考えよう! 日本の食品価格事情
食品や日用品など様々な物が値上がりしていますが、なぜ、値上げをすることになったのか、その舞台裏や私たちの手元に届くまでのことを知ってみませんか。今回は、「考えよう! 日本の食品価格事情」というテーマで深掘りしました。

- ゲスト
-
農林水産省
大臣官房 新事業・食品産業部 企画グループ長
吉松 亨
ストリーミング(音声で聴く)
- 放送日
- 令和4年(2022年)7月31日
- 時間
- 16分42秒
- 配信終了予定日
- 令和5年(2023年)7月30日
文字で読む
-
青木 - 「2022年は値上げラッシュ!」ちまたではこんなことが言われていますけど、足立さん、実感はありますか?
-
足立 - そうですね。コンビニに行くと、「もっと安く買えたよな。」ということがあったり、「小麦粉など、この先、値上げする物を今のうちに買っておこう!」ということはありました。
-
青木 - ここ最近、値上がりのニュースをよく目にしますよね。
-
足立 - ガソリンもそうですが、日々、身の回りの物が値上がりしているんだなと感じます。
-
青木 - 後は、価格は同じでも、内容量が減っていると感じるときがありますよね。
-
足立 - ありますね! 駄菓子も、昔は4個入りだったのが、3個になっていました。
-
青木 - こういった様々な物の値上げの原因は、原材料価格の高騰、ロシアによるウクライナ侵攻の影響などによる原油高、急速な円安など様々な要因が絡み合っているといわれています。
-
足立 - 食品の値上げについても要因は同じなんですか?
-
青木 - ここからは、スペシャリストに伺っていきましょう。農林水産省 大臣官房 新事業・食品産業部 企画グループ長の 吉松亨さんです。
-
足立 - 今年の春から食品の値上がりが続いている印象があるんですけど、要因はどんなことなんでしょうか?
-
吉松 - 先ほど青木さんが様々な要因が絡み合っているとおっしゃっていましたが食品の値上がりについても正に同じで、原材料価格の高騰、原油高、円安などのほか、様々な要因が複雑に絡み合っています。例えば、「なたね」や「パーム油」の場合、需要が拡大しているのに供給量が増えない、こうしたことも値上がりの要因の一つです。
-
足立 - 「なたね」や「パーム油」と言われましても、どちらも、あんまり身近な食品というイメージがないですけど…。
-
青木 - はい。でも、「なたね」は、なたね油の原料で、なたね油は国内需要、生産量共にトップ。ほとんど無臭で、軽くあっさりとした味が特徴なので揚げ物や炒め物など幅広く使われています。「パーム油」は、アブラヤシを原料に、チョコレートやポテトチップスなどのお菓子やカップ麺など、様々な加工食品に使われています。
-
足立 - めちゃくちゃ身近な物なんですね。でも、なぜ、そうした「なたね」や「パーム油」の需要が拡大しているんですか?
-
吉松 - 世界の人口は年々増加しているので必然的に需要が増えます。また、所得の水準が上がった中国などの国では食用油の需要が拡大しています。さらに、エネルギー向けの需要も増加していて価格に影響を及ぼしているんです。
-
足立 - では、供給量が増えないのはどうしてですか?
-
青木 - 実は、供給量は増えないどころか、今年は減っているんです。昨年の夏は、なたねの主要産地であるカナダが記録的な猛暑と熱波に襲われました。多くの方が亡くなってしまったほどの異常気象だったんです。こうした異常気象により、なたねの生産量は減り、品質にも影響が出てしまっているんです。
-
吉松 - パーム油の場合は、新型コロナウイルスの影響により労働力が不足し、主要産地であるマレーシアでは収穫作業が進まず生産が減る傾向にあります。
-
足立 - 異常気象や新型コロナウイルスの影響も食品の価格に大きな影響を与えているんですね。
-
吉松 - 日本では大豆や小麦などの穀物を始め、多くの食品の原料を輸入に頼っています。新型コロナウイルス感染症の影響で、物流関係者の人手不足などにより、海上輸送の遅延や輸送費が高騰していることも価格に影響を与えているんです。
-
足立 - では、いずれ様々な状況が落ち着けば、また値下がりする可能性もあるんですか?
-
青木 - 足立さん、食品の値段は安い方がいいですか?
-
足立 - それはもちろん。多くの消費者は安いほうがいいと思っているんじゃないかと思うんですけど。
-
吉松 - 確かに消費者にとって食品の価格は安い方が好まれます。そのため生産者や食品メーカー、市場や流通業者、小売店、飲食店など食品流通に関わる方々はそれぞれ努力を積み重ねて価格を安く抑えます。この努力が適正なものであれば問題はありません。しかし、価格を抑えたいがあまり、原材料価格や燃料価格、人件費が値上がりしているのに、それを価格に転嫁しないと、どこかにしわ寄せが生じます。そして、最悪の場合、供給できなくなるおそれもあります。
-
青木 - 例えば、なたね農家が、なたねを生産するために必要なコストが増えているのに、価格を変えずに取引をしたとします。そうすると、なたね農家は収入が減ってしまい、なたねの生産を続けることが難しくなってしまう可能性があります。このような状況では、なたねを安定的に供給することができなくなり、結果的に、なたねの値段が上がってしまうということになる訳です。
-
足立 - 生産する農家の負担が増えますし、長い目で見ると、結局、私たちの家計に影響しちゃうということですね。
-
吉松 - はい。同じように食品を製造する企業が適切な価格転嫁をしなかった場合、やはり利益が下がります。当然、従業員の給料を十分支払えず、人手を確保できないことから商品の安定供給ができなくなります。そして、企業も利益が上がらず事業経営が困難になり、場合によっては倒産してしまう可能性もあります。
-
足立 - 私たちが値下げを望んでいたら、たくさんの従業員が働く場を失うこともあるわけですよね。それは本当に困りますね。
-
吉松 - そうなんです。つまり、食品の原材料や燃料、人件費などの値段が上がっているのに、それを適切に価格転嫁しないと、悪循環が生まれてしまうということです。
-
青木 - さぁ、ここからは、コーヒーの価格に注目していきたいんですが、日本人は一週間に平均何杯くらいコーヒーを飲んでいると思いますか?
-
足立 - 私は一日一杯は飲んでいるので、10杯でしょうか?
-
青木 - 全日本コーヒー協会が行った調査によると、2020年の一人一週間当たりの杯数はおよそ12杯です。一人一日に一杯から二杯は飲んでいる計算になりますから身近な飲み物ですよね。私、今も飲んでいます!
-
足立 - 街中にコーヒーショップがありますし、缶コーヒーやインスタントコーヒー、最近はコンビニのレジ横にもコーヒーマシンがあって淹れたてのコーヒーが飲めるので、確かに身近な飲み物だなと思います。
-
青木 - そのコーヒーの原材料であるコーヒー豆の価格も昨年から上がっています。
-
吉松 - はい。要因はコーヒー豆の世界最大の生産国であるブラジルの天候不順や世界的な物流の混乱などがあったこと。また、新型コロナウイルス感染症の影響で止まっていた経済活動が再開し、コーヒー消費量が増加したからです。
-
足立 - 日常的に飲むコーヒーの値段が上がるのは、消費者にとっては厳しいと思ってしまうのですが、 そもそもコーヒーの値段ってピンキリで、適正価格がよく分からないですよね。
-
青木 - そうですよね。限られた農園でしか栽培されていない希少性のある豆ならば高いのは当たり前ですが、例え同じ種の豆だったとしても値段が違う場合があります。価格が高い物の中には、コーヒー豆の段階から栽培管理、収穫、生産処理、選別、輸送時の品質管理などを徹底的に行うためコストが掛かり、価格に影響するものもあるんです。
-
足立 - なるほど。品質管理が行き届いていると、美味しさにつながるということなんですよね。
-
青木 - 美味しさを追求して選別の段階で悪い豆が混入しないように手作業で取り除いたり、雑味につながるコーヒー豆の薄皮を丁寧に取り除いたり、そういったことをしているコーヒー豆は、おのずと値段が高くなるんですよね。
-
吉松 - はい。また、近年はSDGsの取組みを積極的に行う企業も増え、人権、環境に配慮したコーヒー栽培がなされ、価格に反映している場合もあります。コーヒー豆の生産者の多くは熱帯地域の小規模農家です。コーヒーの生産コストの大きな割合が人件費ですが、二割から五割の農家が生産コストを賄うことができていないといわれています。つまり、人件費や所得が安く抑えられていることになります。
-
青木 - こうした状況を引き起こしてしまっている要因の一つとして、消費者がより安いコーヒー豆を求めたからともいえるんです。
-
吉松 - 食品の値段が安いと家計が助かります。企業努力により安くなっている場合もあります。しかし、生産、加工、流通、小売・外食という長いフードサプライチェーンの中で、どこかにしわ寄せがいって安い場合もあるということも知っていただきたいと思います。こうした状況があるので、政府は、適切な価格転嫁のための環境整備を進めているところです。
-
足立 - 安いからといって喜べない場合もあるということですよね。逆に、一般的なものより少々高いものの中には、人権や環境に配慮しているなど、高いなりの理由があるということですね。
-
吉松 - そうですね。ですから、消費者の皆さんには、食品などを買うときには価格だけではなく、 その物が手元に届くまでの過程も想像していただきたいと思います。
-
青木 - コーヒー豆などの場合、様々な認証マークがついているものがあります。有機栽培されたことを示すマークや、公平・公正な取引を示すマーク、生物多様性の保全に取り組んでいることを示すマークなど、そうした認証マークがついていたら、どういうマークなのかなど調べてみるのもいいのではないでしょうか。
-
足立 - 手元に届くまでの過程を知れば、初めは高いと思った価格も納得できるかもしれませんよね。 夏休みの子供の自由研究のテーマにもなりそうですね。一緒に調べて、大人も勉強になりますし。
-
吉松 - 今日のお話をきっかけに、これから食品を購入するときには、その価格の背景にも目を向けてみてください。そして、納得のいく食品を選び、豊かな食卓を楽しんでください。
-
足立 - 私たちは「安ければいい!」と思っているところも多少ありましたが、そうじゃないということが、今日、お話を聞いて分かりました。商品、食品、その物が手元に届くまでの過程を想像してこの値段になっているんだと考えるのも大事だと思いました。
-
青木 - 私が印象に残ったのは、やはりフードサプライチェーン、生産、加工、流通、小売・外食と非常に長いですが、「どこにもしわ寄せがいかない、適切な価格を」と思いました。
関連リンク
政府からのお知らせ
次回放送予定
- 放送日
- 令和5年(2023年)4月2日(日)
放送局によって日時が異なります。 - テーマ
- みんなですすめよう! 災害に強い国づくり
- 内容
- これまで日本は多くの大規模な自然災害を経験し、その度に大きな被害を受け、長期にわたり復旧や復興に向けた対策を余儀なくされてきました。その教訓から、事前に災害に強い国づくりを行い、被害を少なくし、暮らしも経済も速やかに回復させるための取組が進んでいます。番組では、行政や企業・地域が行った防災・減災対策の事例をご紹介するとともに、私たち一人一人が、事前に取り組めることについて深掘り!是非、お聴きください。
- 「目指せ日本復権! 半導体の世界」
- 令和5年(2023年)4月9日(日)
バックナンバー
コントロールが肝心! スマホ時代の子育て
令和5年(2023年)3月26日放送
食から日本を考える。ニッポンフードシフト
令和5年(2023年)3月19日放送
あゆみ続ける福島の今と、その先の未来
令和5年(2023年)3月12日放送
「Jアラート」 その瞬間、その行動が命を守る!
令和5年(2023年)3月5日放送
事業の新たな展開を応援! リスキリング支援
令和5年(2023年)2月26日放送
食の恵みを育む! BISTRO下水道
令和5年(2023年)2月19日放送
ホンモノに出会おう! GI産品
令和5年(2023年)2月12日放送
困った時のはじめの一歩! いやや188(いちはちはち)番
令和5年(2023年)2月5日放送
なに?なぜ? G7広島サミット
令和5年(2023年)1月29日放送
「いじめ」させない! 見逃さない!
令和5年(2023年)1月22日放送
まずは相談! クリエイターの権利を守ろう
令和5年(2023年)1月15日放送
110番通報の新たなシステムと、使い分けよう#9110番
令和5年(2023年)1月8日放送
力を合わせて実現しよう! 30by30(サーティバイサーティ)
令和5年(2023年)1月1日放送
地球を救う! スマート農業
令和4年(2022年)12月25日放送
選べていますか?自分に合った携帯電話の料金プラン
令和4年(2022年)12月18日放送
開業150周年 鉄道の魅力再発見!
令和4年(2022年)12月11日放送
あなたの口座でもマネー・ローンダリング対策
令和4年(2022年)12月4日放送
「減らす ずらす 切替える」 冬の省エネ・節電対策
令和4年(2022年)11月27日放送
こどもまんなか社会を実現しよう! こども家庭庁創設
令和4年(2022年)11月20日放送
資産づくりの第一歩 はじめよう!つみたてNISA
令和4年(2022年)11月13日放送
だから食べよう!豊かなさかなの国 日本
令和4年(2022年)11月6日放送
安心スマホ・ライフ! サイバー犯罪からお金や個人情報を守る方法
令和4年(2022年)10月30日放送
輝け!学びの未来 あなたのまちのコミュニティ・スクール
令和4年(2022年)10月23日放送
今こそウッド・チェンジ! 木のある暮らし
令和4年(2022年)10月16日放送
あなたはひとりじゃない! 声をあげよう! 声をかけよう!
令和4年(2022年)10月9日放送
福島の復興へ向けて 正しく知ろう 廃炉とALPS処理水
令和4年(2022年)10月2日放送
#(ハッシュタグ)で語ろう! 2025年大阪・関西万博
令和4年(2022年)9月25日放送
日本遺産 ~ストーリーに魅せられて~
令和4年(2022年)9月18日放送
申請は今がチャンス! デジタル社会のパスポート マイナンバーカード
令和4年(2022年)9月11日放送
命を守るために 家具類の転倒防止対策
令和4年(2022年)9月4日放送
今こそ注目! 進化するお米の世界
令和4年(2022年)8月28日放送
日本のパートナー 成長大陸アフリカ
令和4年(2022年)8月21日放送
ワクワクがいっぱい! 魅力あふれる日本の国立公園
令和4年(2022年)8月14日放送
投票しよう! Digi田甲子園
令和4年(2022年)8月7日放送
考えよう! 日本の食品価格事情
令和4年(2022年)7月31日放送
油断大敵 子どもの事故に御用心
令和4年(2022年)7月24日放送
ヤングケアラー 子どもが子どもでいられるように
令和4年(2022年)7月17日放送
ひとりひとりができること ゼロカーボンアクション30
令和4年(2022年)7月10日放送
今こそ考えよう! 暮らしを支える税の世界
令和4年(2022年)7月3日放送
土砂災害 その備えが命を救う
令和4年(2022年)6月26日放送
進化する学校給食の世界
令和4年(2022年)6月19日放送
本物の旅をしよう! 第2のふるさとづくり
令和4年(2022年)6月12日放送
おしゃれの新常識! サステナブルファッション
令和4年(2022年)6月5日放送
世界にコミット! 魅力あふれる日本の農林水産物と食品
令和4年(2022年)5月29日放送
魅力再発見! 暮らしを支えるダムの世界
令和4年(2022年)5月22日放送
相談してみませんか ギャンブル等依存症
令和4年(2022年)5月15日放送
パパ・ママを笑顔にする新しい育児休業制度
令和4年(2022年)5月8日放送
海の安全を守る! 海上保安官の世界
令和4年(2022年)5月1日放送
デジタル・スキルを身につけよう! マナビDX
令和4年(2022年)4月24日放送
転職なき移住! 地方創生テレワーク
令和4年(2022年)4月17日放送
沖縄復帰50周年 その歩みと魅力
令和4年(2022年)4月10日放送
思いやりとゆずり合いで交通事故のない社会を目指して! 春の全国交通安全運動
令和4年(2022年)4月3日放送