VOL.213 MARCH 2026
EXPLORING JAPANESE POTTERY 丹波たんば焼の里に泊まり陶工の営みに触れる「陶泊とうはく

成形した器を焼くために窯の中に並べる工程「窯入れ」の作業を体験する参加者。
Photo: 丹波焼「陶泊」事務局

兵庫県丹波たんば篠山ささやま1では、陶工の工房に宿泊し、やきものの文化と陶工の暮らしに触れる体験型プログラム「陶泊とうはく」が行われている。このプログラムの主催者に話を聴いた。

日本六古窯ろっこよう(参照:日本の陶磁器文化を継承する「日本六古窯ろっこよう」 | March 2026 | HIGHLIGHTING Japan)の一つである丹波たんば2の里として知られている兵庫県丹波篠山市の立杭たちくい地区。丹波焼は約850年の歴史を持つ伝統的なやきもので、山間の約2km圏内に約60軒もの窯元3が点在し、作陶が続けられている。この立杭地区では、丹波立杭陶磁器協同組合をはじめ、地域の事業者や団体が連携して運営する体験型プログラム「陶泊とうはく」が、2024年から行われている。


宿泊先となる窯元。2階が宿泊スペース。
Photo: 丹波焼「陶泊」事務局

「陶泊」は、毎月一組限定のプログラム。参加者は作陶の工程を体験するだけでなく、窯元に一泊二日滞在して陶工と同じ空間で過ごし、陶工の普段の生活を追体験できることが特徴だ。プログラムでは、1日目に若手の陶工が周辺の他の窯元も案内し、歴史ある登り窯4を見学する。その後、宿泊先となる窯元に移動し、夕食は丹波焼の器に盛られた地元の食材を使った料理を囲みながら、陶工や地域の人々と交流する。翌日は作陶体験を行い、周辺を散策して器の買い物などを楽しみ、一泊二日の滞在を終える。作成した作品は窯元が焼成し、後日自宅に届く。


作陶体験を行う参加者の様子。
Photo: 丹波焼「陶泊」事務局

弟子入り体験で、焼き上がった作品を窯出しする参加者。
Photo: 丹波焼「陶泊」事務局

陶工や地域の人たちと夕食を共にする参加者。
Photo: 丹波焼「陶泊」事務局

参加者たちとの夕食では、地元で採られた野菜のBBQなどが丹波焼の器に乗せて振る舞われる。
Photo: 丹波焼「陶泊」事務局

地元のお酒も丹波焼の酒器に入れて提供される。
Photo: 丹波焼「陶泊」事務局

丹波たんば焼の登り窯。

後日送られてくる、作陶体験で製作した陶器の一例。
Photo:丹波焼「陶泊」事務局

この取組の目的には、やきものの産地の継承と文化観光の推進がある。「陶泊」の事務局を務める一般社団法人丹波焼「陶泊」事務局の田林たばやし 信哉しんやさんは、次のように語る。

「器は完成品だけを見ても、その産地の魅力は伝わりきらないと感じていました。陶工たちと交流することで丹波焼への理解が深まり、産地の背景まで伝えられると考え、兵庫県内で活躍するアートディレクターや、伝統産業の新規事業開発を手掛ける方たちから提案を受けて一緒に「陶泊」を立ち上げました」

現在は10名ほどの若い陶工がガイド役を担い、旅行者と産地を繋ぐ役割を果たしているという。こうした活動を通じて、地域の同業者同士の交流も生まれつつある。

この取組が評価され、「陶泊」を含む丹波焼は2025年2月にクリエイティブ・ツーリズム・アワード20255で、ワールド・ベスト・クリエイティブジャーニーを受賞した。田林さんは、「丹波焼の独自性や、窯元の日常や伝統を体験できる点、産地内の交流や人材育成に繋がった点が評価されたと聞いています」と語る。


宿泊先となる窯元周辺の風景。
Photo: 丹波焼「陶泊」事務局

「陶泊」は産地の暮らしや文化、作陶の工程に触れ、日本のやきもの文化を立体的に理解するという新しい旅のスタイルを提示している。田林さんは「伝統工芸と地域文化の継承を両立させる取組として、丹波焼で実践を重ね、他の地域にも広がっていけば嬉しいです」と語る。

  • 1. 兵庫県の中東部に位置する市。大阪府大阪市や兵庫県神戸市から電車や車で1時間程度の距離にあり、農産物の特産品、歴史的な街並み、伝統産業が残るエリア。
  • 2. 兵庫県丹波たんば篠山ささやま立杭たちくい地区を中心に生産されてきた伝統的な陶器。壺・かめなど生活用の器を多く生み出し、窯で焼かれる過程で自然に生じる自然ゆうによる素朴な表情が特徴とされる。
  • 3. 陶器を作るための工房、またはその職人を指す。
  • 4. 丘などの傾斜面に階段状に焼成室(房)を連続して築いた窯。下から上へ焚き上げ、炎や灰が室内を流れることで、多様な焼き上がりが生まれる。
  • 5. EUの支援で設立された旅行者と地域住民の共創による体験型観光の発展を目指す国際的組織であるクリエイティブ・ツーリズム・ネットワークが主催する、地域文化を生かした観光の取組を表彰する国際賞。

By TANAKA Nozomi
Photo: Tamba-yaki Tohaku Secretariat; PIXTA

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