「Jアラート」 その瞬間、その行動が命を守る!
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弾道ミサイル情報など、対処するのに時間的な余裕がない緊急事態に関する情報を、国から国民に向けて瞬時に伝達するシステム「Jアラート」。ミサイル発射=Jアラートと思っている方もいるかもしれませんが、実はそうではないんです。番組では、どのような時にJアラートが送信されるのか、また、ミサイルが発射され、Jアラートが届いた時に、私たちが命を守るために、取るべき行動について深掘り。

- ゲスト
内閣官房 副長官補(事態対処・危機管理担当)付
参事官補佐
石田 渉
ストリーミング(音声で聴く)
- 放送日
- 令和5年(2023年)3月5日
- 再生時間
- 17分06秒
- 配信終了予定日
- 令和6年(2024年)3月4日
文字で読む
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青木 - Jアラートは多くの方が聞いたことがある言葉だと思いますが、そのシステムについてはご存じない方も多いと思います。
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足立 - Jアラートは、北朝鮮からミサイルが発射されたときに、その情報を知らせるものと思っていました。
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青木 - そういうイメージを持っている方が多いと思いますが、実は、もう少し幅広く運用されています。Jアラートの正式名称は「全国瞬時警報システム」と言いまして、弾道ミサイル情報、緊急地震速報、津波警報など、対処をするのに時間的な余裕のない緊急事態に関する情報を、携帯電話などに配信される緊急速報メールや市町村の防災行政無線などにより、国から国民に向けて瞬時に伝達するシステムです。
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足立 - ミサイルだけじゃなくて、自然災害の場合にも活用されるんですね。
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青木 - はい。そうなんです。その中でも、今日は、ミサイルの情報が送信された場合に絞って深掘りしていきます。足立さん、昨年1年間で、北朝鮮からミサイルなどがどれくらい発射されたかご存じですか?
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足立 - 回数は分かりませんが、毎日聞くような時期もありましたし、ニュースを見たり聞いたりしたことはすごく多かったですね。
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青木 - 防衛省では、なんと、昨年1年間でミサイルが発射された日は30日以上あり、70発以上のミサイルが発射されたことを確認しています。そして、そのうちの、10月4日及び11月3日にJアラートによる避難等の情報伝達がなされました。Jアラートが送信されたのは5年ぶりだったので、覚えている方も多いと思います。
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足立 - Jアラートが鳴った地域の方は、びっくりされたでしょうね。
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青木 - そうですよね。ただ、10月4日にJアラートを送信した地域の住民に対してアンケート調査を行ったところ、「ミサイル発射を知った後、避難などしましたか?」という問いに、「避難等が不必要と考え、避難しなかった」「どうしたらよいかわからず、避難できなかった」と答えた方が、合わせて7割近くも、いたそうなんです。
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足立 - 分かる気がします。私もどうしたらいいか分からないし、正直、これだけ頻繁にミサイルが発射されていると、危機感も薄れてきますよね。
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青木 - そういう方が多いかもしれません。でも、その考えは、今日の話を聞くと改めたくなると思います。スペシャリストに伺っていきましょう。内閣官房 事態室 参事官補佐 石田渉さんです。
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足立 - 今日はミサイル発射によるJアラートがテーマなので、防衛省の方がいらっしゃるのかと思っていたら、内閣官房の方なんですね。Jアラートと内閣官房はどのような関係なんですか?
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青木 - 不思議に思われる方もいるかもしれませんが、実は、密接な関係があるんですよね。
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石田 - はい。私たちの仕事は、災害やミサイル発射などから国民の皆様をどう守るかを考えることです。ミサイルの情報を収集・監視しているのは防衛省ですが、内閣官房としては、防衛省からの伝達に基づいて、国民の皆様を保護するという目的でJアラートの送信を行っています。日頃から当番制で24時間365日、防衛省からの情報に基づいてJアラートを送信できる態勢を取っています。
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足立 - 24時間365日、私たちのことを守ってくれているんですね。では、どういうときにJアラートが送信されるんですか?
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石田 - ミサイルが日本の領土・領海に落下する可能性がある場合、または、領土・領海の上空を通過する可能性がある場合にJアラートが送信されます。逆に、落下や通過の可能性がない場合はJアラートを送信しません。つまり、ミサイル発射=Jアラートではないんです。
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青木 - 昨年で言いますと、1年で70発以上ミサイルが発射されているわけですが、Jアラートが送信されたのは2回だけです。ということは、足立さん。どんなことが言えると思いますか?
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足立 - つまり、Jアラートが送信された2回は、他のときと比べて、ミサイルが落下や通過をする可能性が高かったということですよね。
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石田 - はい。そのとおりです。10月4日の事案では、実際に青森県上空をミサイルが通過しています。
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青木 - ミサイルは予告なく発射されるので、気が抜けませんね。
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石田 - 私たちの部署の職員は、日頃から災害が起こったり、ミサイルが発射されたりすると24時間365日、すぐに首相官邸の危機管理センターに集まり、対応に当たります。実際、大晦日の朝や、元日の真夜中2時台にもミサイルが発射されたため、すぐに危機管理センターへ向かいました。
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青木 - いつでも対処できる体制を整えているんですね。
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足立 - 昨年、ミサイルが発射された日数は30日以上だった、ということは、それくらい緊迫する日があったということですよね。
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青木 - そうなんです。つまり、足立さん。北朝鮮のミサイルが発射されるごとに、対処している石田さんたち内閣官房の方々が、「Jアラートを送信した」ということは、私たち国民への危害が及ぶ確率が高いということなんです。ですから、Jアラートが送信されたら、それを安易に考えてはいけないんです。
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足立 - 本当ですね。でも、ちょっと心配なのは、Jアラートを聞いてから避難など行動をしたって、間に合わないんじゃないかなと思いますし、そもそもどんな行動をとればいいのか、分からないんですが。
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青木 - そうですよね。そこで、ここでは、内閣官房からJアラートが送信されるとどうなるのか、伺っていきましょう。石田さん!
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石田 - はい。Jアラートが送信されると消防庁が管理する送信システムから情報が送信され、市町村の防災行政無線などが自動的に起動し、お住まいの地域の屋外スピーカーなどから警報が流れます。また、携帯電話にエリアメール・緊急速報メールが送信されます。
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青木 - Jアラートの警報音は「国民保護サイレン」と言って、内閣官房の国民保護ポータルサイトで聞くことができます。どんな音か、改めて確認してみてください。
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足立 - 改めて、Jアラートの警報音を聞いたんですが嫌な音がしますよね。
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青木 - そうですね。ただ、注意喚起するという意味では、多くの方に気付いてもらいやすい音ですよね。そして、この警報音とともに流れるのが、このメッセージです。「ミサイル発射。ミサイル発射。北朝鮮からミサイルが発射されたものとみられます。建物の中、又は地下に避難して下さい。」と。
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足立 - ミサイル発射からどれくらいで、こうしたメッセージが流れるんですか?
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石田 - 昨年の10月4日を例にしますと、ミサイル発射を確認してから5分ほどでJアラートが送信されました。
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足立 - それで、間に合うんですか?
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石田 - ミサイルの種類や発射の方法、発射場所などにより異なりますが、北朝鮮から発射されたミサイルが日本へ飛来する場合、10分もしないうちに飛来すると予測されています。ですから、Jアラートによる情報伝達を聞いたら住民の皆様は、直ちに行動に移していただきたいと思います。
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足立 - 時間は多少あるということですね。日本の領土・領海に落下する場合だけでなく、上空を通過する可能性がある場合もJアラートが送信されるということですが、なぜ、上空を通過する場合でも避難をする必要があるんですか?
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石田 - ミサイルが上空を通過する際には、分離した部品等が日本に落下する恐れがあるため、落下に備えて避難をする必要があります。
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青木 - 避難行動は、状況によって様々ですが、屋外にいる場合は近くの建物、または地下に避難してください。
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足立 - やっぱり建物の中や地下が良いんですね。
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石田 - ミサイルが落下したら爆風や破片などが飛んでくる可能性もあります。こうした被害をできるだけ避けるためには、コンクリート造りなどの頑丈な建物などに避難していただきたいと思っています。また、屋内にいる場合は窓から離れ、できれば窓のない部屋へ移動してください。
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足立 - 屋外にいて、周りに丈夫な建物や地下がない場合はどうしたらいいんですか?
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石田 - 近くに公園の遊具やベンチなどがあれば、身を寄せたり、隠れて頭を守る体勢を取ってください。何もなければ、その場で伏せて頭部を守ってください。ただし、車の中や、車に身を寄せるのは危険です。車は燃料のガソリンなどに引火する恐れがあります。ですから、できるだけ車から離れて地面に伏せて、頭を守ってください。
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足立 - じゃあ、車を運転中の方も車から離れた方がいいんですか?
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石田 - はい。車を運転中の方は、状況に応じて、車を止めて近くの建物の中、または地下に避難。建物などがなければ、車から離れて地面に伏せ、頭を守ってください。高速道路を走行してるときなど、車から出ると危険な場合には、車を安全な場所に止め、車内で姿勢を低くして、指示があるまで待機してください。
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足立 - ただ、実際にミサイルが落下したら、それこそ、公園のベンチの下に身を寄せて隠れたところで、無駄なんじゃないかなとも思っちゃうんですけど…。
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石田 - そうした考えもあるかと思います。ただ、過去の事例や海外の事例においても、建物の影にいて一命を取りとめた事例があります。木陰に隠れたり、地面に伏せるだけでも、爆風や破片から身を守れる可能性はあるので、決して無駄と思わず行動を取っていただきたいです。
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青木 - ちょっとしたことで被害を軽くできる可能性があるのなら、やらないよりやった方が、もしものときに後悔しないということですね。
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足立 - ちなみに、こうした避難行動は、いつまで取っていればいいんですか?
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石田 - ミサイルが日本の上空を通過した場合、Jアラートで「日本の上空を通過」というような情報とともに、「不審な物を発見した場合には、決して近寄らず、直ちに警察や消防などに連絡して下さい。」というメッセージが流れます。この情報を受け取ったら日常生活に戻っていただいて構いません。過去の例では、最初にJアラートが送信されてから、およそ10分から15分程度で「通過情報」が送信されています。
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青木 - Jアラートが送信されたときは、本当にミサイルが落下する可能性があるんだということを忘れずに、行動をお願いします。
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石田 - Jアラートはシステムの改修などを行うことにより、これまでと比較して送信時間を一層早めることとしています。皆様には改めて、Jアラートの目的をご理解いただき、もしものときには迅速に避難行動を取っていただきますようお願いいたします。また、内閣官房の国民保護ポータルサイトでは、今日紹介したような避難行動を紹介しているほか、都道府県などが指定している緊急一時避難施設を地図で検索することもできます。是非、ご覧ください。
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足立 - 正直、Jアラートが送信されても、ミサイルが発射された場合、私たちがどういう行動を取っていいのか、いまいち分かっていなかったんですが、今日、話を聞いて屋外にいる場合は、近くにある頑丈な建物、または地下に避難するという、明確な答えをいただいたので、これから、Jアラートが送信されたら、避難したり頭を守るなどの行動に移したいと思いました。
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青木 - 私が今日の話を聞いて印象に残ったのは、Jアラートが送信されたときは、「本当にミサイルが落下する可能性があるんだ」ということを忘れずに、行動することが大事ということですね。
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足立 - ミサイル発射というニュースがあるたびに、Jアラートが送信されていると思っていましたからね。
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青木 - ミサイルそのものではなく、部品などが落ちてくる可能性もありますからしっかり行動することが大切ですね。