あゆみ続ける福島の今と、その先の未来
福島第一原発事故による放射性物質の除染作業で発生した「除去土壌」。東日本大震災から12年たった今も、福島県内の中間貯蔵施設に一時保管されていますが、2045年3月までに福島県外で最終処分するために、様々な取組が進められています。番組では、福島の復興のために知ってもらいたい「除去土壌」の現状や再生利用に向けた取組などについて深掘り。そして、福島の復興のあゆみを知ることができる「次世代ツアー」など、未来志向の取組も紹介。

- ゲスト
- 環境省 環境再生・資源循環局 環境再生施設整備担当参事官室
参事官補佐
西川 絵理
ストリーミング(音声で聴く)
- 放送日
- 令和5年(2023年)3月12日
- 時間
- 17分15秒
- 配信終了予定日
- 令和6年(2024年)3月11日
文字で読む
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青木 - 東日本大震災の発生から昨日で12年が経ちました。足立さん、12年前を振り返って当時、どうしていましたか?
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足立 - ちょうどロケをしていたんですが、すごく揺れたのを覚えています。そこから急いで帰宅したんですが、テレビから流れる映像が衝撃的でした。確か、電車が止まっているといった情報をSNSで流していたと思います。
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青木 - 私は当時、日本テレビの社員で、ちょうど休みの日で自宅に居たんですが、自転車で会社に行き、その後は、仕事、取材をしていました。こうして毎年3月11日を迎えるたびに、当時のこと、そして福島のことなど、考える方も多いと思います。
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足立 - 忘れられないことですし、忘れてはいけないことですよね。
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青木 - ただ、今の若い世代、10代、20代の若者にとっては、12年前のことですから、「教科書の中の出来事」あるいは「歴史の一部」になってしまっているのではないか、そんな心配もよぎります。この番組では、昨年秋にも福島の復興について深掘りしました。東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故により、環境中に放射性物質が放出され、当時、福島の一部地域に避難指示が出されましたが、今では、その面積や対象人口が、それぞれ3割以下まで減少していること、しかし、いまだに帰還困難区域があることなどをお話しました。足立さんは、どんなことを覚えていますか?
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足立 - 福島の復興に欠かせないのが、原子力発電所の廃炉で、そのためにALPS処理水の処分が必要というお話をしましたよね。ALPS処理水とはどういうものなのか、改めて正しい情報を教えてもらいました。
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青木 - 正しい情報をしっかり知ること、そして時間が経っても、今現在はどういう状況なのか、その都度、ちゃんと理解しておきたいですよね。福島の復興に欠かせないのは、ALPS処理水の処分だけじゃないんです。「除去土壌」の処分も必要なんです。
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足立 - 除去土壌?
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青木 - ここからは、環境省 環境再生・資源循環局 参事官補佐の西川絵理さんにお話を伺っていきます。
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足立 - 西川さん、除去土壌の処分が必要というのは、どういうことなのか詳しく教えてください。
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西川 - はい。福島第一原発の事故により、周辺地域に放射性物質が放出され、環境汚染が発生しました。そのため、環境省では、生活環境を取り戻すために除染と呼ばれる作業を行ってきました。
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足立 - 確かに、放出された放射性物質はいろいろな場所に付いてしまいますよね。例えば、公園や畑、自宅の庭などの地面の除染って、どのように行うんですか?
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西川 - 除染には幾つか方法がありますが、地面に付着している放射性物質は、ある程度の深さまでしか染みみ込まないことが分かっているので、表面を剥ぎ取ることで、放射性物質を取り除くことができます。
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足立 - ある程度の深さまでしか染み込まないんですね。それがわかっていたら少し安心というか、そこさえ取り除けばという気持ちになりますよね。
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青木 - 範囲は広大ですが、表面を取り除けば放射性物質を取り除くこともできると。
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西川 - はい。他にも、建物や道路を洗うといった除染作業を行ったこともあり、福島の空間線量率、つまり、1時間当たりの放射線量は、現在では、海外の主要都市とほぼ同じ水準になっています。
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足立 - 再び、安心して住むことができるようになったんですね。
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西川 - はい。しかし、地面の表面を剥ぎ取る作業により発生したのが、大量の「除去土壌」です。この除去土壌は、福島の深刻な環境被害と、それによる住民の方々の大変重い負担を考慮して、2015年時点から30年後の2045年3月までに、福島県外で最終処分することが国の責務として法律で定められています。
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足立 - 2045年3月までということは、あと22年以内ですね。意外とあっという間に来てしまうかもしれないですね。
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青木 - 実は、この件に関して、環境省が今年1月にアンケート調査をしたところ、県外に最終処分することを知っている人は、福島県内の方では50パーセントほど、県外の方では20パーセントほどしかいなかったんです。
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足立 - 意外と少ない。やっぱり、12年経つと、福島の復興の話は他人事のようになっているんですかね。私も含めて、これではいけませんね。今、除去土壌はどこにあるんですか?
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西川 - これまでは福島県内各地に仮置きしていましたが、事故による被害が最も深刻だった大熊町と、双葉町に立地している中間貯蔵施設へ運び込んでいます。ここで、福島県外で最終処分されるまで、一時的に、安全に集中管理することになっています。この受け入れに関しては、大熊町、双葉町の地元の皆様に大変重いご決断をしていただきました。
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足立 - 今、どのくらいの量の除去土壌がそこにあるんですか?
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西川 - 2015年3月以降、これまで1,341万立方メートルを中間貯蔵施設へ搬入しました。これは、25メートルプールの2万8,000杯分に相当する量です
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足立 - ちょっと数字が大きくて想像するのが難しいですね。
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西川 - 県外最終処分の実現に向けては、現在、除去土壌の再生利用の実証事業や、除去土壌の量を減らすための技術開発に加えて、全国的な理解醸成活動などを実施しています。
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足立 - 今後、除去土壌をどのようにして処分していくのか、気になりました。
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西川 - はい。2045年3月までに福島県外で最終処分することが国の責務です。その最終処分に向けて、鍵になっているのが除去土壌の再生利用です。
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足立 - 再生利用できるんですか?
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西川 - はい。可能であると考えています。保管されている除去土壌のおよそ4分の3は、放射能濃度が低い土壌です。これらの土壌は、その表面を普通の土などで覆って、風で飛んだり、流れ出たりすることを防ぐ対策をとれば、土木工事などの基盤となる盛土として利用することも可能となると考えています。
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足立 - 放射線の影響は大丈夫なんですか?
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青木 - 気になりますよね。
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西川 - はい。除去土壌を50センチメートルの厚さの普通の土で覆えば、99パーセント以上の放射線がカットできます。もちろん、再生利用は安全性の確保を大前提として、追加被ばく線量が年間1ミリシーベルトを超えないよう、適切な管理の下で行うこととしています。
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青木 - ちなみに、日本で普通に生活する中で受ける放射線量は1年当たり、およそ2.1ミリシーベルトだそうで、例えばCT検査を受ける場合には、1回当たりの放射線量は2.4~12.9ミリシーベルトだそうです。
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足立 - 年間1ミリシーベルトを超えないというのは、大分低い値なんですね。
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西川 - はい。安全性の確保を大前提とし、適切な管理の下で、除去土壌を再生資材として活用することができれば、最終処分する除去土壌の量を減らすことができると考えています。そのため、現在、再生利用の安全性を確かめるための実証事業を、福島県飯舘村の長泥地区で進めており、花や野菜等の栽培実験も行いました。
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足立 - そうなんですね。福島の皆さんのためにも、早く取組が進むと良いですね。
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青木 - そうですよね。そして、このような取組を進めるために必要なのが、これからを担う、震災当時まだ小さかった多くの若い世代の方に福島の復興へのあゆみを知っていただくことですよね。そこで環境省では、「次世代ツアー」を行ったんですよね?
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足立 - 「次世代ツアー」とはどういったものなんですか?
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西川 - はい。「次世代ツアー」とは、福島の今と未来を伝えるため、全国から集まった学生などが、復興の現状や福島県が抱える課題を見つめ直し、次世代の視点から情報を発信することを目的として実施されたものです。「地域・まちづくり」、「観光」、「農業」、「新産業・新技術」、「脱炭素」の5つのテーマに沿って福島の現状を知ることができる場所を巡ってもらいました。
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足立 - 参加した次世代の子たちは、どんなことを感じたのでしょうか?
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青木 - 中間貯蔵施設の見学では、「実際に目の当たりにすることで、除去土壌の量の多さやプロセスの難しさ、苦労を肌で感じた。」東日本大震災・原子力災害伝承館の見学では、「被災した人のリアルを知ることができた。自分ごと化して考えることができた。」などのコメントがあったそうです。
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足立 - すごく身に染みて感じることがたくさんあったんでしょうね。
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青木 - そうですね。実際に足を運んで話を聞いたり、資料を見たりすると感じることも違いますよね。
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足立 - 先ほど「次世代ツアー」のテーマで、「新産業・新技術」、「脱炭素」というものもありましたが、震災からの復興と少しイメージが違うなぁとも思ってしまいました。これはどういった場所を巡るんですが?
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西川 - はい。福島では震災により大きな被害を受けたからこそ、その先の新しい未来へ向けて進んでいく、未来志向の取組が数多くあります。そこで、最新技術により、主に福島のお米からバイオマスプラスチックを作っている企業を見学したり、脱炭素に向けて水素エネルギーシステムの実証運用をするための研究フィールドを見学したりしました。
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足立 - 福島には、そういった最先端の技術や環境問題を解決しようとする企業や施設もたくさんあるんですね。
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青木 - そうなんです。政府では、「福島イノベーションコースト構想」というものを進めています。これは、東日本大震災及び原子力災害によって失われた福島県浜通り地域の産業を回復するため、新たな産業基盤の構築を目指す国家プロジェクトだそうです。この「福島イノベーションコースト構想」では、「廃炉」「ロボット・ドローン」「エネルギー・環境・リサイクル」「農林水産業」「医療関係」「航空宇宙」の6つを主要なプロジェクトと位置付けていて、環境省では「エネルギー・環境・リサイクル」分野において、先進的なリサイクル技術の産官学連携、技術開発などに関する取組を推進しているそうです。
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足立 - こうした福島の今、そして未来に向けた取組をもっと多くの方に知っていただきたいですね。
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西川 - 今日紹介したような、除去土壌の県外最終処分に向けた取組の現状や、未来志向の復興に向けた取組についても是非、現地で、自分の目で見て感じていただきたいと考えています。現地見学会の情報や福島の未来に向けた取組は、環境省の特設サイト「福島、その先の環境へ。」に順次掲載しておりますので、ご覧いただければと思います。また、除去土壌の再生利用について、その必要性や安全性について全国で対話フォーラムなども開催し、情報発信をしています。次回は、3月18日(土)宮城県仙台市にて対話フォーラムを開催します。ゲストとして、フリーアナウンサーの政井マヤさんにご登壇いただきます。オンラインでも参加できますので、そちらの情報も「福島、その先の環境へ。」をご覧ください。
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足立 - 東日本大震災は、もう12年前の話なので、10代、20代の子たちは余り詳しく知らない方もいるんだなと、改めて気付いたので、若い子たちが実際、福島の復興のあゆみを知るために、福島に行っていろんなことを学ぶ「次世代ツアー」は素敵なことだと思ったし、風化させないためにも必要なことだと思ったので、また、開催して欲しいと思いました。
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青木 - そうですね。しっかり次の世代にも伝えていかないといけないことですよね。私は、今日の話を聞いて印象に残っているのは、除染によって大量の除去土壌が出てしまったけれど、それを再生資材として活用することもできることが学びになりました。もちろん、安全性の確保は大前提、適切な管理の下ではありますが、こういった除去土壌を再生資材として活用することができれば、最終処分する除去土壌の量を減らせることができますから、こういった取組も進めて欲しいです。
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次回放送予定
- 放送日
- 令和5年(2023年)4月2日(日)
放送局によって日時が異なります。 - テーマ
- みんなですすめよう! 災害に強い国づくり
- 内容
- これまで日本は多くの大規模な自然災害を経験し、その度に大きな被害を受け、長期にわたり復旧や復興に向けた対策を余儀なくされてきました。その教訓から、事前に災害に強い国づくりを行い、被害を少なくし、暮らしも経済も速やかに回復させるための取組が進んでいます。番組では、行政や企業・地域が行った防災・減災対策の事例をご紹介するとともに、私たち一人一人が、事前に取り組めることについて深掘り!是非、お聴きください。
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