VOL.211 JANUARY 2026
JAPAN AND UME 梅の街・太宰府の伝統と未来を結ぶ「令和の都だざいふ「梅」プロジェクト」

太宰府天満宮に咲く梅の花
Photo: 太宰府市

九州北部に位置する福岡県太宰府だざいふ市では、古来より、梅はこの地の象徴であり、人々の暮らしに溶け込んできた。市内にある梅の木から採れる実を活かした商品開発や植栽活動など、地域ブランドの創出として進められている「令和の都だざいふ「梅」プロジェクト」について、太宰府市産業振興課の担当者に話を聴いた。

約1300年前、九州を統治する役所「大宰府だざいふ」が置かれ、現在は学問の神として知られる菅原 道真すがわらのみちざね1を祀る太宰府天満宮で有名な福岡県太宰府市。道真が京都から大宰府へと左遷された際、彼が大事にしていた梅が、彼を慕って一夜にして大宰府に飛んできたと伝えられる「飛梅とびうめ」の伝説は広く知られ、梅は太宰府の象徴となっている。

市内には、太宰府天満宮の境内に植えられた梅の種類は200種にもおよび、また史跡地には約600本の梅の木が植えられている。市内の橋や歩道の装飾にも梅の意匠があしらわれ、街そのものが梅と共にある。こうした歴史と文化を背景に、太宰府市が本格的に始動させたのが「令和の都だざいふ「梅」プロジェクト」だ。太宰府市産業振興課の浦塚うらづか 雅司まさしさんによると、もともと市が管理する史跡地の梅は、文化財保護法の関係で商業利用が認められていなかったという。しかし、市が文化庁と協議を重ねた結果、伐採した枝や梅の実などを地域振興のために活用できるよう規制が緩和された。これが「令和の都だざいふ「梅」プロジェクト」のきっかけである。「市内の梅を新しい形で活かすチャンスになりました」と浦塚さんが言うように、プロジェクトでは、梅を活かした特産品づくりを通して、地域経済の活性化と文化の継承を両立させることを目指している。

これまでに市内外の24事業者が参加し、約40種類の商品が開発された。地元の高校と地元企業が共同で開発した「太宰府梅サイダー」のほか梅酒、クラフトビールなど、梅の味を生かした多彩な商品が生まれている。


「梅」プロジェクトで生まれた「太宰府梅サイダー」
Photo: ISHIZAWA Yoji

菅原道真の歌からネーミングされた梅酒「東風こちの梅」
Photo: ISHIZAWA Yoji

梅がほのかに香るクラフトビールの一例。
Photo: ISHIZAWA Yoji

「梅」プロジェクトで開発された商品の一例。
Photo: ISHIZAWA Yoji

また2025年3月には、「太宰府梅乃市」というマルシェを初開催。地元事業者による梅関連商品が並んだほか、東京からも梅にちなんだ商品が運ばれ、「太宰府=梅の街」であるということを大々的にPRした。


「太宰府梅乃市」の様子
Photo: 太宰府市

一方、市では梅の植栽と適切な管理を進めることで、長期的な環境保全と地域産業の基盤づくりを目指す。「現在の梅は樹齢の高いものが多く、剪定せんていや下草したくさ刈りなどの管理を強化する必要があります。栽培面の整備を進めながら、将来的には梅を核とした観光・教育・産業の連携を強めていきたいです」と浦塚さんは語る。

その一環として、地元の高校や大学と協力した教育プログラムも構想中だ。梅の文化や加工技術を学ぶことで、地域の学生たちが「地元の誇り」の意識を育むことを狙いとしている。

「身近に梅の商品が増えたことで、市民の間でも“梅の街太宰府”という認識が以前よりも広がっているのではないでしょうか」と浦塚さんは語る。梅の収穫量は年間2トンほどとまだ少ないものの、希少価値のある「太宰府の梅」として新たなブランド価値を育てつつある。

「まだ寒い早春に梅の花が咲くと、街全体が華やかになります。太宰府の象徴である梅の木を大事に育て、未来へ引き継いでいきたい」と、市では「令和の都だざいふ「梅」プロジェクト」による街おこしに期待を寄せている。

「令和」ゆかりの地・太宰府

初春の令月にして気淑よく風和やわらぎ
梅は鏡前の粉を披ひらき
蘭は珮後はいごの香を薫らす

この歌は、奈良時代の歌人・大伴 旅人おおとものたびと2が、太宰府の官邸で催した「梅花の宴」の情景を詠んだもの。日本では、西暦以外に年を数える「元号」3が用いられているが、この歌の序文が、2019年に制定された元号「令和」の出典となった。「令和」には、人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つ、という意味が込められている。太宰府市はこの歌にちなみ、「令和発祥の地」としても知られる。

旅人が詠よんだこの歌の「令月」は「よき月」を、「気淑よく風和やわらぐ」は「清らかな気と穏やかな風」を意味し、自然と人の調和をたたえている。「令和の都だざいふ「梅」プロジェクト」の背景には、約1300年前に詠まれたこの歌の精神である「人と自然が共に生きる美しさ」が息づいている。


太宰府市役所に建てられている大伴旅人と息子の家持やかもちの銅像
Photo: ISHIZAWA Yoji
  • 1. 845年生まれ、903年没。学問を重んじる家柄に生まれ、幼い頃から学問に励んでいたとされる。政治家としても活躍した。
  • 2. 665年生まれ、731年没。役人であり、歌人としても知られる。日本最古の歌集である「万葉集」に多くの歌を残した。
  • 3. 645年に始まった、特定の年代につける称号。日本においては、1979年制定の元号法で「皇位の継承があった場合に限り改める」と規定している。

By YANAGISAWA Miho
Photo: ISHIZAWA Yoji; Dazaifu City

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