VOL.207 SEPTEMBER 2025
THE MUSICAL INSTRUMENTS AND MUSIC CULTURE OF JAPAN
[私が伝えたい日本(日本人インフルエンサー)]五感で味わう、書の世界

日本の小学校における書写の授業の様子。
書道家でありアーティストでもある青柳 美扇さん。今月号では、青柳さんに日本における書道について語ってもらった。
書道は、日本が世界に誇る伝統芸術の一つです。書は元々は、中国から伝来した文字を伝達する手段でしたが、8世紀末頃から12世紀末頃に美しさや心を表す芸術として発展し、今なお多くの人々に親しまれています。日本では、小学3年生(8歳から9歳)から「書写1」の授業で筆と墨を使い、義務教育の中で自然と書の文化に親しんでいきます。また、習い事としても人気があり、子どもから大人まで幅広く親しまれています。
「書写」が“文字を正しく整えて読みやすく書く”ことを目的とするのに対し、「書道」はそこに芸術性と精神性を加えたものです。筆の動き、墨の濃淡、紙の余白にまで思いが宿り、書き手の心を映し出します。

Photo: 高野山
私は書道家として、世界10か国以上で書道パフォーマンスを行ってきました。書道パフォーマンスとは、音楽に合わせて大きな紙に文字を書き上げる、ライブ感のある表現です。私は、書道と書道パフォーマンスの違いをよく音楽に例えて説明します。静かに集中して仕上げる書道作品は、スタジオで何度も録音を重ねて完成させる音楽作品のようなもの。一方、パフォーマンスは、その場の空気や観客との一体感の中で生まれる“ライブ演奏”です。時に荒削りでも、その瞬間にしか生まれない感動があります。こうした書道パフォーマンスは日本独自の書道文化の進化形であり、その象徴ともいえるのが「書道パフォーマンス甲子園」です。「書道パフォーマンス甲子園」とは、全国から毎年100校以上の高校が参加する日本最大の書道パフォーマンスの全国大会で、高校生たちがチームで力を合わせ、書の技術と演技力を競い合います。2025年で18回目を迎え、大阪・関西万博の公式ステージでも披露されるなど、大きな注目を集めています(参照:2025年大阪・関西万博 | July 2025 | HIGHLIGHTING Japan)。

Photo: Danny Danks (Arrow Photography)
また近年では、外国人向けの書道体験も盛んです。墨を摺る静寂の時間、墨の香り、筆や和紙の感触、筆が和紙を走る音、墨がにじむ美しさ──書道は、五感を通して日本文化を感じられる貴重な体験です。海外の参加者が自由な発想で描く線や構図は、私たちに新たな視点をもたらしてくれます。

Photo: 青柳 美扇
書道は、日本人なら誰もが一度は触れる文化であり、長く受け継がれてきた誇るべき伝統芸術です。世界の皆さんも、ぜひ筆を手にとって、「書の魅力」を体験してみてください。静かで深い感動がきっと待っています。

青柳 美扇
書道家・アーティスト。4歳より書を学び始める。世界10か国以上で書道パフォーマンスを披露。2020年国立競技場で行われた「天皇杯JFA第99回全日本サッカー選手権大会」決勝では約5.8万人の観客を前にオープニングアクトを務めた。世界遺産「高野山」での揮毫2をはじめ、CAPCOM「モンスターハンターライズ」、手塚治虫原作TVアニメ「どろろ」、「東京2025世界陸上」、「国立競技場」貴賓室作品など、数多くの作品、題字などを手がける。メディアでは、TBS「情熱大陸」、NHK Eテレ「にほんごであそぼ」などに出演。伝統と革新をモットーに「書の魅力」を世界中に発信し続けている。![]()
- 1. 日本の教育用語。日本の小中学校で教えられる「文字を書く技術」を学ぶ授業を指す。
- 2. 神社や寺に感謝や祈りを込めて文字を書くこと。
By AOYAGI Bisen
Photo: AOYAGI Bisen; Koyasan; Danny Danks (Arrow Photography); PIXTA

