パパ・ママを笑顔にする新しい育児休業制度
「育児休業制度」が新しくなりました。利用する私たちはもちろん、企業の方にも関わるその内容とは?今回は、「パパ・ママを笑顔にする新しい育児休業制度」というテーマで深掘りしました。

- ゲスト
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厚生労働省雇用環境・均等局
職業生活両立課長
古瀬 陽子
ストリーミング(音声で聴く)
- 放送日
- 令和4年(2022年)5月8日
- 時間
- 21分05秒
- 配信終了予定日
- 令和5年(2023年)5月7日
文字で読む
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青木 - 育児・介護休業法が施行されて30年。育児休業とは子どもが1歳になるまで、パパ・ママどちらも育児をするために休業できる制度です。一昔前は家事や育児は女性に偏りがちでしたが、近年は積極的に子育てをしたいという男性が増えて、それを後押しする制度や取組も徐々に充実してきました。では、足立さん、男性で育児休業を取得している人はどれくらいいると思いますか?ちなみに女性は2007年度から80パーセント台で推移しています。
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足立 - 最近、テレビなどで、男性でも育児休業を取っているというニュースを見たりするんですけど、やっぱりまだ少ないのかなと思いますね。
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青木 - 男性で育児休業を取得した割合は、2020年度は12.65パーセントです。かなり少ないですよね。これでも2019年度は7パーセント台だったので、初めて10パーセントを超えたんです。
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足立 - そうなんだ。それでも少ないなと思っているんですけど、徐々に増えてきてはいるってことなんですね。理由は何なんでしょうかね?ちなみに、青木さんもパパですよね。育児休業は取られましたか?
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青木 - 子どもが生まれたのは8年前だったんですけど、私も育児休業は取得していません。理由としては、周りで取得している方がいなかったのと、私の場合は、仕事の時間をある程度、自分でコントロールすることができたんです。
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足立 - そうすると、育児に参加できる環境ではあったんですね。
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青木 - 会社としては、取得しても問題なかったと思いますが、私の場合、結果として取得しませんでした。ちなみに男性の正社員に育児休業制度を利用しなかった理由を調査したところ、「収入を減らしたくなかったから」 「職場が育児休業制度を取得しづらい雰囲気だから」または、「会社や上司、職場の育児休業取得への理解がなかったから」「自分にしかできない仕事や担当している仕事があったから」が多くなっています。
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足立 - 「自分にしかできない仕事や担当している仕事があったから」と言っても、意外と自分がいなくても仕事が回ったりすることもあるんですけどね。
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青木 - それが会社ですからね。集団で仕事をするということは、誰かに何かがあっても、ほかの人がカバーするという仕組みを作っているということですから。
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足立 - ただ、ちょっと思ったのが、確かに男性もこういう理由で育児休業取りづらいっていうのは分かるんですけど、これは女性も同じだと思うんですよ。
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青木 - そうですよね。ただですね、、、「男は仕事、女は家庭」という意識が、大分昔とは変わってはきましたが、まだなくなってはいないので、男性はより取得しづらい傾向もあるようです。そこで、新しい育児休業制度です。ここからはスペシャリストと一緒に深掘りしていきます。厚生労働省 雇用環境・均等局 職業生活両立課長 古瀬 陽子さんです。古瀬さん、育児・介護休業法が改正され、段階的に新しい制度が施行されていますね。
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古瀬 - はい。既に4月1日から事業主に対して義務化が始まっているものがあります。その一つは【育児休業を取得しやすい雇用環境の整備】です。
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足立 - 雇用環境の整備というのは、具体的にどんなことが求められているんですか?
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古瀬 - 先ほど、男性が育児休業を取得しなかった理由に「取得しづらい雰囲気だった」「職場の理解が得られなかった」などがありましたよね。こうした状況からも、育児休業を申出しやすい職場環境づくりが必要だということがわかります。今回義務化されたのは、四つの措置の中から一つ以上を行うことです。四つの措置とは・育児休業に関する研修の実施・育児休業の相談窓口の設置・育児休業の取得事例の収集・提供・育児休業制度と育児休業取得促進に関する方針の周知です。
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青木 - あらゆる世代の社員に周知することで、職場全体の理解が深まりそうですね。義務化されたのは、四つの中から一つ以上ということで、どれを行うかは会社によって異なるということですね。
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足立 - より多く取り組んだ方が効果ありそうですよね。
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青木 - 育児休業に関する研修を実施したって、相談窓口がないとなかなか簡単に確認に行けない部分がありますからね。
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足立 - できるだけたくさん取り組みたいですよね。
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古瀬 - はい。どの措置を行うかは会社が選択しますが、可能な限り複数の措置を行うことが望ましいです。
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足立 - ほかにも義務付けられたことはありますか?
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古瀬 - はい。妊娠・出産の申出をした労働者に対して、事業主は育児休業制度などの内容を伝えて、休業する意向があるかないかの確認を個別に行うことを義務付けました。
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足立 - これは、女性が妊娠・出産を申し出た場合ですか?
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古瀬 - 女性だけではなく、男性が配偶者の妊娠・出産を申し出た場合も対象になります。
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青木 - そもそも育児休業制度があることや、どのような制度なのか知らない人もいますよね。そして、先ほど、男性の正社員が育児休業制度を利用しなかった理由の一つに「収入を減らしたくなかったから」というのがありました。育児休業期間中に賃金が支払われなくても、一定の要件を満たせば“育児休業給付金”が支給され、逆に社会保険料は免除されるので、手取りで比べると、休業前の8割程度は受け取ることができます。こうした制度を知らずに育休を断念する男性も少なくないと思いますので、事業主には、育児休業制度に関する制度を適切に労働者に伝えることを義務付けたんです。
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足立 - きちんとした制度があっても、労働者が内容を理解していなければ利用が進まないですよね。
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青木 - また、会社側から「育児休業を利用するか、しないか」個別に意向を確認してもらえるというのもいいですよね。これまでよりも格段に意向を伝えやすくなりますし、育休を意識していなかった人に考えるきっかけを与えることにもなります。
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足立 - 確かに、会社側から聞かれたら、そういう制度があることを知れますし、考えられますよね。でも、会社から育児休業を取るか聞かれた時に「取らない」と言ったら、その後育児休業を取りたくなっても取れないのですか?
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古瀬 - 意向確認の時は「取らない」と言ったとしても、育児休業を取得することができます。育児休業の取得を希望する場合は、早めに申し出ると会社も本人も休業に向けてしっかり準備ができるので、スムーズに育児休業が始められます。
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青木 - 会社側が雇用環境整備を行って、早めに申出しやすい職場にすること、労働者も早めに申し出て引継ぎ等の準備をすることが、円滑な育児休業のコツですね。ここからは、今年の10月から施行される制度を深掘りします。一つは、これまでの育児休業が見直されて分割取得できるようになるというものですが、今回注目したいのは、新たに創設される【産後パパ育休制度】です。正式には【出生時育児休業】と言います。男性の育児休業取得を促進するために設けられました。
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足立 - これまでの育児休業制度とは何が違うんですか?
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古瀬 - 産後パパ育休は原則、休業の2週間前までに申し出れば、出生後8週間以内の期間に4週間まで休業できるというものです。出産直後はママの体が回復していません。身体的にも精神的にも不安定になる時期です。その上、ミルクを短時間おきに与えるなど赤ちゃんの世話も大変で、まとまった睡眠を取ることも難しいです。この時期にパパが休業を取って、赤ちゃんの世話をするだけでなく、家事やほかの子どもの世話をすれば、ママの体の回復を助けることができます。
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足立 - 確かに、一番人の手助けが欲しいと思う時期かもしれませんね、この時期ってね。
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青木 - 育休と聞くと、赤ちゃんや子どもの世話をするイメージがありますが、同じくらい大切なのが、ママの身体の回復ですよね。産後パパ育休は、始めにまとめて申し出れば、2回に分割して取得することもできます。もちろん、【産後パパ育休】と【育児休業】は別のものですから両方利用できます。パパとママが話し合って休業するタイミングを上手に組み合わせれば、育児の負担がママに偏るのを、より軽減することができます。
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古瀬 - 産後パパ育休は、労使協定を締結している場合に限り、産後パパ育休を取得している間に、働くことも可能です。
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足立 - 育休中に働くって、どういうことですか?
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青木 - 例えば、育休を利用したいけれど、休業中にどうしてもはずせない仕事がある場合、これまでは「育休をとらないで働く」、若しくは「育休をとって働かない」の二択でした。つまり、僅か数日のために、育休を断念する場合もあったんです。でも、産後パパ育休ならば、働ける日数などに上限はありますが、休業中も働くことができ、その分の賃金もきちんと支払われます。
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足立 - 産後パパ育休は、元からある育休より柔軟で、取得しやすい制度なんですね。
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古瀬 - はい。そのため「自分が休むと業務に支障が出るのではないか」など長期の育児休業取得に不安がある方は、産後パパ育休で短期間の休業を試してみてから、長めの育児休業の取得を考えてみるという活用もできます。
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足立 - 仕事の代わりはいても、パパの代わりはいないですからね。
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古瀬 - 特に初めての育児の場合は、パパもママもわからないことだらけで、スタートは二人一緒です。ミルクの飲ませ方、ゲップのさせ方、お風呂の入れ方、そうした育児の初めてをパパとママが一緒に経験して一緒に上手になって、育児の喜びなどを共有すると、その後の育児への関わり方が向上したり、夫婦の関係が良くなることも期待できます。
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青木 - そのほかにも、男性が育児休業を取得するメリットはたくさんあります。子どもの成長を直に見られるのはもちろんのこと、仕事と育児の両立ができるように、これまでの業務の進め方を見直すきっかけにもなりますし、時間管理能力や効率的な働き方が身に付きます。
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足立 - 家でやっていることが、仕事にもいい影響を期待できるんですね。もちろん子育てそのものにも、ママにもメリットはありますよね。
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古瀬 - はい。育児をママが一人で背負い込むことがなくなりますから、不安やストレスなく子育てができます。 ママにとっても育児と仕事との両立がしやすくなり、仕事をしているママもしていないママも、社会復帰の意欲に良い影響が期待できます。更に、企業にとっても仕事の進め方、働き方を見直すきっかけにもなります。
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足立 - パパにも、ママにも、会社にもメリットが多いのに、男性の取得率がなかなか上がらないのは、もったいないですね。
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青木 - やはり職場の環境づくりが一番大切ですよね。上司・同僚が快く育児休業を取る人を送り出せるようにするためにも、周囲に負担が偏らないよう、業務の見直し等会社がしっかり取り組まないといけません。育児と違い、病気による入院や介護休業などは、いつ誰が休むかわかりません。お互い様でサポートし合う関係や体制を 日頃から築いておくことが重要です。
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古瀬 - 育児・介護休業法が改正され、特に男性が育児休業を取得しやすくなります。一人でも多くの男性が育児休業を積極的に取得できるように、周りの方もご協力をお願いします。今回の改正は、男性の育児休業取得促進が一つの大きな柱です。今は共働きの家庭が3分の2を占めています。「男は仕事、女は家庭」という昭和の時代からの夫婦の役割分担に関する意識もかなり変化してきており、子育てを夫婦二人でやりたいという若い世代の方も多くなっています。ここで更に一歩、男性の育休取得を進めて、男性の育休が当たり前の社会、男性も女性も希望する方が安心して育児休業を取得できるような社会にしていきたいと考えています。これから育児の機会がある男性は、是非、積極的に新しい育児休業制度を活用して育児をする幸せを味わってください。そして、育児休業を取って終わりではなく、育児休業はこれから続く育児の入口であることを意識していただければと思います。
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足立 - 今日の話を聞いて、多くのパパに育休を取得してほしいと思ったんですが、【産後パパ育休】と【育児休業】は別もので両方利用できることを知ってもらい、もっと多くの方が活用できればと思いました。
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青木 - 知らないことがいっぱいありましたよね。会社側、労働者側、双方が知っておきたい制度ですよね。私が印象に残ったのは、【産後パパ育休】は労使協定を締結している場合に限り【産後パパ育休】を取得している間に働くことも可能ということです。たった一本だけの仕事だけど、ここだけはやりたいんだ!ということ、ありますもんね。その分の賃金ももらいながら、休業中も働くことができるんですね。
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