VOL.215 MAY 2026
[SPRING SPECIAL ISSUE] ENJOYING JAPAN’S SPRING BY LOCAL TRAINS
五能線で巡る日本海と世界遺産の絶景

五能線の絶景旅へ——観光列車「リゾートしらかみ」
Photo: 東日本旅客鉄道株式会社 秋田支社
秋田県の東能代駅から青森県の川部駅まで、全長147.2kmを結ぶ五能線は、日本屈指の絶景路線として知られる。車窓から臨むダイナミックな海岸線と、世界自然遺産「白神山地」の雄大な新緑。春の息吹を感じながら、北東北の自然を堪能する五能線の見どころを紹介する。
本州の北端、日本海に沿って走る五能線は、1936年の全線開通以来、地域の人々の足として親しまれてきた。1997年からは観光列車「リゾートしらかみ」が運行されており、圧倒的な景色と旅情あふれる旅を求めて国内外から多くの観光客が訪れている。

Photo: 東日本旅客鉄道株式会社 秋田支社
JR東日本秋田支社の畠山 純也さんは、「五能線は乗車している時間そのものが旅のハイライトになります。時間によって変化する日本海の景色や、白神山地など、北東北の魅力を凝縮したような路線です」と語る。
秋田県側の始発駅である東能代駅から列車に乗り込んで北へ40分ほど。列車があきた白神駅を過ぎてしばらくすると、左手に日本海が見えてくる。ここから約80kmにわたり、列車は海岸線に沿って走っていく。
五能線の中でもぜひ訪れたい場所が、1993年にユネスコ世界自然遺産に登録された白神山地(参照:日本初の世界自然遺産「白神山地」の森林 | MAY 2024 | HIGHLIGHTING Japan)のふもとに位置する十二湖だ。大小33の湖沼群が点在しており、なかでも「青池」は、まるで青いインクを流し込んだような神秘的なコバルトブルーの輝きを放つ。青池の水の色は年間を通して濁ることはないが、特に春は格別に美しい景色が広がるという。

「5月から6月にかけては、雪解け水によって青池の透明度がいっそう高まります。特に1日の中でも、太陽の光が真上から差し込む午前11時頃は水面が最も鮮やかに輝きます。芽吹いたばかりのブナの若葉が透き通った水面に映り込む様子は、春の生命力を象徴するような光景です」
十二湖駅から青池まではリゾートしらかみの到着に合わせて路線バスが運行されており、アクセスがスムーズなのも魅力だ。
更に列車が北上すると、深浦駅から広戸駅にかけて、五能線屈指の絶景区間が待ち受けている。荒々しい岩肌に日本海の波が打ち寄せるダイナミックな光景が車窓いっぱいに広がり、思わず息を呑む。リゾートしらかみ(1・3・5号)では、この区間で景色を堪能できるように徐行運転を行っている。
「深浦町は「夕日の町」とも呼ばれており、水平線に沈む夕日の美しさは必見です」

Photo: 東日本旅客鉄道株式会社 秋田支社
その先にある千畳敷駅で、リゾートしらかみ(2・3・4・5号)は15分間停車する。
駅の前には、1792年の地震によって地盤が隆起してできたとされる岩棚が広がっており、乗客は海岸を散策することができる。奇岩(きがん)の間を歩くと、その自然の造形美に圧倒されるはずだ。

鰺ケ沢駅を過ぎると、車窓の風景は一変する。海沿いから内陸へと入り、リンゴ畑が目に飛び込んでくる。5月上旬になるとリンゴの白い花が開花し、沿線一帯に春の景色が広がる。「リンゴの花は桜と並んでとても美しいです。リンゴ畑の間を列車が走っており、この時期にしか見られない景色です」と畠山さんは話す。

Photo: 東日本旅客鉄道株式会社 秋田支社
また、リゾートしらかみは川部駅から奥羽本線に乗り入れを行っており、青森県の中心部である弘前駅にもアクセスが可能だ。弘前駅からバスで15分ほどの弘前公園は約400年前に築城された弘前城を囲むように約2,600本の桜が咲き誇り、青森県でも屈指の桜の名所となっている。例年4月下旬に満開を迎えるが、満開時期が過ぎてからも、散った花びらが城の堀を埋め尽くす「花筏」と呼ばれる光景が見られ、国内外から多くの観光客が訪れる。

五能線の路線図。点線は奥羽本線の乗り入れ区間(リゾートしらかみの運行区間)。

こうした五能線の旅をより深く楽しむために、リゾートしらかみの車内では、地域の伝統文化に触れる車内イベントも開催されている。青森県の津軽地方に伝わる「津軽三味線」の生演奏や、津軽弁で地元に伝わる昔話を聞くことができる津軽弁「語りべ」実演のほか、青森県の無形民俗文化財である「金多豆蔵人形芝居」も上演される。

Photo: 東日本旅客鉄道株式会社 秋田支社
「津軽弁は日本語の中でも独特の響きがあるので、言葉が分からなくても、音や雰囲気を楽しんでいただけると思います」
日本屈指の絶景列車である五能線で、北東北の春の訪れを感じる旅に出てみてはどうだろうか。
By: MURAKAMI Kayo
Photo: Akita Branch Office, East Japan Railway Company; PIXTA

