VOL.194 JULY 2024
JAPANESE SMALL AND MEDIUM ENTERPRISES LEADING THE WORLD バーコードなどを用いて高温下でも生産工程を管理できる耐熱ラベル

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YSテック株式会社の本社(大阪府吹田市)
Photo: ISHIZAWA Yoji

鉄鋼メーカー(合同製鐵株式会社の大阪製造所)で活用されているQRコードを使用した耐熱ラベル。
Photo: YS tech

1,000℃までの高温の中でも、バーコードなどによる生産管理を可能とした「ヒートプルーフ®︎」。高温物に直接貼れるラベルとして世界シェア100%を誇り、現在、世界36か国で活用されている。

現在、国内外の何らかの製品をつくる工場では、バーコードなどを用いて生産工程を管理するのが一般的だ。一方、金属や陶磁器の製造現場でも同じように製品を管理したいというニーズがあったものの、製造・加工時は非常に高温となるため、従来の一般的なバーコードラベルは使えなかった。この課題を解決したのが、YSテック株式会社の耐熱ラベル「ヒートプルーフ®︎」だ。取締役営業部長 岡山おかやま 太一たいちさんに話を聴いた。

「開発のきっかけは、約20年前、カナダのアルミニウム製錬工場から、500℃のアルミに直接ラベルを貼りたいと相談されたことです。当時そのようなものは存在しませんでした。そこで、我々はその開発に挑戦し、基材やインクの材料の選定、各材料の配合、そして加工に多くの試行錯誤を繰り返しました。加えて、高温の対象物にラベルを自動で貼り付ける装置もなかったので、そのための装置も自社製造することを決断し、装置設計の技術者を採用して、一から開発に取り組みました。装置の製造や導入の経験がなかった中、装置の自社製造を行ったことは、耐熱ラベルの開発以上に困難なことでした。海外顧客の工場で数段階の試験を繰り返し、多くの費用と時間をかけて完成に至りましたが、この経験がその後の展開に貢献したと考えています。」


高温の対象物に直接貼り付けて熱処理工程を一貫管理できる耐熱バーコードラベル。
Photo: ISHIZAWA Yoji

2004年、500℃までの高熱の中で使えるバーコードラベルと、貼付け装置が完成。このシステムは、生産工程の管理だけではなく、出荷管理にも役立てられている。顧客や製品によっては、YSテックのラベルが出荷ラベルも兼ねることがあるが、これまでは金属が素材の製品だと、高温から冷めるのを待って出荷ラベルを貼る必要があった。そのように加工から時間を置くと、出荷先や出荷する製品を取り違えてラベルを貼るミスが起こることがあったが、高温内での作業中や、鋳造ちゅうぞう直後にラベルを貼れるようになったことで、そのような間違いが起こらなくなった。もちろん、手書き文字と違って読み間違いも起こらない。しかも、耐熱ラベルへのバーコード情報等の印刷は、市販の熱転写プリンタ*で可能だという。ただし、YSテックのラベルへの印刷の場合、用いるインクリボンは、高熱が加わっても印字が焼失せず、屋外で1年放置しても褪色しない、同社独自の設計のものを使用することが推奨される。


熱転写プリンタ内部の様子。手前の白いロールがラベル用紙、左上の黒いロールがインクリボン。どちらも高熱が加わっても印字が焼失しない耐熱性を有する。
Photo: ISHIZAWA Yoji

このラベルが多くの工場に導入されていく中で、同社はさらに多様なニーズがあると気づいた。より高温の中で使いたい、常温で貼り付けた後に熱処理をしたい、もっと特殊な金属や金属以外の素材にも貼り付けたい、などである。

「我々はこの20年間、各社のニーズに応え、より耐熱性の高い製品や、多様な使用条件に対応した製品を開発し続けてきました。現在は1,200℃まで耐えられる製品もあります。これだけの高温対象物に直接貼り付ける技術をもつのは、世界で当社だけです」

近年はトレーサビリティ**の強化が世界的なトレンドで、原料の調達から生産、廃棄まで追跡できることが求められる。このヒートプルーフ®︎を使えればトレーサビリティはもちろん、生産工程の時間の短縮ができるし、人間が高温環境や高温の物体に近付かなくてすむために危険作業の低減も実現できる。そういった利点が評価され、現在、ヒートプルーフ®︎は世界36の国と地域で使用されている。


ヒートプルーフ®︎のバーコードラベルは市販の熱転写プリンタで印刷可能。
Photo: ISHIZAWA Yoji

「今後も各地域で製品の認知度を上げ、ヒートプルーフ®を用いたバーコード管理の普及を進めて行きたいです」と岡山さんは言う。現在も導入先が増加している状況の中、これからの展開に期待を寄せている。

<バーコード>
英語ではbar code。文字、数字といった情報を、縦の黒い平行線(バー)と白いスペースとを組み合せて示した記号体系のこと。線の太さや間隔を変えることでデータを表し、たいていの製品、商品に使用されている。バーコード情報はバーコードリーダーやバーコードスキャナーという専用の読取り機で認識し、デジタルデータ化されコンピュータに取り込むことができる。また、従来のバーコード(1次元コード/1Dコード) が横(水平)の一方向でしか情報を格納しなかったのに対し、縦(垂直)と横(水平)のニ方向で情報を格納するQRコードなどの「二次元コード(2Dコード)」があり、小さな印字面積でありながら非常に多くの情報を持たせることができる。

* 加熱した印字ヘッドでインクリボンを用紙に押しつけて転写する印字方式のプリンタのこと。
** 商品の生産から消費までの過程を追跡し、その過程を把握・記録するシステム。


By SAKURAI Yuko
Photo: YS tech; ISHIZAWA Yoji

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