世界にコミット! 魅力あふれる日本の農林水産物と食品
世界に向け、輸出しませんか? 市場拡大だけでなく、私たち日本にとってもプラスの効果があります。今回は、「世界にコミット! 魅力あふれる日本の農林水産物と食品」というテーマで深掘りしました。

- ゲスト
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農林水産省 輸出 国際局
輸出企画課長
伊藤優志
ストリーミング(音声で聴く)
- 放送日
- 令和4年(2022年)5月29日
- 時間
- 18分7秒
- 配信終了予定日
- 令和5年(2023年)5月28日
文字で読む
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青木 - 日本の果物は芸術品と言われるぐらい、海外の物と比べると、味も見栄えも良いと言われていますよね。足立さんが好きな日本の果物はありますか?
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足立 - 迷いますね。梨・柿・ザクロも好きですね。
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青木 - 日本の果物はどれも美味しいですよね。では、近年、日本の干し柿がドバイで注目されているのをご存知ですか?
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足立 - 結び付かないですね。日本の干し柿がドバイで注目されているって、本当ですか?
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青木 - 本当なんです! 足立さんは〝あんぽ柿″という干し柿をご存知ですか? 一般的な干し柿とは製法が違い、水分が多い半生タイプの干し柿です。この“あんぽ柿”の輸出が近年積極的に行われていて、特にドバイで高評価を得ているんです。
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足立 - 干し柿とドバイがなかなか結び付かないですね。
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青木 - そもそも、中東ではドライフルーツが好んで食べられているそうなんです。賞味期限を延長できる冷凍保存方法を開発し、積極的にドバイへ輸出したところ、あんぽ柿は特に甘味が強く、乳製品やナッツとの相性もいいのでニーズが高まったそうなんです。現地のレストランなどでは、クリームチーズを添えたり、刻んでジェラートに混ぜたり、ナッツと和えてサラダに混ぜるなど、様々な食べ方で提供されているそうです。この、あんぽ柿の輸出は福島県の皆さんが一生懸命に取り組まれているそうで、これからは台湾にも輸出していきたいそうです。このように近年、日本の農林水産物と食品は市場を世界に拡大していて、輸出額は10年でおよそ3倍に増え、2021年は、1兆円を突破しました!
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足立 - 1兆円、すごいですね。でも、なぜ輸出が盛んになっているんですか?
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青木 - ここからはスペシャリストと一緒に深掘りしていきましょう! 農林水産省 輸出・国際局 輸出企画課長の伊藤優志さんです。
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足立 - 伊藤さん、日本の農林水産物と食品の輸出が増えているのはどうしてですか?
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伊藤 - 私が以前海外に赴任していた時に、海外の方は口々に、日本食は健康、安心・安全、味が良い、おしゃれ、といったことを言っていました。このような特徴が認められ、使われる食材にも注目が集まり、世界に受け入れられてきているのだと思います。また、2013年に『和食』がユネスコ無形文化遺産に登録されたことも、日本食の普及、定着に大きな役割を果たしたと思います。
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青木 - 世界中に日本食レストランも増えましたよね。
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伊藤 - はい。海外における日本食レストランの数は、2021年に約15万9,000店舗となり、2013年からの8年間で、およそ3倍増えました。
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青木 - コロナ禍以前は日本に来る外国人観光客が増えていたので、日本の魅力を知った方々が自国で日本食を食べる機会が増えたことも輸出が増えた理由の一つかもしれないですね。
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足立 - 他には、どんな理由が挙げられますか?
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伊藤 - 2021年の農林水産物と食品の輸出額は過去最高となりましたが、これは輸出に関係する事業者の皆様の努力のたまものです。コロナの影響により海外の消費者ニーズの変化が激しいですが、それに対応して小売店向けやEC(Eコマース)などの新たな販路への販売が進められている、あるいは、アメリカなどの経済活動が元に戻り、外食の需要の回復にも対応してきたことなどが挙げられます。
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足立 - 確かに、国によっては、コロナ禍前までは外食中心の食生活だったのが、コロナの影響でデリバリーや、食材を調達して自宅で料理したりとおうち時間を楽しむ人が増え、この変化に対応してきたということですね。
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伊藤 - はい。また、日本政府の取組も輸出を後押しできたと思います。例えば、2011年の原発事故に伴い55の国と地域が日本の農林水産物や食品の輸入規制を導入しましたが、交渉を進め、現在までに41の国・地域が規制の撤廃をしました。今年2月には台湾が規制の緩和を行っています。依然として規制を維持する国・地域がありますので、撤廃に向けてより一層働き掛けていきます。
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足立 - 政府の地道な交渉の成果が出てきているんですね。輸出が伸びている農林水産物や食品というと、どんなものがあるんですか?
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伊藤 - 2021年は、ほとんどの品目で前年よりも輸出が伸びています。例えば、加工食品なら日本酒、ウイスキー、調味料、畜産品なら牛肉、果物ならりんご、いちご、かんきつ類、水産物ならホタテ貝、ぶり、真珠などが挙げられます。
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青木 - 日本のウイスキーは今、海外でもすごく人気なので、日本にいてもなかなか手に入らないということもありますよね。あと、日本のホタテ貝は、大きくて肉厚なので海外で人気があるそうです。さらに、牛肉は、アメリカではステーキだけでなく、しゃぶしゃぶで食べたり、台湾では焼き肉や鍋などいろいろな食べ方が人気になっているそうです。日本の食べ方も輸出されているようなものですよね。
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足立 - しゃぶしゃぶは、ヘルシーで健康的だ! みたいな感じなんですかね。
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青木 - ところで足立さん、海外で焼き芋が人気だってご存知ですか?
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足立 - 先日、友達とこの話をしていたんです。すごいんですね。焼き芋人気!
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青木 - 日本の小売店がシンガポールやタイ、香港などの海外店舗で焼き芋を販売したところ、ヘルシーなスイーツとして人気になり、サツマイモの輸出も伸びているんです。モバイルフードコーナーを設けて、温かい焼き芋をその場で食べられるようにするなどの販売戦略も人気を後押ししているそうです。
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足立 - 焼き芋の甘い香りを嗅ぐと、買いたくなっちゃいますよね。
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青木 - 外国の方にとっては、砂糖を使っていないのになんでこんなに甘いのかが驚きだったそうです。
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足立 - そこなんですね! どこの国の方も、日本人と同じように焼き芋の甘さが好きなんですね。それは、うれしいことですね。
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青木 - 実はこの焼き芋人気、政府が推進しているプロジェクト【GFP(ジーエフピー)】が関わっているそうです。
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足立 - 伊藤さん、【GFP】とは、どんなプロジェクトなんですか?
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伊藤 - 政府が推進する日本の農林水産物・食品の輸出プロジェクトの略称です。農業、漁業、更に林業、食品加工、それぞれに関わる輸出意欲のある生産者の方々と、商社や流通業者など売り手の方々、更に政府など、みんなが一丸となって輸出に取り組むために生まれました。
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青木 - GFPのコミュニティサイトにアクセスして会員登録をすると、「輸出をしたいけれど、どうしたらよいかわからない」「ビジネスパートナーを探したい」「輸出に関する情報を効率よく入手したい」などといった要望に対して、無料診断や情報提供、業者とのマッチングなどを、行政や日本貿易振興機構JETRO(ジェトロ)などが一体となって支援してくれるそうです。ちなみに会員登録は無料です。
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足立 - でもどうして、輸出を進める必要があるんですか?
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伊藤 - 日本は高齢化、人口減少に伴って、これから食市場の大きな拡大は見込めません。一方で世界の食市場は、今後大幅に拡大することが見込まれます。日本だけでなく世界にマーケットを広げて、日本の農林水産業と食品産業を活性化させていく狙いがあるんです。政府では2030年までに農林水産物・食品の輸出額を5兆円にすることを目標としています。
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足立 - 2021年に1兆円を突破と言っていましたが、その5倍! すごく気合が入ってますね!
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青木 - ところが、輸出は国内出荷とは異なり、国ごとに異なる様々な手続きや規制などが存在して、個々のプレイヤーでは継続的な成果を出すのが難しいそうです。そのため、GFPが積極的なサポートを行っているんです。
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足立 - 具体的にはどのようなサポートをされているんですか?
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青木 - 先ほどご紹介した、焼き芋の例をみていきましょう。海外で焼き芋をヒットさせた大手小売店は、海外の店舗で販売するために、輸出に関して「仕入れ先の業者を増やしたい」「品質の良いサツマイモを輸送ロスなく安定的に仕入れたい」などの課題を抱えていたそうです。そこで、GFPが開催した交流会やセミナーなど様々なイベントに参画して、日本各地の生産者やメーカーと出会い、取引先を増やしたり、生産者との連携を強化したそうです。その結果、その小売店では、GFPに参画する前は66億円だった輸出額が、わずか2年で2倍以上の150億円になったそうです。
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足立 - GFPの交流会をマッチングに活用したんですね。でも、大手の小売店だったから成功したんじゃないですか。
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青木 - いいえ。このGFPの成功事例には、輸出が初めてという生産者の成功事例が多数あるんですよね。伊藤さん!
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伊藤 - はい。GFPに会員登録した方には、農林水産省やジェトロの職員などが産地に直接出向いて、輸出の可能性を無料診断する「輸出診断」を行っています。この診断を受けた、あるキャベツの生産者さんは、輸出経験がないにもかかわらず、わずか1年で1,000万円の輸出に成功しています。
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青木 - こちらの生産者さんはシンガポール在住の知人から現地で販売されている日本産のキャベツの品質が良くないことを聞き、輸出への意欲が高まったそうです。ところが、輸出経験がないため、何から始めれば良いかわからない。そこでGFPの診断を受け、規制情報や海外ニーズの傾向、商談会を活用した販路開拓など、輸出のイロハから教えてもらったそうで、今ではシンガポールだけでなく、香港、タイ、台湾へも輸出しているそうです。
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伊藤 - GFPは、これから輸出を始めたいという輸出初心者の方々に役立つ取組だと思います。なお、現在、会員数は6,000以上です。
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青木 - GFPの会員になるとホームページ上で成功事例を知ることもできるんですよね。
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足立 - 今後、ますます注目の日本の農林水産物と食品の輸出ですが、その拡大に向けて、GFP以外でどのような取組を進めていますか?
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伊藤 - 日本のスーパーで、例えば、ノルウェー産サーモンなどのプロモーションをよく見かけると思います。輸出を先進的に進めている国では、業界一丸となってこのような取組を行っています。私たちもこのような取組を進めるために、5月19日に国会で成立した「改正輸出促進法」により、オールジャパンで輸出拡大に取り組む品目団体の認定制度を創りました。また、輸出に取り組む事業者をしっかりとサポートするため、金融や税制面の支援も措置しました。さらに、ジェトロ海外事務所と在外公館などとの連携による海外でのサポート体制の強化にも取り組んでいきます。
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足立 - いろいろな支援を用意しているんですね。輸出拡大の取組は、民間と行政が一体となって進めていくことが重要だと感じました。
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青木 - 日本では今、第一次産業に従事する人の数が減ってきていますが今後、農林水産物と食品の輸出が更に推進されて産業が活性化すれば、産業の担い手が増える可能性も十分にありますよね。そうすれば、私たちにとっても国産の新鮮で美味しい農林水産物と食品を食べ続けることができますし、食料自給率の向上にも寄与して食料安全保障の観点からもプラスになりますね。地域経済、日本経済全体の活性化につながることも期待できます。
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伊藤 - 輸出は、農林水産業及び食品産業にとって重要な取組であり、今後、その重要性はますます高まります。現在、取り組まれている方々は全国に点在していますが、まだ面的な広がりまでには至っていません。海外市場で求められる量・価格・品質の産品を生産・販売する「マーケットイン」の発想で、輸出に目を向け、取り組まれる方々の増加を目指して私たちは現場に寄り添い、現場と共に歩んでいきます。
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足立 - 今日の話を聞いて日本の魅力的な農林水産物と食品を多くの海外の方に知って欲しいですし、実際に味わってほしいと思ったので、是非、「GFP」を利用して海外にどんどん輸出していって欲しいと思いました。
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青木 - 私は、輸出拡大はもちろんのこと、結果的に日本の食料自給率の向上に寄与する部分が印象に残りました。長い目で見て、食料安全保障を考えたときに、国の食料自給率を少しでも上げるのは大事な視点だと思います。
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次回放送予定
- 放送日
- 令和5年(2023年)4月2日(日)
放送局によって日時が異なります。 - テーマ
- みんなですすめよう! 災害に強い国づくり
- 内容
- これまで日本は多くの大規模な自然災害を経験し、その度に大きな被害を受け、長期にわたり復旧や復興に向けた対策を余儀なくされてきました。その教訓から、事前に災害に強い国づくりを行い、被害を少なくし、暮らしも経済も速やかに回復させるための取組が進んでいます。番組では、行政や企業・地域が行った防災・減災対策の事例をご紹介するとともに、私たち一人一人が、事前に取り組めることについて深掘り!是非、お聴きください。
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