地球を救う! スマート農業
私たちの生活に必要不可欠な農業。しかし、農業従事者は年々減少するとともに、高齢化も進み、従事者の負担は増加しています。そこで、ロボットやAI、IoTなど先端技術を活用する「スマート農業」!番組では、自動走行トラクターやリモコン式の草刈り機、果実や野菜を自動収穫するロボットなど、様々なスマート農業を深掘り!農業従事者への負担軽減だけでなく、地球環境にもやさしいと言われる理由とは?

- ゲスト
- 農林水産省
大臣官房政策課 技術政策室長
上原 健一
ストリーミング(音声で聴く)
- 放送日
- 令和4年(2022年)12月25日
- 時間
- 17分55秒
- 配信終了予定日
- 令和5年(2023年)12月24日
文字で読む
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青木 - スマート農業という言葉は最近、よく聞くようになりました。この番組でも、時々、話題に上りますよね。
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足立 - そうですね!デジ田甲子園をご紹介したときに、自動走行トラクターなど、スマート農機を活用して、作業時間を削減した事例をご紹介しましたね。
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青木 - そうですね。ですから、もしかするとスマート農業を知っているつもりになっているかもしれませんが、スマート農業の技術はどんどん向上していて、そこには驚きの世界が広がっています。「スマート農業」は、生産現場の課題を解決する手段として導入が期待されているんですが、では、足立さん、生産現場の課題というと、どんなものを思い付きますか?
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足立 - やはり、人手不足!あと、高齢化。これは外せないですよね?
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青木 - そうですね。農業分野では、担い手が年々減少していて、1960年には、1,175万人いた農業従事者の数が、2020年には136万人まで減っています。しかも、2020年時点での農業従事者の平均年齢は68歳なんです。
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足立 - やっぱり、高齢だと大変な作業も多いですよね。でも、最近、会社員などを辞めて農業を始める方がいると聞きますが?
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青木 - 確かに、そうした新規就農者もいますが、農業従事者の減少に歯止めが掛かるほどではないんです。そのため、農業現場では一人当たりの作業面積が拡大する一方なんです。
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足立 - ということは、農業に従事する方々の負担が、年々増しているということですね。
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青木 - はい。農業分野の課題は他にもあります。機械化が難しい危険な作業や、きつい作業があったり、収穫期など、期間限定で多くの人手が必要になったり、また、熟練者でなければできない作業も多く、新規参入が難しいなどです。例えば、トラクターは、まっすぐ走らせるだけでも大変なんだそうですよ。
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足立 - だから、自動走行のトラクターに注目が集まっているんですね。
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青木 - ここからは、スペシャリストに伺っていきましょう!農林水産省 大臣官房政策課 技術政策室長の上原健一さんです。
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足立 - 上原さん、そもそも「スマート農業」とはどういったものなんでしょうか?
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上原 - はい。「スマート農業」とは、ロボットやAI、IoTなどの先端技術を活用する農業のことです。既に、それらを活用した様々なものが登場し、生産現場の課題の解決に貢献しています。足立さんのお話にありました、自動走行トラクターの他、自動運転田植機などは、既に複数のメーカーから販売されています。
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足立 - 何だか、すごそうですね。
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青木 - 私も事前に、自動走行しているトラクターの動画を拝見したんですが、見事なものでした!
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上原 - 自動走行トラクターは、人が乗らなくても、畑の形に応じて無駄なく走行し、耕す作業などを自動で行うことができます。人は、その作業を監視しながら、作業の開始や停止などをコントロールします。このため、例えば、1台のトラクターは無人で耕し、もう1台は人が乗って肥料散布を行うといった、一人が2台のトラクターで同時に作業をすることもできるため、作業時間が短縮され、大規模な面積もこなすことができます。
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青木 - 最近は、後継者不足などにより、放置されている耕作放棄地も多いそうなので、そのような耕作地を活用する余力も生まれるかもしれないですよね。私たちの食料を生産してくれる農業は、食料安全保障の観点からもとても大事ですし、農業従事者の高齢化や、人数が減少している中で、農業に最先端の技術をどんどん活用してもらって、国産のおいしい農産物をたくさん作ってもらいたいですよね。
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足立 - 「農業はきつい」という印象を持っている人もいると思いますが、スマート農業は、こんなイメージを変えるかもしれませんね。上原さん、他には、どんなスマート農業がありますか?
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上原 - 分かりやすいところでは、草刈機です。リモコン式や、無人で自律走行するタイプなども登場しています。リモコン式自走草刈機は、人が入れない場所や、傾斜の急な危険な場所での草刈作業がリモコン操作で実施できるので、事故などのリスクを軽減することができます。
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青木 - ある農業生産法人は、自動走行トラクターや、リモコン式の草刈機などを導入したところ、経験の浅い職員も活躍し、省力化が進んだことで、作付け面積が1.4倍に拡大したそうです。女性、高齢者、学生アルバイトも含め、多様な人材が集まり、活躍されているそうですよ。
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足立 - スマート農業を導入したことで、農作業特有のノウハウも不要となったり、作業の負担が軽減したりするので、いろんな人が働きやすくなっているのかもしれないですね。
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青木 - 実際に、リモコン式草刈機を利用した学生のアルバイトからは、「夏場の草刈りは疲れるので嫌だけど、リモコン式の草刈機を使えば、木陰でくつろぎながらゲーム感覚でできるので楽しい」という声も上がったそうです。
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足立 - 確かに、最近、夏は特に暑いし、草刈りって、中途半端に腰を曲げることが多くて、痛いし疲れますよね。だから、こういう風に誰でもできるというのは、良いことだし、若い世代にも農業に興味を持ってもらえそうな話題なのかなと思いました。
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青木 - 確かに、そうですね。
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上原 - はい。さらに、草刈りロボットが、ロボット掃除機のように、草刈りして、充電場所まで戻って、充電するという工程を自動で行うタイプも登場し、今後の発展が期待されています。
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青木 - それは良いですね!それから、最近のスマート農業の世界では、農作物の病害虫をAIが画像診断してくれるスマホアプリなども開発されているんですよね。スマホで撮影した農作物の画像から、どんな病害虫の被害を受けているのか教えてくれるそうなので、こうしたアプリは家庭菜園などでも役立ちそうですよね。
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上原 - はい。こうしたアプリを活用すると、新規就農者などでも、病害虫を早期発見できますので、適切な対策を講じることができ、被害を最小限に抑えられます。
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青木 - 新規就農者にとっては、経験がないと分からなかったり、近くに詳しい人がいないと教えてもらえなかったりといった状況でしたが、スマホのアプリがあれば便利ですよね。ところで、足立さんは野菜や果実の収穫をしたことがありますか?
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足立 - 小学校のときに、授業の一環で行った経験はありますね。
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青木 - 1個や2個収穫するだけならいいけど、広大な畑を全部収穫するとなると、結構な体力も使いますよね。今は、自動で果実や野菜を収穫するロボットの開発も、様々な農作物で進んでいるそうです。例えば、あるスタートアップが開発したピーマンの収穫ロボットは、搭載されたカメラで生育状態を確認し、AIが収穫に適したピーマンを判別して収穫します。最適なタイミングを逃すことなく収穫することが可能になるので、収獲量も増加したそうです。
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足立 - ここまで伺っていると、スマート農業は人手不足による負担を軽減したり、危険やキツい作業から農業従事者の方々を解放してくれたり、熟練者の技を手軽に習得することができる、そんなイメージなんですけど、振り返ると、今日のテーマは「地球を救う! スマート農業」ですよね?「地球を救う!」って、どういうことですか?
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青木 - 良いところに気が付きましたね!実は、スマート農業は農業従事者に優しいだけでなく、環境汚染が心配されている地球環境にも優しいんです!
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足立 - 地球環境に優しいスマート農業って、どういうことですか?
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青木 - スマート農業と言いますと、作業を自動化して人手を省き、大規模な農業経営を効率化するためにあると思っている方が少なくないと思いますが、実は、スマート農業を導入しますと、化学農薬や化学肥料の削減などにもつながり、環境にも優しいというメリットもあるんですよね。上原さん。
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上原 - はい。例えば、ドローンによる農薬の散布ですが、これまでは、水田や畑に農薬を散布する場合、全体にまんべんなく農薬を散布することが多かったのですが、スマート農業では、ドローンで上空から撮影し、その画像をAIが解析して害虫の発生位置を特定し、害虫が発生しているところにピンポイントで農薬を散布する、そんなことができるんです。これにより、農薬の使用量を大幅に減らすことができ、環境負荷の軽減につながります。
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青木 - また、人工衛星で撮影した水田や畑の画像を解析して、農作物の生育状態を診断し、必要なところに必要な分量の肥料を散布することもできます。こうすることで、生育のばらつきが抑えられ、生産量を増やすことも期待できます。
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足立 - 有機栽培など、環境に配慮した農業は手間が掛かるから生産量が少なくなるイメージがあるんですけど、スマート農業を導入すれば、環境に配慮しつつ、生産量の増加も期待できるんですね。
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上原 - はい。肥料や農薬が減ると、その分収穫量も減るといったイメージを持たれていた方もいらっしゃったと思いますが、スマート農業では、環境への配慮と生産量の増加、その両方を追求することができます。
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青木 - 実は昨年、持続可能な食料システムの構築に向けて「みどりの食料システム戦略」が策定されたんですよね。
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足立 - 「みどりの食料システム戦略」とはどういったものですか?
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上原 - はい。持続可能な食料システムを構築することは、今、非常に重要なことであり、農林水産省では、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現する「みどりの食料システム戦略」を令和3年5月に策定しました。この戦略では、2050年までに目指す姿として、「農林水産業のCO2ゼロエミッション化の実現」や「化学農薬の50パーセント低減」、「化学肥料の30パーセント低減」などの目標を示しています。令和4年5月には、「みどりの食料システム法」が成立し、7月1日に施行され、9月からは環境負荷低減の取組を後押しする認定制度が始まるなど、「みどりの食料システム戦略」の実現に向けた政策を推進しています。スマート農業は、その基盤となるものです。
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足立 - その「みどりの食料システム戦略」の実現のためにも、スマート農業が重要ということですね。環境にも優しいスマート農業が広まってほしいと思いますね。
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青木 - そうですよね。2019年からこれまで全国の205の地区で、スマート農業の実証プロジェクトが進められていまして、スマート農業の効果が実感されているそうです。一方、今後の課題としては、「導入初期のコストが高い」「スマート農業の技術に詳しい人材が不足している」といったものが挙がっているそうなんです。こうした課題を解決するための取組も決まっているそうですよね。上原さん。
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上原 - はい。導入コストを下げるために、誰もがスマート農業の技術を利活用できるように、農機のシェアリングやデータに基づく経営指導などを支援するサービスを育成・普及することとしています。また、実証プロジェクトに参加した、技術やノウハウを有する農業者や産学官の有識者などにより「スマートサポートチーム」を結成し、スマート農業技術を積極的に取り入れる産地の実地指導などを行っています。
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足立 - これからスマート農業が広まって、農業は一気に変わっていきそうですね。
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上原 - 農業の現場の課題を、先端技術で解決する「スマート農業」は、高齢化や担い手不足に対応するとともに、化学肥料や化学農薬の削減など、環境負荷低減にも役立ち、「みどりの食料システム戦略」の実現の鍵になるものです。さらに、食料安全保障や安全・安心な農産物の確保、品質の向上にもつながるものですので、しっかりと取り組んでいきたいと考えています。どうぞ、これからのスマート農業にご期待ください。
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足立 - 今日の話を聞いて、たくさん印象に残ったんですが、やっぱり、これを皆に知ってほしいと思ったのは「みどりの食料システム戦略」です。2050年までに「農林水産業のCO2ゼロエミッション化の実現」、「化学農薬の50パーセント低減」、「化学肥料の30パーセント低減」などの目標を示していて、私たちも、そこに向けて頑張らないといけないこと、手伝わないといけないことがたくさんあるんだろうなと思ったので、これがあるよ!ということを皆に知ってほしいなと思いました。
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青木 - 私が、今日の話で気になったのは「スマートサポートチーム」です。スマート農業技術を積極的に取り入れる産地の実地指導などを行っているということで、取り入れよう!と思っていても導入初期のコストが高かったり、スマート農業の技術に詳しい人材が不足しているといった課題がありますので、そういった課題を解決するための「スマートサポートチーム」、是非、活用してほしいです。
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