VOL.198 NOVEMBER 2024
JAPANESE RAMEN AND ITS GLOBAL EXPANSION
瀬戸内海の海の幸の風味を活かした「尾道ラーメン」

広島県尾道市。昨年(2023年)5月にG7首脳会議が開催された広島市から東へ約80キロメートル離れた気候が温暖な港町で、瀬戸内海に面している。その尾道を代表するグルメが「尾道ラーメン」だ。
はっさくや国産レモンなど、温暖な気候を活かした特産品が多い広島県尾道市。造船業が盛んだったこの港町で、ご当地ラーメンとして発展してきたのが「尾道ラーメン」だ。尾道観光協会の髙月 友莉子さんによれば、この地のラーメンには90年もの歴史があるという。
「日本全国でラーメンが普及し始めた1930年代の尾道ラーメンは、牛骨と豚骨でとった、白く濁ったスープでした。尾道は造船の街で、戦前戦中は当時の中国大陸から来た人々も造船業に従事していました。戦後、造船業が衰えた中で、中華そばの屋台を引く者が現れ始めました。1947年ごろ屋台で創業し、のちに現在の尾道ラーメンのさきがけとなった「朱華園」もそうです。当時の尾道は店主の朱 阿俊さんは、豚の背油炒めが入った醤油味のスープと自家製の平打ち麺を組み合わせた独特の中華そばを編み出し、大人気になりました。この味が尾道市内の他店にも広がって、尾道ラーメンになったと言われています」

Photo: 尾道観光協会
さらに1990年代に、とある珍味メーカーがお土産用の尾道ラーメンを発売したところ、1年で200万食売れるヒット商品となり、尾道ラーメンの名が全国に広がったという。
「現在の尾道ラーメンの特徴が、 魚介類でとったスープに豚の背脂をたっぷり浮かべるスープです。麺は中細で平打ちのものが多く使われています。具はネギ、チャーシュー*、メンマ**などの日本のラーメンでオーソドックスなものです」
近年は特に、だしとなる魚介類に工夫を凝らしている店舗が多いという。

Photo: 壱番館
「瀬戸内海は水深が浅いところが多く、太陽の光が海底まで届く範囲が広いことが特徴です。そのため、植物プランクトンが発生しやすく、それをエサにする動物プランクトンや小魚も豊富な環境となります。だしとして小鯛や小魚を採用し、隠し味として活用する店舗は多いと思います。
また、もともとは通販だけで尾道ラーメンの販売を行っていたところ、「おいしい」と評判になり、実際に専門店を開店させたユニークな店舗もあります。
そして、ローカルに愛されているお店が多いのも特徴だと思います。人気店ほど地元の方のリピーターが多いですね」

Photo: 尾道ラーメン丸ぼし
コクのある醤油味で、魚介類のまろやかな味わいを感じられる尾道ラーメン。どこか懐かしさを醸し出す味で、スープを啜るレンゲが進むそう。
「尾道ラーメンはお店の個性によって、スープも麺もさまざま。他のご当地ラーメンに比べ量が少なめなので、複数のお店で食べ比べを楽しんでみてはいかがでしょうか」
* 味付けした豚肉料理のことを指す。日本のラーメンにおいては、焼いてから煮込んだ物(煮豚)を指すのが一般的。
** タケノコ類を乳酸発酵させた加工食品のことで、シナチクの別名もある。
By MOROHASHI Kumiko
Photo: Onomichi Tourism Association; Onomichi Noodle Ichibankan; Onomichi Ramen Maruboshi; PIXTA


