VOL.213 MARCH 2026
EXPLORING JAPANESE POTTERY
[政策お知らせ]エレベーター及びエスカレーターの安全な利用のために

エレベーター及びエスカレーターは身近で便利な移動手段だが、利用方法によっては重大な事故につながる可能性もある。過去の事故事例を踏まえ、エレベーター及びエスカレーターの安全な運用、利用に向けた国や設置者の取組や利用の際に確認しておきたいポイントを紹介する。
エレベーターの事故を防ぐために知っておきたいこと
2006年に東京都港区のマンションで起きたエレベーターによる死亡事故は、降車時にドアが開いたままエレベーターのかごが動き出したために、自転車を引いていた高校生がかごとドア枠に挟まれるという痛ましいものであった。事後の調査によりかごを保持するブレーキ部分の摩耗が原因と判明したこの事故を契機に、2009年に建築基準法施行令等が改正され、新たに設置されるエレベーターには「戸開走行保護装置1」の設置が義務付けられている。しかし法令が改正される前に設置されたエレベーターには全面的な改修を行う場合を除き現行基準が適用されないため、既設エレベーターの多くが保護装置のないまま運用され続けている。そこで国土交通省では安全装置設置費用の一部を助成する制度を2012年度に創設し、安全装置の普及に努めるとともに、2016年には適正な保守管理のための定期検査基準の具体化や維持管理指針の公表などを行い、エレベーターの設置者や運用者に向けて安全対策の啓蒙を行ってきた。その成果もあり、安全装置の設置率は2017年度調査時点の17.4%から年々増加し、2025年度の調査時点で全国のエレベーターおよそ78万台のうち39.5%となったものの、未だ4割に届いておらず、より一層の安全運用への啓蒙、対策が必要である。また、地震の際の閉じ込め事故を防ぐために、最寄り階に自動で停止し乗客が降りられるようにする「地震時管制運転装置」の普及に努めるほか、これらの安全装置が設置されていることを示し、利用者に安心感を与えるためのマーク(図1参照)を掲示することで、エレベーター利用者に安全性に関する情報を提供することを推奨している。

国土交通省の入る中央合同庁舎3号館のエレベータホール(左)と戸開走行保護装置が設置されている旨が表示されたエレベーター(右)。
Photos: 国土交通省
図1:エレベーターに安全装置が設置されている旨を表すマーク

左が戸開走行保護装置、右が地震時管制運転装置。かご内の操作盤の押しボタン周辺や定期検査報告済証の周辺、乗り場の扉周辺などに掲示されていることが多い。
Photos: 一般社団法人建築性能基準推進協会
エスカレーターの事故を防ぐために知っておきたいこと
国土交通省では、エスカレーターでは歩かずに「二列で立ち止まる」利用方法を推奨している。しかしながら、急ぐ利用者に配慮する形で片側を空ける使い方が広く見られるのが現状である。利用者の中には身体的事情により左右どちらかにしか乗ることが出来ない人や安全のため横に並んで乗りたい小さな子供連れの人などもいる。多様な事情を持つ人が安心してエスカレーターを利用することができる環境整備は現代日本社会の重要な課題だ。一般社団法人日本エレベーター協会が2024年度に実施したアンケートによると「エスカレーターの歩行は、やめた方がいいと思う」と回答した人は90.2%、「人やかばんなどがぶつかり、危険と感じたことがある」と回答した人は55.9%であった。エスカレーターでの歩行は転倒時に衣服や手足の巻き込み事故や、他の利用者を巻き添えにしてしまう二次災害の発生など思わぬ大事故につながる可能性があり、大変危険である。また、2015年にイギリスのロンドンで行われた実験では、片側を空けるより2列で立って乗る方が輸送効率がおよそ30%高いことが確認されたという。エスカレーターの設置者は適切な利用法をサイン表示したり、音声で案内したり、警備員や誘導員を配置するなどして利用者に注意を促しているので、利用の際にはぜひ守ってほしい。
■エスカレーターの利用に関するアンケート結果


Photo: 一般社団法人エレベーター協会

写真提供: JR東日本

- 1. 扉が開いたままかごが動いた場合にかごを自動的に制止させる装置
Photo: JR EAST; The Japan Elevator Association; Building Performance Standardization Association; PIXTA

