VOL.209 NOVEMBER 2025
ENJOYING JAPAN’S MARKETS 高知の暮らしに根付き受け継がれてきた歴史ある「街路市」

「街路市」の中で最大規模の「日曜市」の様子。車道2車線分を使って開かれている。
Photo: ISHIZAWA Yoji

高知県高知市は「いちのまち」と呼ばれるほど、路上で開かれる市が市民の生活に深く根付いている。歴史ある市を維持し、さらに発展させるため市役所に設けられている専門部署の担当者に話を聴いた。


全長約1kmに350以上の出店でみせが並び、多くの人が訪れる「日曜市」の様子。出店者との会話を楽しみながら買い物ができるのも街路市の魅力。
Photo: ISHIZAWA Yoji

高知市は四国地方1の太平洋岸に位置する高知県の県庁所在地であり、かつては高知城を中心に発展してきた城下町で、古くから市民の生活を支える場として路上で「街路市」が開かれており、午前から午後にかけて路上で開かれる市としては日本一の規模を誇るとされる。その始まりは1690年に遡り、当時この地を治めていた土佐とさ藩(現在の高知県)第4代藩主 山内やまうち 豊昌とよまさ2が、藩の政策として場所と日を決めた定期市を開くことを認めたことに由来する。以来300年以上にわたり、活気ある市が受け継がれてきた。高知市役所商業振興課街路市担当の池上いけのうえ あずささんは市の歴史的な経緯をこう説明する。

「文献によると1690年の開始当初は、毎月の日取りを定めて開く「日切ひぎりいち」でした。その後、太陽暦の採用により官庁が日曜休日になったことに伴い、1876年以降は日曜日にまとめて市が行われるようになったことが「日曜市」の始まりです。その後、1926年には各曜市の形態が整い、現在は毎週日曜、火曜、木曜、金曜に開催されています。開催場所は、城下町の発展や戦後復興など、時代の移り変わりに応じて変遷していますが、現在高知市の「街路市」で最大規模の「日曜市」は、高知城下を東西に走る追手筋おうてすじで開かれています。全長約1kmにわたり350以上の出店でみせが並び、多い日で1日約2万人以上が訪れる日本でも有数の街路市です。昔も今も、農産物を中心に、加工品や木工品、陶磁器、刃物まで幅広い種類のお店が並びます。「青空市場のデパート」と評されるほど多彩な品揃えで、生活の必需品がここで一通り揃います」

「火曜市」の様子。幅2mほどの水路に板を渡してその上に店を開くのが特徴とされる。
Photo: 高知市

高知県庁前で開かれる「木曜市」の様子。「日曜市」に次ぐ規模で、官庁やオフィスビルが立ち並ぶ好立地であることから人気も高い。
Photo: 高知市

JRの高架下で開かれる「金曜市」。住宅地で開かれるため、買い物客は地元の人が中心だ。
Photo: 高知市

街路市は元々地域社会を支える生活基盤として始まったが、近年では観光資源としての役割も担っている。

「高知ならではの商品や、旬の野菜、果物、水産加工品などが並ぶ様子は見ているだけでも楽しめます。出店者と会話しながら、高知の食材やその調理法を知ることができるのは、観光で訪れた方にとって、大きな魅力だと考えています」と池上さんは語る。日本人観光客だけでなく、海外からの来訪者も年々増えている。

土佐打とさうち刃物3を扱う店や古物こぶつてん4を訪れる外国人観光客をよく見かけます。日本独自の文化を感じられる品に関心を寄せていますね。県内在住の外国人出店者との交流を楽しむ姿も見られます」

出店者には植物や手作り工芸品、古物などを販売する人もいる。
Photo: ISHIZAWA Yoji

300年以上の歴史をもつ街路市は、今も地元の人々の暮らしを支えると同時に、多くの旅行者が高知の文化と活気に直接触れ、地域の日常を体験できる貴重な機会となっている。

  • 1. 日本の西南部に位置する地方で、徳島とくしま県、香川かがわ県、愛媛えひめ県、高知県が含まれる。
  • 2. 1641年生まれ、1700年没。藩主として、安定した財政の実現を目指して、藩の改革を行った。
  • 3. 高知県の東部から中部にかけて作られる金工品。高温に熱した金属材料を叩き延ばして自由自在に形作る自由鍛造が特徴。主な製品には包丁、斧、鍬などがある。旧国名の「土佐」に由来して土佐とさうち刃物と呼ばれる。
  • 4. 中古品や骨董品、不要になった物品を買い取り、販売する店。古物商こぶつしょうともいう。

By TANAKA Nozomi
Photo: Kochi City; ISHIZAWA Yoji

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