VOL.194 JULY 2024
JAPANESE SMALL AND MEDIUM ENTERPRISES LEADING THE WORLD
[政策お知らせ]「第10回 太平洋・島サミット(PALM10)」の開催について
PALM10参加首脳記念撮影
日本と太平洋島嶼国・地域が首脳レベルで率直に意見交換を行い、地域の安定と繁栄に貢献するとともに互いのパートナーシップを強化する目的で開かれる太平洋・島サミット(Pacific Islands Leaders Meeting: 略称PALM)。その第10回となる会合が2024年7月16日から18日、東京で開催された。その概要と成果を紹介する。
ミクロネシア、メラネシア、ポリネシアの三つの地域にある太平洋島嶼国・地域は、親日的で、共通の価値・原則を共有し、国際社会での様々な取組や諸活動において緊密に連携するなど、日本にとって重要な国々である。「PALM」は、日本がこれらの国々との関係を強化する目的で、1997年に初めて開催され、以来3年ごとに日本で開催されてきた。太平洋島嶼国は、「国土が狭く、分散している」、「国際市場から遠い」、「人口が少なく経済規模が小さい」、「広大な海洋に囲まれている」といった困難に加え、自然災害や気候変動等の環境変化に対する脆弱性を抱えており、PALMではこうした様々な課題について共に解決策を探り、太平洋島嶼地域の安定と繁栄を目指し、首脳レベルで議論を行ってきた。
10回目となる今回は、日本、太平洋島嶼国14か国、仏領2地域、オーストラリア連邦、ニュージーランドの計19か国・地域(地図参照)の首脳等と太平洋諸島フォーラム(Pacific Islands Forum:略称PIF)*の事務局長が一堂に会した。前回は新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、オンライン開催だったため、6年ぶりの対面開催となった。18日に行われた首脳会合の開会セッションでは、共同議長である日本の岸田文雄内閣総理大臣と、PIF本年度議長国・クック諸島のマーク・ブラウン首相が冒頭挨拶を行った。その後は三つのセッション、ワーキングランチに分けて、PIFの「2050年戦略」**に定められた七つの分野を中心に議論が行われた。セッション終了後には、今回の議論の成果として「第10回太平洋・島サミット(PALM10)首脳宣言」及び附属文書である「第10回太平洋・島サミット(PALM10)共同行動計画」を採択した***。
PALM10参加国と地域(①②は議長国)
外務省の資料をもとに作成
PALMのあゆみ
太平洋島嶼国地域では1960年代以降次々と独立国家が誕生したが、日本は、これらの国々の独立よりも前から人的交流を含む親密な関係を築いてきた。現在の日本にとっても、太平洋島嶼国は国際社会のパートナーであり、資源(水産・エネルギー等)の重要な供給地、海外輸送路として非常に重要だ。3年おきのPALMとその合間に開催される中間閣僚会合も通して、日本と太平洋島嶼国は絆を深め合ってきた。
PALM10開催期間のスケジュール
7月16日 | 林芳正内閣官房長官夫妻主催歓迎レセプション 二国間会談(日本とツバル、バヌアツ、ニウエ、パプアニューギニア) 岸田内閣総理大臣への表敬(PIF事務局長) |
7月17日 | 岸田文雄内閣総理大臣夫妻主催晩餐会 二国間会談(日本とパラオ、マーシャル諸島、フィジー、サモア、クック諸島、トンガ、ソロモン諸島) 岸田内閣総理大臣への表敬(ニュージーランド、オーストラリア連邦) |
7月18日 | 「首脳会合」(セッション1から3、ワーキングランチ)、共同記者発表 二国間会談(日本とミクロネシア連邦、ナウル)、パートナーズ・プログラム 岸田内閣総理大臣への表敬(仏領ポリネシア) |
関連行事として、日・太平洋島嶼国友好議員連盟主催昼食会、太平洋島嶼国・日本地方自治体ネットワーク(PALM&G)第3回会議、外務省・JICA共催イベント「人材育成を通した太平洋と日本のキズナ」、外務省・経産省・JETRO共催イベント第4回日本・太平洋島嶼国経済フォーラムなども行われた。
また、天皇皇后両陛下は、PALM10に出席した各国の首脳を皇居・宮殿に招き、茶会を催された。
各セッションの概要
第1セッション -テーマ:「2050年に向けたPALMパートナーシップのビジョン - 共に歩む」-
岸田内閣総理大臣が、PALM9で日本から発表された「太平洋のキズナ政策」で掲げた、しっかりとした開発協力と、当初の目標を上回る7,500人の人的交流・人材育成が達成されたことに触れた上で、一つ一つの協力が太平洋島嶼国・地域の力になっていることが何よりも重要である旨述べた。対して、太平洋島嶼国・地域からは、PALMがこれまで果たしてきた先駆的な役割への高い評価、PALM9における日本のコミットメントの実現に対する謝意が示され、今後とも日本との協力を発展させていきたいとの発言がなされた。
第2セッション -テーマ:「気候変動と災害」、「海洋と環境」-
岸田内閣総理大臣が、太平洋島嶼国地域にとって「存続に関わる唯一最大の脅威」である気候変動に対する危機感を完全に共有するとした上で、(1)防災能力の強靱化、(2)脱炭素化の推進、(3)太平洋島嶼国自身の取組の支援、の3本柱から成り、日本の技術・ノウハウ・資金を総動員したオールジャパンの取組である「太平洋気候強靱化イニシアティブ」を表明した。太平洋島嶼国からは、日本の取組に対して歓迎の意とともに、今後も日本との協力を継続していきたいとの発言がなされた。
第3セッション -テーマ:「人を中心に据えた開発」、「資源と経済開発」、「技術と連結性」-
岸田内閣総理大臣が、「人間の尊厳」を守り強化するため、教育・保健分野における協力を引き続き進めていくとともに、日本と地域の間でこれまで実施してきた人的交流・人材育成のプログラムや今般新たに決定した太平洋島嶼国の若手行政官を対象とした人材育成を通じて、人と人との交流を更に拡大していきたいと述べた。対して、太平洋島嶼国・地域からは、日本の取組に対して歓迎の意が示されるとともに、金融、貿易、投資、インフラ整備等における日本との更なる協力への期待が表明された。
ワーキングランチ -テーマ:国際場裏での協力、「平和と安全保障」、PALM10後の展望-
日本と太平洋島嶼国・地域は、共通の価値・原則を確認するとともに、自由で開かれたルールに基づく国際秩序の重要性で一致した。また、岸田内閣総理大臣から、今後3年間に、引き続きしっかりとした開発協力と6,500人以上の人的交流・人材育成を実施することにコミットする旨述べた上で、PALM11の開催前に第6回中間閣僚会合の実施を提案した。
最後に、今後も日本と太平洋島嶼国・地域が共有するビジョンの実現に向けて共に歩むことを確認し、相互の「キズナ」をさらに強化していく決意を新たにし、PALM10首脳会合は閉会した。
注記:本記事は外務省の了解の上、同省の公表資料に基づき作成している。
* クック諸島、オーストラリア連邦、ミクロネシア連邦、フィジー、仏領ポリネシア、キリバス、ナウル、ニューカレドニア、ニュージーランド、ニウエ、パラオ、パプアニューギニア、マーシャル諸島、サモア、ソロモン諸島、トンガ、ツバル、バヌアツの16か国及び2地域が加盟する、大洋州諸国首脳の対話の場及び地域協力を目指すフォーラム。(国名は一部略称表記)
** 太平洋島嶼国が、将来に向けた共通の戦略として2022年に策定した。①政治的リーダーシップと地域主義、②人を中心とした開発、③平和と安全保障、④資源と経済開発、⑤気候変動と災害、 ⑥海洋と自然環境、⑦技術と連結性の7項目から成り、太平洋島嶼国の関心事項や問題意識が集約されている。
*** 首脳宣言と共同計画は外務省「第10回太平洋・島サミット(PALM10)(令和6年7月16~18日)」で参照することができる。
Photo: Courtesy of Cabinet Public Affairs Office