VOL.194 JULY 2024
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[日本刀の美]太刀 銘三条(名物三日月宗近)
作者である名刀工の宗近は京都の三条に居住していたとされ、「宗近」と「三条」の二通りの銘を残した。三日月宗近には「三条」の銘が刻まれている。(寸法:刃長約80㎝、反り約2.7㎝)
Photo: ColBase
国宝「太刀 銘三条(名物三日月宗近)」は、10世紀から12世紀に制作されたとされる。作者の宗近は名刀工として知られ、室町時代(1392-1573)の刀剣書によれば、一条天皇(第66代。在位986年から1011年)の御代の始めの頃、京都三条に住していたと伝わり、三条宗近と呼ばれる。銘には「宗近」と「三条」の二通りがある。三日月宗近は「『三条』銘の代表作で、室町時代には天下五剣の一つとされた。茎から腰にかけて強く反り、先はほとんど反りがなく、日本刀の形式として古く、風格ある姿をもっている。刃文に三日月の形が見えるので、『三日月宗近』の号をもつ。」*
16世紀に天下統一を果たした戦国武将・豊臣秀吉の正室・高台院の遺品として江戸幕府第二代将軍の徳川秀忠(在任:1605年から1623年)に贈られて徳川将軍家に伝わったとされ、現在は東京国立博物館の所蔵となっている。
三日月宗近は細かく複雑な刃文が特徴。三日月のようにカーブした白い線がいくつか見られることが名称の由来である。
Photo: ColBase
* e国宝より引用。
≪本記事の用語について≫
- 室町時代…本記事では、室町時代を1392年(南北朝合体の年)以降とした。一般には足利氏が将軍として京都に幕府を開いていた1336年から1573年までの約240年を指すが、諸説ある。
- 天下五剣…数ある日本刀の中で最高傑作とされる五つの名刀
- 茎…刀剣本体の刀身のなかで、柄に収める握り部分を指す。
- 刃文…日本刀の制作過程の一つである、高温状態から急激に冷やして鋼を硬くする「焼き入れ」の際に付けられる白い波のような模様。時代や流派によって違いがあり、刀工の個性が表現される日本刀の見どころの一つ。