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あなたはひとりじゃない! 声をあげよう! 声をかけよう!

孤独や孤立は、いつ、誰にでも起こり得るからこそ、今、多くの方に知って欲しい支援や制度があります。今回は、「あなたはひとりじゃない! 声をあげよう! 声をかけよう!」というテーマで深掘りしました。

ラジオ番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」

パーソナリティとゲスト
ゲスト
内閣官房
孤独・孤立対策担当室 政策参与
大西 連

ストリーミング(音声で聴く)

放送日
令和4年(2022年)10月9日
時間
18分26秒
配信終了予定日
令和5年(2023年)10月8日

文字で読む

青木
足立さんは孤独を感じることはありますか?
足立
私は、毎日いろんな場所にお仕事に行って、いろんな方にお会いする機会が多いので、なかなか孤独を感じたことはないかもしれません。
青木
内閣官房が昨年度、孤独・孤立対策の一環で、国として初めて孤独・孤立の実態を把握するための全国調査を行ったんですが、それによると、孤独感が「しばしばある・常にある」「時々ある」、「たまにある」と回答した人は、全体の4割ほどいることが分かったそうです。
足立
思っていたよりも多いですね。これは、やっぱりコロナ禍が影響しているのでしょうか。
青木
そうですね。そもそも今は昔と比べて職場や家庭、地域で、人と人とが関わり合ったり、支え合う機会などが減っていますよね。職場でプライベートな話がしづらくなったという話も聞きますし、ご近所付き合いも減って社会全体のつながりが希薄化しているように感じます。そんな状況に追い討ちをかけるように新型コロナウイルスの影響で人と交流する機会が減りましたから、孤独を感じる人が以前よりも増えているのかもしれません。ここからは、内閣官房 孤独・孤立対策担当室 政策参与の大西連さんに伺ってまいります。
足立
大西さん、孤独・孤立の実態調査で見えてきた現状など、もう少し詳しく教えていただきたいのですが、そもそも孤独と孤立って違うものなんですか?
大西
そうですね、【孤独】は主観的な概念と言われており、その方が独りぼっちと感じる気持ちだったり、感情だったり、そういうものを孤独と呼ぶのに対して【孤立】は客観的な概念で、人と人とのつながり、社会とのつながりが失われてしまっている状態を指します。どちらも、独りぼっちの状態と言えますが、個人で感じる部分なのか、客観的に、そういう状態にいるのか、その違いで定義し、今回、調査を行いました。
青木
足立さんはどういう人が孤独を感じやすいと思いますか?
足立
一人暮らしの高齢者の方とか?
青木
確かに、今回の調査で孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の割合は 同居人がいない一人暮らしの人のほうが高かったんですが、高齢者が必ずしも孤独を感じやすいかというとそうでもないんです。
大西
データを見ると、20代、30代、特に30代の方が一番、孤独感が強く、これは、我々としても意外なところではありました。例えば、高齢の方だと、ヘルパーさんが家に来たり、デイサービスを使ったり、もしかしたらそういった環境で社会的つながりが比較的あるのかと。逆に、20代、30代は働いている方が多いので、職場と自宅を行き来するだけで、つながりがないという方が多くいらっしゃるのかと、思っています。
足立
ちょっと意外でした。では、どういう人が孤独を感じやすいんですか?
大西
例えば、仕事をしている、していないとか、仕事の状況をみると、やはり無職の方や派遣社員の方、非正規で働いていたり、不安定な仕事をしている方ほど、孤独が強くなってしまうことが明らかになっています。また、収入が多い方、少ない方で比べたときに収入が少なくなるほど、孤独感が強くなってしまうと。ただ、所得が高い方に関しても、孤独感が一定程度あるというデータもあるので、広範囲で、ほとんどの方に何らかの孤独を抱える可能性があると言えます。社会的に立場の弱い方が孤独を抱えやすいことはデータでも見えてきているのかと思います。それ以外にも、健康な方と病気をお持ちの方だと、病気をお持ちの方のほうが、孤独感が強くなったり。あとは、一人暮らしの方です。未婚、離別、死別、そういった状況ですと孤独感が強くなる。そういった傾向が見えてきています。
青木
そういった意味では、30代、そして20代で孤独を感じる割合が高いのは、働き方や所得が関係しているのかもしれませんね。
足立
未来への不安などもあるかもしれませんね。素朴な疑問なんですけど、「孤独」自体が悪いわけではないですよね? 世の中には孤独を好んで、自ら孤独な暮らしをされる方もいらっしゃいますよね。だから、悪いわけではないと思うのですが。
大西
そうですね。「孤独」を望む方も当然いらっしゃいますし、人と人、社会とのつながりを必要としないライフスタイルを好んで行う方も、社会の中にはいらっしゃいます。政府として、価値観やライフスタイルを示したいわけではなく、ただ、そういった自ら望んで孤独状態にいらっしゃる方に関しても、例えば、具合が悪くなったり、経済的な状況が変わったり、家族の状況が変わったということで、望まない孤独に陥る可能性も当然、あるだろうと。そういった意味で、どういう状況でその方が変化していくか、望んでいた孤独から、望まない孤独に変わっていくのか分からないので、それも含めて、望まない孤独に対して対策を取る必要があるのではないか、という考え方で取り組んでいるところです。
青木
社会的背景として、最近は、自己責任論みたいなことがはびこるときもありますよね。
足立
「自己責任でしょ」という反応、ありますよね。
大西
自己責任論がいい場面ではたらく機会も、もちろんあると思います。それによって、頑張ろうというエネルギーになるということもあると思うのですが、孤独・孤立対策が生まれた背景としては、自己責任論では太刀打ちできないくらい、声を上げられない方が社会にたくさんいて、苦しい現状で悩まれている現状があるのかなと理解しています。
青木
本当に苦しい時は、一人で抱え込まず、声を上げてもいいし、その声を受け止める取組も徐々に構築されていますよね。
大西
そうですね。孤独・孤立対策は始まって1年半ほど経ちますが、声を上げてもらうこと。それから、声を上げてくれ方に支援を届けることを目的としていますので、今、青木さんがおっしゃったことが正にそのとおりだなと思います。
青木
ここからは、あなたの状況に合った支援を探すチャットボットなどを深掘りしていきます。内閣官房では、昨年の2月に孤独・孤立問題に取り組む閣僚級ポストを設置して、孤独・孤立対策に取り組んでいるんですよね。
大西
はい。昨年から実態把握のための調査を始め、政府としての重点計画の策定だったり、今年に入っては7月と8月の2回、1週間の期間限定ではありましたが24時間体制の「孤独・孤立相談ダイヤル」を設けたりと、様々な取組を進めています。
足立
この「孤独・孤立相談ダイヤル」には、どれくらい相談があったんですか?
大西
7月の時には、期間中にかかってきた電話はおよそ1万5,000件に上り、そのうち、電話につながって相談に応じることができたのは、およそ3,800件でした。
足立
どんな相談が寄せられたんですか?
大西
孤独・孤立の状態にある方からの相談を受けることでしたので、「寂しい」、「話を聞いてほしい」、「人と人とのつながりが全くない状態で苦しんでいる」といった相談もあれば、「生活が苦しい」「住まいがなくて、公衆電話から掛けている」方、また、精神的に追い詰められてしまい、「今すぐにでも死にたい」と声を上げる方だったり、職場での相談だったりと、様々な相談が来ました。
足立
相談するに当たり、もしかしたら、知らない人の方が素直に話せるというのもあるかもしれないですよね。知っている人だと、どう思われるのか? と感じることもあると思うので、全く自分のことを知らない人に、思っていることを吐き出したいという人が多いのかな? と思いました。
青木
こうした思いの背景には色々なものがあるんですよね、大西さん。
大西
そうですね。最初は、話したい、寂しい気持ちを聞いてほしいということなんですが、そこから心を開いていただいて、いろんな問い掛けをする中で見えてきたことというのは、沢山あるのかなと。今回の相談ダイヤルの特徴として、全国の様々な民間のNPOと支援機関の合同で、第2回目、8月の実施期間に関しては70近くの団体と一緒に相談ダイヤルを行ったことです。ちょっと話して楽になる方もいれば、必要に応じて同行の支援、例えば役所の窓口に一緒に行く支援を行ったり、すぐに支援物資をお送りしたりといった対応も含めてできたことが一つの成果なのかなと思っています。
足立
これって、期間が限定的なものだったと思いますが、今、悩みを抱えている人が相談できる場所というのはあるんですか?
大西
相談ダイヤルはあくまで試行的な事業ということで、常設できていない部分がありますが、現在、同時並行で内閣官房のホームページに「あなたはひとりじゃない」というサイトを開設しています。そのサイトでは、チャットボットを導入し、24時間自動で応答し、およそ150の関係府省の支援制度や相談窓口をご紹介しています。例えば、「お金がない」、「家族関係で悩んでいる」といった質問項目をタップしていただくと、「この制度が使えるかもしれません」と自動で、本人の状況にあった支援制度が表示される仕組みとなっております。
青木
中には、国の制度や相談窓口を使うことに、ためらいがある方もいらっしゃると思うんですが、国の制度を使うことは全ての人にとっての権利です。私も先ほど、確認してみたんですが、匿名でも相談できますし、そもそも相談窓口には守秘義務があり、お話した内容が本人の同意なく他の人に知られることはありません。その辺りは、安心して相談することもできます。チャットボットというワードが出てきましたが、そんなに難しく考える必要はなく、簡単な質問にタップして答えていけば、本人の状況にあった支援の窓口を 紹介してもらえるということです。
大西
皆さんに使っていただくために、様々な政策、制度というものを国が作っていますので、全然恥ずかしいことでも、ためらうことでもなく、正に匿名で誰でも相談ができますので是非、利用していただきたいと思います。
足立
知らない人のほうが相談しやすいこともあるかもしれませんので、利用してほしいですし、私たちも、もっと学校や職場、地域でのコミュニケーションが増えていけば、孤独や孤立に関する悩みが深刻化する手前で解消できる場合もあると思うんですよね。
大西
そうですね。なかなか行政機関に相談しに行くことだったり、NPO等に相談するということは、まだまだハードルが高いと正直思います。ハードルが高いことは良くないことだと思いますので、ハードルを低くする取組というのを政府としてもやっていきたいのですが、他方で家族や友人、同僚だったりと、身近な方がまず、話を聞いてくれることによって、すごく楽になったり、問題が整理されたりということがありますので、是非、遠慮なく声を掛けること、「最近どう?」「眠れてる?」「最近、顔色が悪いけど大丈夫?」「ごはん食べれてる?」と言ったように日常の会話でも、挨拶でもいいと思います。声を掛け合うことが、まず、第一歩なのかなと思っています。孤独や孤立は、生活困窮や自殺要望、暴力の問題と、様々な背景があると分かってきています。一方で、社会的に弱い立場に置かれている方だけの問題かというと、そうではないということも調査で分かってきています。所得が低い方、高い方。低い方が孤独感は強いと言われていますが、高い方にも孤独を抱えていらっしゃる方はいます。要するに、誰もが、どういうタイミングで自分の身に起こるか分からない「誰にでも起こりうる問題」だということで、政府としては急ピッチで対策を進めているところです。自分は関係ない、自分はもうちょっと頑張らないといけないと思い過ぎないで「ちょっとしんどいな。」、「ちょっと話を聞いてほしいな。」、「誰かに相談したいな。」ということを是非、オープンに声を上げていただきたいと思いますし、皆さんが声を上げていただくことで、制度や政策が変わっていくと思います。そのためにも、人と人とのつながりをどう作っていくのかを政府としても一生懸命やってまいりますので、是非、ご相談も含めて、地域の中でのつながりを作っていただけたらと思っています。
足立
今日の話を聞いて、孤独や孤立は、どのタイミングで誰しもがなる可能性があることを改めて感じました。自分はこんなに今、大変なんだ!と声を上げることは、恥ずかしいことではないですし、周りも気付いて声を掛けてあげることが大事なんだなと感じました。
青木
そうですよね。私たち自身も気付ける人間でありたいなと思いますよね。目に見えなくても悩んでいる方というのは多いと思います。国の制度や相談窓口があるということをまずは知っていただき、そして、匿名で、安心して相談できることを知っていただきたいと思いました。
放送予定(※内容は変更になる場合があります)
「早わかり! 最低賃金」
令和5年(2023年)10月8日(日)
「いのちをつなぐ 臓器移植」
令和5年(2023年)10月15日(日)

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