魅力再発見! 暮らしを支えるダムの世界
“ダム”の役割は一つと思っていませんか?水をためるだけでなく、多くの機能を持ちながら、私たちの暮らしに深く関わっています。大人の社会科見学企画、第5弾。今回は、「魅力再発見! 暮らしを支えるダムの世界」というテーマで深掘りしました。

- ゲスト
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国土交通省水管理・国土保全局
河川環境課長
内藤正彦
ストリーミング(音声で聴く)
- 放送日
- 令和4年(2022年)5月22日
- 時間
- 18分9秒
- 配信終了予定日
- 令和5年(2023年)5月21日
文字で読む
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青木 - カレーは今や日本人の国民食とも言えますが、足立さんは、どんなカレーが好きですか?
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足立 - 私はやっぱり家で作るカレーが大好きです。
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青木 - 「カレー」と言ってもいろいろありますが足立さん、「ダムカレー」はご存知ですか?
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足立 - これは私も知っています!
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青木 - ダムカレーとは、カレーをダムの貯水池に見立てて盛りつけたカレーのことです。近年、巨大なダムを見に行くダムツーリズムが盛り上がっていて、多くのダムで様々なイベントが開催されています。その観光客向けに、ダム内のレストランや近くの飲食店で提供されているのが、ダムカレーなんです。一説によると、国内のダムカレーの数は200近くあるそうです。
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足立 - そんなにあるんですか!? ちなみに日本にはダムがどのくらいあるんですか?
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青木 - いい質問ですね。さっそく、ダムの魅力をスペシャリストとともに深掘りしていきましょう! 国土交通省水管理・国土保全局 河川環境課長の内藤正彦さんです。ダムとは、川の流れをせき止めて水をためるための構造物のことですが、実はきちんとした定義があるんですよね。
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内藤 - はい。水をせき止める本体の高さが15メートル以上あるものを「ダム」と呼んでいます。それよりも低いものは「堰(せき)」や「ため池」などと呼んで区別しております。日本のダムの数は現在、全国で1,500ほどあります。
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青木 - では、足立さんに問題です! 日本で最も総貯水容量が大きいダムは2008年に岐阜県を流れる揖斐川(いびがわ)の上流に完成した徳山ダムです。さて、この徳山ダム、東京ドーム何個分の水をためられるでしょうか?
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足立 - 東京ドーム100個分ですか?
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青木 - 内藤さん、答えは?
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内藤 - はい。答えは532個分です!
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足立 - 532個分!?
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青木 - あまりに数が大きすぎてイメージできませんけど、総貯水容量は6億6,000万立方メートル。これは、静岡県にある浜名湖の2倍の水の量に匹敵します。
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足立 - 浜名湖の2倍がピンときませんが、大きいということは想像できました。
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青木 - では、再び問題です。徳山ダムは多目的ダムと言われています。さて、どんな役割を担っているでしょうか?
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足立 - ダムの役割は、水をためて調整することで、川が氾濫しないようにすることですよね。
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青木 - 多目的ダムと言われていますから、いろんな目的があるんです。ダムには大きく分けると四つの役割があります。その役割のうち、一つだけを担うダムもあれば、複数の役割を担うダムもあります。徳山ダムはその四つの役割全てを担う、非常に頼れるダムなんです。まず、一つ目の役割は…、内藤さんからご説明をお願いします!
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内藤 - はい。<防災>です。大雨の時に上流の水をダムにためて、下流に流す水の量を減らすことで川が増水してあふれることを防いだり、あふれる洪水を出来るだけ少なくして、その被害を減らしています。また、水位を下げることが出来るので堤防が決壊するリスクも下がります。
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青木 - 徳山ダムの下流は、過去に伊勢湾台風により大きな被害があった地域なので防災の役割は大きいんですよね。大雨の時に「今、ダムの容量がどのくらいか」とかよく聞きますよね。また、「緊急放水」などといったニュースもありますよね。では、続いて、二つ目の役割<流水の正常な機能の維持>です。
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内藤 - 川の水は、日によって、増えたり減ったりしています。川の水が極端に減って流れが悪くなると、そこで暮らす生き物に影響が出たり水質が悪くなるんです。それらを防ぐために、ダムにためておいた水を川の水が少ないときにダムから補給して川の水を増やしています。
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青木 - 水量というのは、よく河川に置いてあるカメラとかで見ているんですか?
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内藤 - カメラでも監視していますし、水位計を持っていますので、それによって流量を測っています。最低限の流量を割り込みそうなときにダムから補給をするということになります。
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青木 - 私たちが普段、何気なく橋を渡って見ている川の水量も大きな河川であればちゃんと管理しているということなんですね。このように、防災や川の環境を守るための役割を担ったダムは主に国が管理しているそうです。一方、三つ目の役割である、<農業、上水道、工業用水>としての利用や、四つ目の役割である<発電>についての役割を担うダムは主に民間で管理しているそうです。
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足立 - いわゆる、水力発電ですね。
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内藤 - はい。水力発電は、高い所にためた水を低い所に落とす力を利用して 水車を廻します。そして、その水車につながっている発電機を回転させて電気を生み出しています。
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青木 - では、問題です。発電目的で建設され、50階建ての高層ビルよりも高いと言われる 日本一の高さを誇るダムは、なんというダムでしょうか? 足立さん! 日本一の高さを誇るダム、答えは?
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足立 - これは有名なので知ってます! 黒部ダム!
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青木 - 正解です! 富山県立山町に位置する高さ186メートルのダムです。黒部ダムが完成したのは工事が始まってから7年後の1963年。今から59年前のことです。完成までに513億円ものお金と、延べ1,000万人が動員され、日本の歴史に残るダムとして知られています。また、多くの観光客が訪れ、観光地としても有名ですよね。
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内藤 - はい。黒部ダムは中部山岳国立公園内にあり、大自然に囲まれた絶景スポットなので、ダムの中でも特に人気があるんです。
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青木 - 足立さんは行ったことありますか?
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足立 - 私はロケで行ったことがあります! 大きくて、迫力ありますよ。内藤さんは行かれたことはありますか?
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内藤 - はい。2年前は黒部川を管理する国土交通省北陸地方整備局で働いていましたので 何度か訪れています。絶景に感動する一方で、とても厳しい地形の中にどうやってダムを建設したのだろうと思うような景観です。また、黒部ダムは観光放流と言って、黒部峡谷の景観維持を目的に毎年決まった時期に放流を行います。毎秒10トン以上の水が霧状となってダムから放流される様子は迫力があり、運がよければ放流に架かる虹も見られます。
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青木 - 1日に何回とか決まっているんですか?
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内藤 - 6月から10月までの間、決まった時間帯に放流しますのでそれを狙って訪れる方もいらっしゃいます。ただし、大雨が降っていたら見ることはできません。
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足立 - 子供と一緒に見に行くのも楽しそうですよね。ダムカレーも食べつつ。
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青木 - 人気のダムはほかにもたくさんあります。ちょっと変わったところでは高知県の横瀬川ダム。こちらでは、なんとダムの壁を使ったクライミングが楽しめるそうです。ほかにもライトアップしているダムや、ダムの湖畔でキャンプができるところもあるそうですよ。
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内藤 - また、近年は国や自治体、企業が協力して、工事中のダムを見学するツアーを提供し、これが人気を得ているんです。群馬県の八ッ場ダムが人気となりましたが、今なら熊本県南阿蘇村に建設中の立野ダムを見学するツアーなどがあります。
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足立 - 建設中の工事現場で、どんな楽しみ方をされているんでしょうか?
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内藤 - その時にしか見られない景色を楽しまれています。作っている途中のダムは完成したら二度と見られません。タイミングが良ければ重機が並ぶ圧巻の光景を見ることもできます。また、完成後は入れない場所に入れる場合もあり、人気があるんです。
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青木 - やはり、その時にしか見られない、この後、風景が変わってしまうというところにノスタルジーも感じるのかもしれませんね。
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足立 - 写真を撮りたくなってしまいますよね。
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青木 - 近年は公共施設の建設現場に足を運ぶ人が増えていて、新たな観光資源としても注目を集めています。
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内藤 - そうですね。ダムは防災や水を利用するために建設されるものですが、観光資源として、地元の方々にも活用していただき、地域の魅力を更に高めるために役立てていただければと思っています。
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足立 - ダムは工夫すればいろいろな活用の仕方があるということですね。
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青木 - そうなんです。工夫という点では、近年は大雨の時に、発電や農業、上水道などを目的に作られたダムにも、防災に協力してもらうことがあるそうですね。
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内藤 - はい。大雨が予測される時に、電力会社や土地改良区の皆さんに協力してもらい、水力発電や農業、上水道に使うために、ダムにためている水を大雨の3日前から放流して、ダムの水位を下げておいて、大雨の時に通常より多くの水をためられるようにしてもらっています。こうすることで、防災用のダムがない地域でも、大雨による水害のリスクを減らすことができます。
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足立 - 最近は記録的な大雨が降ることが増えたので、臨機応変に対応していただけると、私たちも安心ですね。
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青木 - 近年は気候変動の影響で雨が増えています。放っておいては今の防災水準を維持することはできないそうですね。
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内藤 - はい。将来に備えてしっかりと点検・補修をして、長く使うことも大切です。 気候変動に対応していくためには、ダムを新しく作るだけでなく、古いダムを改造して機能を上げることも求められています。
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足立 - ダムを改造するってどういうことですか?
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内藤 - 例えば、鹿児島県のさつま町にある鶴田ダムは1966年に完成したダムですが、2006年の豪雨災害をきっかけにして、ダムの改造工事をしました。ダムの水位を下げて大雨を迎えられるように、ダムに穴をあけて新しく放流管をつけ、ダムにためられる量を1.3倍に増やしました。昨年の7月の豪雨では、川底を掘り下げる工事が進んだこととダムの改造が間に合って、川内川(せんだいがわ)本川(ほんせん)の氾濫を防ぐことができました。
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足立 - やっぱりアップグレードしていくということは大事なんですね。スマホやパソコンをアップグレードするのと同じで、機能を有効活用するという意味でも、ダムもパワーアップさせることが大事なんですね。
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内藤 - ダムは、洪水から命を守り、電力を生み出し、水道や農業のための水をためるなど、多くの機能を持つ、皆さんの暮らしを支える施設です。ダムごとに、その役割や大きさ、形状が一つ一つ異なりますので、皆様の地域を支えているダムに興味を持っていただき、見に来てもらえればと思います。さらに、ダムにはダムカレーと同じくらい人気の「ダムカード」というものがあります。「ダムカード」には、ダムの写真や基本的な情報から、ちょっとマニアックな情報まで、各ダムの情報が凝縮されています。是非、「ダムカード」で検索してみてください。ダム訪問の記念にお勧めです。
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足立 - 今回も楽しい「大人の社会科見学企画」でしたね。ダムの本来の役割もですが、私はやはり「ダムカレー」と「ダムカード」が気になりました。「ダムカレー」に関しては200近くあるんですよね。全部食べたいですね。それに、日本にはダムが1,500ほどあるということは、今後、もっと「ダムカレー」が増えていくんでしょうね。観光の目的としても、ダムが有効活用されることは大事なことなんだなと改めて学びました。
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青木 - 私が今日の話を聞いて印象に残ったのは、将来に備えてしっかりと点検・補修をして長く使うことも大切ということです。新しいダムを造るだけでなく、古いダムを改造して機能を上げることが求められていることも、今日の話を聞いて知ることができましたので、大切な視点だなと思いました。
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