VOL.194 JULY 2024
JAPANESE SMALL AND MEDIUM ENTERPRISES LEADING THE WORLD
狭い屋内空間で鮮明な映像を撮影するドローン
手のひらに載るサイズの屋内点検用ドローン
Photo: Liberaware
千葉市に本社を置く株式会社Liberaware(リベラウェア)は、内蔵カメラで屋内空間の映像を撮影する手のひらサイズのドローンを開発して、販売している。そのドローンの特徴は、機体の小型化と屋内空間の安定した飛行、そして高感度カメラを使用した鮮明な映像撮影にある。
株式会社Liberawareが開発した「超狭小空間点検ドローンIBIS2」は、大きさが約20㎝四方の手のひらサイズ。重さはわずか243gにすぎない。
同社スマート保安事業部で広報担当を務める向山 卓弥さんは、「産業用途のドローンとして大きさは世界最小クラスです。重さは果物の桃およそ1個分。30㎝の隙間があれば入り込め、直径50㎝の配管内も対応可能です」と胸を張る。
この小さく軽いドローンが、狭い空間の内部を飛行し、内蔵する高感度カメラで鮮明な映像を撮影する。電波が届かない環境下では、空間内に専用のアンテナを設置して、空間外から人が操作することによって稼働できる。飛行時間は、バッテリー駆動で最大11分だ。
例えば天井裏や配管内など、狭く、暗く、危険な設備の点検業務をこのドローンに置き換え、人は安全な場所から操縦できる。現在では、東日本旅客鉄道株式会社が所有する駅施設の天井裏の点検業務などで活用されている。
「作業員が点検口から天井裏に立ち入ることが可能な場所であっても、天井を踏み抜くおそれもあります。とはいえ点検口から顔を出し周囲を見渡すだけでは範囲が限られます。しかし、ドローンであれば、広範囲な点検を手間なく実施できます」と向山さんは説明する。
屋内点検用のドローンとしての強みは、機体が小型・軽量という点だけでなく、飛行が安定しているという点も挙げられる。
「小型ドローンは通常、飛行中に空間内の側面に衝突すると、そこで動きが止まってしまいます。しかし、当社のドローンは、姿勢制御技術を用いて水平飛行を続けるように仕組まれているため、その心配がありません」と向山さん。あらかじめ、側面への衝突を念頭に置いて、衝突しても持続して飛行できるように開発していることも特徴だ。
そのほかに、機体に内蔵するカメラにも強みを持つ。撮影環境は天井裏のような暗がりであることが多いだけに、カメラには、そうした環境でも鮮明な映像を撮影できるだけの感度の高さが求められる。そこで、セキュリティカメラ用イメージセンサー*技術で世界をリードするソニーグループの技術を取り入れ、高感度の広角カメラを独自に開発した。このカメラを機体前方に内蔵し、進行方向を撮影する。
昨今、この屋内点検用ドローンの使い道が広がってきている。例えば、災害時の行方不明者捜索や被災家屋内の被害状況確認などの調査などへの活用、と向山さんは強調する。「当社のドローンは身近なインフラ施設内の点検だけではなく、今年(2024年)1月の能登半島地震の被災した倒壊建物内部の被害状況調査など、人が入ることができない、様々な場所への活用の幅が広がっています。施設内での点検を始め、何かお困りのことがあれば、是非当社のドローンを思い出していただければと思います」。
* イメージセンサーは、デジタルカメラの「目」ともいわれる部分。 カメラのレンズから入った光を電気信号に変えてデータ転送する役割を担う。 セキュリティカメラ用イメージセンサーは、最先端の撮像技術により暗所など厳しい環境においても撮影できる能力を有する。
By MOTEGI Shunsuke
Photo: Liberaware