VOL.209 NOVEMBER 2025
ENJOYING JAPAN’S MARKETS 暮らしを支え沖縄の食文化を今に伝える「那覇市第一牧志まきし公設市場いちば

2023年に建て替えられた那覇市第一牧志公設市場
Photo: 那覇市第一牧志公設市場

沖縄県随一の大市場である那覇市第一牧志まきし公設市場いちばには、新鮮な海産物や多彩な土産品が並び、訪れる人を楽しませている。購入した食材を市場内の飲食店で調理してもらえる「持ち上げ」と呼ばれる仕組みも特色の一つである。

沖縄県那覇市の中心部を貫くメインストリートである国際通りの中ほどを曲がると、賑やかな市場本通りがある。沿道には、日本の最南端に位置し、約160の小さな島々からなる沖縄ならではのカラフルなフルーツや島らっきょう1、海ぶどう2などの地元食材、さらに土産品を扱う店舗が並ぶ。その先にある大きな3階建ての建物が「那覇市第一牧志公設市場」だ。


沖縄特有の食材が並ぶ市場の店先
Photo: 那覇市第一牧志公設市場

那覇市役所なはまち振興課の與那城よなしろ 未希みきさんによれば、那覇市第一牧志公設市場は、戦後の混乱期に市民が食料や生活物資を売買する場として自然に広がった市場をもとに、1950年12月に市営市場として正式に開設された。その後、火災で焼失するも建て替えられ、市民と県民の暮らしを支える「台所」として親しまれてきた。老朽化に伴う仮設市場への移転を経て、2023年3月に元の場所で新市場として再開し、今でも沖縄の食文化や歴史を感じられる場となっている。

「開設以来、観光客も多く訪れる那覇市の観光拠点にもなっています」と與那城さんは話す。

現在、市場の1階には75店舗が入り、伊勢海老や生牡蠣などの鮮魚、牛肉や豚肉などの精肉、採れたての野菜などの生鮮食品のほか、乾物、酒類、土産品が販売されている。


市場内の精肉店の様子。
Photo: 那覇市第一牧志公設市場

鮮魚店には沖縄近海で採れる魚が並ぶ。
Photo: 那覇市第一牧志公設市場

2階には飲食店を中心とした12店舗があり、沖縄料理3やサーターアンダギー4、ジェラートなどを味わうことができる。また、3階には調理体験室や、イベントや会議などに利用できる多目的室が整備されている。

市場の魅力は店員と客との人情味あるやりとりにあると與那城さんは説明する。

「市場の店員との会話を通じて、沖縄料理の調理方法についてアドバイスを受けたり、沖縄とほかの地域の食文化を比較して語り合ったりすることができます。また、買い物の際に沖縄の方言で「しーぶん」5と呼ばれるおまけを添えてくれることもあります」

「しーぶん」は沖縄ならではの商習慣で、人情味あるやりとりをよく表している。

この市場ならではの特色として、特に人気を集めているのがシンガポールなどのアジアの食堂をモデルに導入された、「持ち上げ」と呼ばれる独自の仕組みである。

「1990年から、1階で購入した鮮魚や精肉などの食材を2階の飲食店に持ち込み、その場で調理して提供する「持ち上げ」サービスを始めました。食材の代金は購入した店舗で、調理代は飲食店で支払います」


「持ち上げ」の調理を担う市場2階の食堂の一例。
Photo: 那覇市第一牧志公設市場

1階で購入した食材は、刺身や焼肉など素材に応じて料理してもらうことができ、飲み物や麺類を2階で注文して組み合わせる人も多い。精肉を購入してステーキやしゃぶしゃぶに調理してもらうことも可能だ。

「食材を購入する際に店員に尋ねれば、食材に合った店を紹介してもらえます。沖縄の食堂の雰囲気を楽しみながら、自分で選んだ食材が料理になって出てくるのを待つのも楽しみの一つです。また、2階の飲食店は市場内の施設としては比較的夜遅くまで開いているため、食事やお酒をゆっくり楽しみたい方にも利用いただいています」

近年は海外からの観光客も増加しており、台湾や香港、中国からの来訪者が多いそうだ。

「最近では特に韓国からのお客様が増えています。欧米からの観光客は買い物や市場見学を目的にすることが多く、アジア圏の人々は食事を楽しみに来場されることが多い印象です」

市民・県民の台所として70年以上親しまれてきた那覇市第一牧志公設市場は、買い物だけでなく、人とのやり取りや食体験を楽しめる場である。沖縄の食文化を体感しながら、市場ならではの交流を楽しんでほしい。

  • 1. 沖縄県で栽培される在来種のらっきょう。本州のものに比べて小ぶりで香りが強い。生のほか、漬物や天ぷらとして食される。

    島らっきょう
  • 2. 沖縄の伝統食材である海藻の一種。小粒の房がぶどうのように見え、ぷちぷちとした食感が特徴で、醤油しょうゆや酢につけて食べる。

    海ぶどう
  • 3. 沖縄県の郷土料理。庶民的な食堂で提供される沖縄料理には、柔らかく煮た豚のあばら肉をのせた「ソーキそば」、豆腐と野菜、肉などを炒める「チャンプルー」、さらに豚の三枚肉を煮込んだ「ラフテー」、白身魚を丸ごと揚げた「グルクン(タカサゴ)の唐揚げ」、ご飯にタコスの具材をのせた「タコライス」なども定番で、旅行者にも広く楽しまれている。

    左からソーキそば、チャンプルー、ラフテー
  • 4. 沖縄県の郷土菓子。 小麦粉や砂糖、卵などを混ぜて油で揚げた、ドーナツのような菓子。

    サーターアンダギー
  • 5. 沖縄の方言で「おまけ」を意味する。買い物の際に少し多めにしたり別の品を添えたりする習慣で、店主の感謝や心遣いを表す沖縄ならではの文化。

By MOROHASHI Kumiko
Photo: Naha City First Makishi Public Market; PIXTA

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