VOL.215 MAY 2026
[SPRING SPECIAL ISSUE] ENJOYING JAPAN’S SPRING BY LOCAL TRAINS
[私が伝えたい日本(日本人インフルエンサー)]これからの華道といけばな

Photo: 大薗 彩芳
現代華道家である大薗 彩芳さん。今月号では、大薗さんに華道やいけばなと「アート」との関わりや、海外での活動について語ってもらった。
2026年3月号(参照:進化した華道といけばな「現代華道」 | March 2026 | HIGHLIGHTING Japan)、4月号(参照:華道やいけばなに宿る日本の心 | April 2026 | HIGHLIGHTING Japan)では、日本文化としての華道やいけばなの基礎知識や、華道やいけばなに含まれる日本の精神性、そして進化した現代華道家としての思考についてご説明しました。今号は、これから華道やいけばなが向かうべき未来の可能性として、「アート」との関わりや、海外での活動について紹介します。
まず、華道やいけばなとアート、特にいけばなの三大流派1の一つである草月流のいけばなと現代アートは親和性が高いと考えています。
前号で、「華道やいけばなの作品は、込められたメッセージやテーマが美しさよりも優先される」と言及しました。現代アートも同様に、作品は美しさを必ずしも求めておらず作家の内から湧き出る強烈なメッセージが作品制作の原動力であり肝となります(もちろんそれ以外の要素も多数存在します)。
奇妙で難解なアート作品が、ギャラリーに飾ってあったとして、それを表面的に見た客は意味が理解できずに笑って通り過ぎるかもしれません。しかしそこには、キャプションを読み解き音声ガイダンスを聴いて初めて理解ができる、作家が込めたメッセージが存在するはずです。

Photo: 大薗 彩芳
華道やいけばなを学んでいくと、単にガラス瓶に花束をどさっと入れるだけではなく、季節感や個性を含めその時に表現したいメッセージを込めた花材の選択や生け方ができるようになっていきます。例えば、私は、花の茎部分と複数の接点が持てるような複雑さを持った構造体を指す「花留」といういけばなの技術を好んで使用します。割り箸でもフォークでも段ボールでも花留を作ることはできますが、花器と花材の間に花留を仕込むことで、花が留まり、立ち、空間が広がり、花留を含む作品全体でメッセージを表現できるようになるのです。

Photo: 山城 昌俊
また、そうしたアートとしての側面も持つ日本文化としての華道やいけばなは、日本以外の国からも注目を集めています。
私自身、毎年のように海外で作品を作ったり、講義をしたりする機会がありますが、海外の方の熱心に学ぶ姿や理解度に毎回驚かされます。いけばな作品は持ち運びができず、基本的には飾られる場所で、素材から組み制作を行います。海外での制作も例外ではなく、日本からは工具以外は持参せず、その土地の花材や資材で作品を作りますが、これがとても面白いのです。

Photo: 大薗 彩芳
私は、進化を続ける「華道」「いけばな」は、全世界で通用する日本文化の一つだと自負していますし、現代社会に大量に存在するどのエンターテインメントにも負けない日本文化だと信じています。日本中で、世界中で、数多くの作品を制作し、一人でも多くの方の心を揺さぶり、良い影響を与えることができて初めて、現代華道家としての活動に意味が出てきます。過度な消費が目立つ現代社会において、世の中に「何かを生み出す」ことは非常に大変な労力を使いますが、崇高なことだと信じています。
これからも世の中になるべく多くの貢献ができるよう、人生をかけて作品を作っていきます。

大薗 彩芳
いけばな三大流派の一つである草月流の一級師範、現代華道家。1987年東京都生まれ。「現代華道家」として独創性に溢れたモダンないけばな作品をデザイン、制作している。作品の特徴は、「現代的」であること。花以外の異素材も活用し、モダンでおしゃれな表現の中にメッセージ性を込めた作品作りを心がけている。
第103回「草月新人賞」(2022年)、第1回「草月優秀賞」(2024年)、いけばな大賞2019審査員特別賞受賞など、様々な賞を受賞。中国やイタリア等海外での実績も多く、メディアへの出演も多数。![]()
- 1. 「草月流」「池坊」「小原流」がいけばなの三大流派とされている。
By OZONO Saihou
Photo: OZONO Saihou; YAMASHIRO Masatoshi


