みんなですすめよう! 災害に強い国づくり
これまで日本は多くの大規模な自然災害を経験し、その度に大きな被害を受け、長期にわたり復旧や復興に向けた対策を余儀なくされてきました。その教訓から、事前に災害に強い国づくりを行い、被害を少なくし、暮らしも経済も速やかに回復させるための取組が進んでいます。番組では、行政や企業・地域が行った防災・減災対策の事例をご紹介するとともに、私たち一人一人が、事前に取り組めることについて深掘り!

- ゲスト
- 内閣官房 国土強靱化推進室
参事官
馬場 裕子
ストリーミング(音声で聴く)
- 放送日
- 令和5年(2023年)4月2日
- 時間
- 17分33秒
- 配信終了予定日
- 令和6年(2024年)4月1日
文字で読む
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青木 - 私たちが暮らす日本は災害が多い国です。特に、近年は気候変動の影響により大雨が降り、亡くなる方が出てしまう災害が毎年のように起こっています。足立さん、「1時間に50ミリメートル以上の雨」は年間で何回くらい降っていると思いますか?ちなみに、「1時間に50ミリメートル以上~80ミリメートル未満の雨量」は「滝のように降る(ゴーゴーと降り続く)」イメージで、気象庁では「非常に激しい雨」と表現するそうです。
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足立 - 月に一度あるか、ないかでしょうか?
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青木 - 気象庁によると、2011年から2020年の10年間の発生件数の平均はなんと年間334回だそうです。また、同じ期間の震度5以上の地震の年間発生件数の平均はおよそ19回だそうです。
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足立 - 大雨も地震も思っていた以上に多いです。334回は、ほぼ毎日ですよね。
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青木 - そうですよね。計算上では、ほぼ毎日になりますね。どこかで起きているということですよね。そして、災害が一たび起こると、津波や火事、家屋の倒壊などで多くの人が亡くなったり、大雨による浸水、土砂崩れなどで家屋が使えなくなったり、電気や水、食料などの供給が止まり生活できなくなったりと、私たちの暮らしが大きなダメージを受けます。
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足立 - 快適な暮らしが一瞬にして失われる恐れもあるわけですから、怖いですよね。
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青木 - 暮らしだけでなく、農地や企業がダメージを受けると、国土が荒廃したり、経済活動が滞り、国際競争力が低下するなど、日本全体が危機に直面する恐れもあります。そのため、私たちは、皆で「災害に強い国づくり」をする必要があるんです。
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足立 - 「災害に強い国づくり」って、具体的にはどういうことですか?
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青木 - ここからはスペシャリストと一緒に深掘りしていきましょう。内閣官房 国土強靱化推進室参事官の馬場裕子さんです。国土強靱化と聞いてもイメージできない方が多いかもしれませんが、国土強靱化とは、つまり「災害に強い国づくり」ということですよね。
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馬場 - はい。国土強靱化とは、地震や津波、台風、活火山の噴火など、こうした自然災害に強い国づくり、地域づくりを目指す取組のことです。日本はこれまで様々な大規模自然災害を経験してきました。そして、そのたびに甚大な被害を受け、長期間にわたり復旧や復興に向けた対策を余儀なくされてきました。
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足立 - 東日本大震災は発生から12年が経ちましたけど、今も復興に向けた取組が続いていますよね。
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馬場 - そうですね。ですから、これまでの大災害を教訓とし、事前に災害に強い国づくりをすることで、命を最大限に守り、被害を少なくし、暮らしも経済も速やかに回復する、そんな“強さとしなやかさ”を備えた国づくり・地域づくりを目指しています。
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青木 - 足立さん、「災害に強い国づくり」の取組と聞いて、誰が、どんなことをすると思いますか?
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足立 - 「国づくり」だから、やっぱり行政が行うんじゃないですか?被害を最小限に防ぐために堤防を作ったり、地盤の弱いところを整備したりだとか。
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青木 - そうですね。行政にもしっかり取り組んでほしいですよね。でも、災害に強い国づくりは行政だけが頑張ればできることではないんですよね、馬場さん。
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馬場 - そのとおりです。真に災害に強い国づくりをするには、企業・地域、そして個人での取組も非常に大切です。また、堤防を作るなどハード面の整備や強化だけでなく、防災情報の発信や防災教育の実施、防災訓練への参加などソフト面の取組も進めていくことが重要なんです。
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青木 - つまり、皆が一丸となってハード面もソフト面も防災・減災対策を講じること、それが災害に強い国づくりにつながるということですよね。
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馬場 - この災害に強い国づくりの取組は、2011年に発生した東日本大震災を受けて制定された「国土強靱化基本法」に基づいて計画され、既に様々な取組が進められています。中には実際に被害を軽減することができた事例もあります。
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足立 - 過去のことから、学んでいるんですね。
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青木 - そこで、ここからは具体的にどのような取組が進められているのか、深掘りしていきます。
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足立 - 災害に強い国づくりの取組として、実際にどのようなことが行われているんですか?
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青木 - ではまず、国や自治体が行った事例をご紹介していきましょう。宮崎県、大分県、熊本県の3県を流れる五ヶ瀬川の事例です。この川の流域は、梅雨や台風による降雨により、雨の量が多い地域で、洪水により、数年ごとに亡くなる方や行方不明になる方が発生している状況でした。そのため、国と自治体では対策を行ったんですよね、馬場さん。
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馬場 - はい。例えば、流域に位置する宮崎県延岡市では、川の底を掘削して広げたり、堤防を築くことで、以前より川の水があふれにくいようにしました。さらに、大雨に備え、電力会社などとも協力しまして、予めダムに貯めていた水を減らすことで、水をより多く蓄えることができる状態にしました。これにより、昨年2022年9月の台風では、同規模の降雨により大規模な被害が発生した2005年の台風と比較し、浸水戸数がおよそ96パーセント減少しました。
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足立 - 96パーセントはすごいですね!対策の効果がよく分かりますね。
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青木 - 最近は、ダムの貯水率がリアルタイムで分かるじゃないですか。天気予報の精度も上がって、大雨が長く降りそうな前は予め、ダムの水を先に減らしておくことが可能になるということですよね。このように事前に防災や減災対策をしておくと、被害そのものが抑えられるため、被害額や回復に掛かる費用を安く抑えることができるんです。
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馬場 - 2019年(令和元年)の台風のときには福島県、宮城県の阿武隈川流域で甚大な浸水被害が発生しました。この際の被害額と現状への回復に掛かる費用はおよそ7,020億円でしたが、被災前に対策していたら、1,300億円ほどの整備費用で被害の発生を抑えられたとの試算が出ています。
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足立 - およそ5分の1に抑えられたかもしれないんですね。事前に備えると、備えないとでは、こんなにも違いがでるんですね。では、災害に強い国づくり、地域ではどんな取組がされているんでしょうか?
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馬場 - はい。2018年に発生した西日本豪雨災害で被害に遭った岡山県倉敷市真備町川辺地域では、被災住民が中心となって「川辺復興プロジェクト あるく」を発足しました。そして、その活動から「防災おやこ手帳」を作り、無料で提供しています。こちらは「二度とこどもたちに怖い思いをさせたくない」「誰にも失う辛さを経験させたくない」という思いから作られたもので、水害からこどもと家族の命を守るために、これだけは知っておいてほしいことが分かりやすく掲載されています。
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足立 - 地域の方々が自ら立ち上がって防災対策を進めているんですね。
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馬場 - また、民間の企業やNPO法人などでも防災対策が積極的に進められています。例えば、ある企業では災害時に自社の体育館を一次避難所や津波避難ビルとして、地域住民に開放することを想定して設備を整備しています。そして有事の際、気兼ねなく避難してもらうために、日頃から食堂や体育館を開放しています。これにより、実際、食堂には地域の高齢者や近隣企業の社員なども通い、地域のコミュニケーションの場になっているそうです。
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足立 - こういう有事のときは地域とのつながりがとても大切だと思うので、そのつながりの場を日頃から提供しているというのは、素敵なことですね。
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馬場 - また、在留外国人が多い地域のコミュニティー・エフエムでは、2019年に上陸した台風をきっかけに、防災・防犯情報を中心に地域の在留外国人に向けた複数言語での情報伝達を開始しています。その放送には、日本語の文章をすぐに外国語に機械翻訳して自動音声で放送するサービスを導入して、刻々と変化する状況に対して外国語でもきちんと情報発信できる体制を整えているそうです。
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足立 - いろいろな企業が、それぞれ自分達にできることを考えて実行しているんですね。
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青木 - ここまで行政、地域、企業などが取り組んでいる防災対策をご紹介してきましたが、では、足立さん、私たち一人一人が防災や減災のために事前にできることと言えば、どんなことがあると思いますか?
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足立 - それこそ、この番組で以前、深掘りしましたよね。「家具や家電の固定」とか。
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青木 - そうですね。他にも「事前にハザードマップを見て避難所や避難経路の確認」自宅で避難する場合も考えて「食料や飲料水の備蓄」そして「携帯トイレも1週間分」は備えておいたほうが安心できると教わりましたね。
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青木 - 馬場さん、この辺りも大事ですね。
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馬場 - そうですね。これができればバッチリなんですが、ただ、あえて付け加えさせていただくなら、水や食品、携帯トイレ以外の備蓄品もしっかりと備えておくことが大事です。例えば、女性の場合は生理用品、赤ちゃんがいるご家庭ならおむつや離乳食、ご高齢の方がいるなら介護用おむつやお薬など、必要なものは個人個人で異なります。そうしたアイテムは他と比べて備蓄の数が少なく、避難所で不足する可能性も想定できます。是非、ご家庭に必要なアイテムを確認して、備蓄を行うようにしてください。
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足立 - 確かに、防災リュックを買って終わりじゃなくて、自分専用にカスタマイズしなくちゃいけないですよね。
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青木 - あと、私もやっていますが、ローリングストックですよね。いざというときに消費期限が切れていて慌てないように、備蓄品を古い方から順に使い、買い足していくローリングストックもしてほしいですね。それから、馬場さん、地域の防災訓練への参加も大切ですよね。
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馬場 - そうですね。ただ、特別なことだけでなく、日々の暮らしの中でできる防災対策がたくさんあるので、是非、そうしたことにも取り組んでいただきたいと思います。例えば、街を散歩しながら、避難場所や避難経路を確認するなど、いざというときのイメージをしたり、家を整理整頓して、安全で避難しやすい家にしておくことも、もしものときに身を守る行動につながります。
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足立 - ただフラッとお散歩していても、頭のどこかに防災のことがあると、いろんなことに気付きそうですよね。街の見え方も違って見えそうだし。
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馬場 - 日本は今後、南海トラフ巨大地震や首都直下地震など、マグニチュード7から9クラスの巨大地震の発生が予想されています。また、大雨、津波、活火山の噴火など自然災害はいつ起こるか予想できません。ですから「いつかやろう」ではなく、「いつも」から「もしも」に備える。日々の生活の中でできることから始めてみてください。春は新しい街で暮らし始める方もいらっしゃると思いますので、まず、街のことを知るところから始めてみるのはいかがでしょうか?私たちと一緒に災害に強い国づくりを実現させていきましょう。
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足立 - 「災害に強い国づくり」と聞くと、私たち、関係あるのかな?と思ったんですが、今日の話を聞いて、私たちにもできることがあることが分かりました。皆さん、水や食品といった、備蓄品を備えている方も多いと思いますが、水や食品、携帯トイレ以外の備蓄品もしっかりと備えておくことが大事!女性の場合は、生理用品、赤ちゃんがいるご家庭ならおむつや離乳食、ご高齢の方がいるなら介護用おむつやお薬など。確かに、これらは備蓄品としては不足しているものもあるんじゃないかと思ったので、改めて気にしたいと思いました。
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青木 - 家族構成によっても違ってきますから、それぞれの家庭で話し合っておきたいですよね。
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足立 - そうですね。備蓄品のカスタマイズをして自分なりに使いやすいように備えておくというのは大事だなと思いました。
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青木 - 私が印象に残ったのは、皆が一丸となってハード面もソフト面も防災・減災対策を講じることです。防災対策や国土強靱化と聞くと、行政の仕事と思って任せっきりなってしまっていた自分もいたんですが、そうではなく、民間企業、そして私たちの日々の暮らしの中でもできることがたくさんあるなと思いました。
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