる「賞梅しょうばい」、散りゆく花を惜しむ「送梅そうばい」という言葉があり、静かに香りや枝ぶりを鑑賞する。

「多くの人は満開を求めますが、梅の花が最も美しいのは二分咲きや三分咲きの咲き始めです。理由は、最初に咲く花は枝からの養分を多く受け取っているため勢いがあり、形も整っているからです。しかし、満開になる頃には、最初に咲いた一番良い花は色褪せてしまうことが多いのです」

また、梅の花を美しく写真に収める方法も教えてもらった。

「満開の全体像を撮るよりも、生命力にあふれた美しい一輪にクローズアップしてみてください。花の中心にある雄しべの先が黄色く開いているのが、新鮮で一番美しい状態の花です。撮影するときは、正面から咲いている花を一つ、その近くにふくらんだつぼみ、若々しい枝を一緒にフレームに入れてみてください。品種の特徴や花の美しさが際立つ写真が撮れます」

こうした梅との出会いを楽しめる名所は日本各地に点在している。

歴史的な情緒を味わうなら、学問の神様・菅原すがわらの道真みちざね(すがわらのみちざね)を祀る「太宰府天満宮だざいふてんまんぐう」(福岡県太宰府市)(参照:梅のまち・太宰府の伝統と未来を結ぶ「梅」プロジェクト| January 2026 | HIGHLIGHTING Japan)や「湯島ゆしま天満宮てんまんぐう」(東京都文京区)などの神社仏閣がおすすめだ。厳かな雰囲気の中で梅の花を楽しむことができる。

また、日本三名園の一つである「偕楽園かいらくえん」(茨城県水戸市)(参照:梅で名高い「偕楽園」 | May 2021 | Highlighting Japan)や、早咲きの梅で有名な「熱海あたみ梅園ばいえん」(静岡県熱海市)などの庭園では、美しい景観とともに梅を観賞できる。


日本三名園の一つ「偕楽園かいらくえん」の梅林

多種多様な品種を見比べるなら植物園もおすすめだという。「神代じんだい植物しょくぶつ公園こうえん」(東京都調布市)や、「小田原フラワーガーデン」(神奈川県小田原市)では多くの梅の品種が集められており、花の色や形の違いをじっくり観察できる。

そして、幹が地を這はう龍のように見える「臥竜梅がりゅうばい」のように、長い年月を生き抜いた、存在感がある名木も各地にあるので見逃せない。

「ぜひ各地の梅園を訪れて個性豊かな梅の花を楽しみ、一足早く春の訪れを感じてください」


幹や枝が地を這はうように横に伸びる「臥竜梅がりゅうばい」。

By MURAKAMI Kayo
Photo: PIXTA

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