みんなが主役! 洪水から地域を守る 水防の世界
近年、気候変動などの影響による大雨により、毎年のように大きな災害が起きている日本。本格的な梅雨や台風シーズンを迎える前に、私たち一人ひとり、そして地域住民が中心となって、被害を減らすためにできる対策があります。それが、「水防」。番組では、地域住民により組織された水防団の取組について、活躍事例を交えながら深掘り。また、災害時に役立つ情報満載のハザードマップについてもご紹介します。

- ゲスト
- 国土交通省 水管理・国土保全局
河川環境課 水防企画官
白波瀬 卓哉
ストリーミング(音声で聴く)
- 放送日
- 令和5年(2023年)5月7日
- 時間
- 17分50秒
- 配信終了予定日
- 令和6年(2024年)5月6日
文字で読む
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青木 - 洪水とは、大雨などにより川を流れる水が急に増え、その水が堤防を越えるなどして、大量の水があふれ出ることを言います。今日は、ゴールデンウィーク最終日。家族でお出掛けの車の中で聞いてくださっている方も多いときに洪水の話?しかも、5月は比較的気候が安定していて、過ごしやすい時期なのにと思っている方も少なくないと思います。でも、本格的な梅雨や台風シーズンを迎える前のこの時期に、洪水をどうやったら防ぐことができるかについて知ることは、とても大切なんです。
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足立 - 特に近年は気候変動の影響で大雨が降って、毎年のように大きな災害が発生していますからね。事前に考えることは大切ですよね。
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青木 - 実は、1976年から1985年の10年間で、1時間に50ミリメートル以上の雨が降った回数は、1年平均で、226回だったんです。しかし、2012年から2021年の10年間では平均327回に増えているんです。およそ1.5倍近くになっています。
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足立 - だから、私たちも対応していかないといけないということですよね。
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青木 - 豪雨やゲリラ豪雨、線状降水帯という言葉もよく耳にするようになりましたね。こうした状況や、6月から10月まで梅雨や台風などにより洪水が起きやすい時期が続くという気象的な特性がある上に、日本は川の流れが急で、激しい雨が降ると一気に水の量が増えてしまうという地理的な特性もあります。
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足立 - ということは、洪水を引き起こしやすい要因が揃ってしまっているということですか?
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青木 - そうなんです。しかも、日本では洪水の恐れのある地域に多くの人や資産が集中しているので、国や自治体では様々な治水事業を進め対策をしています。例えば、川の氾濫をできるだけ防ぐためにダムや堤防を作ったり、被害に遭う人を減らすために土地の利用規制や移転の促進、情報発信の充実などハード面もソフト面も、一体で多層的な対策を行っているんです。
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足立 - でもこれって、国や自治体に任せっきりではいけないんですよね。先月「災害に強い国づくり」を深掘りしたときに私たちも対策することが大切だとご紹介しましたよね。
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青木 - そうですね。ダムや堤防など治水施設の整備には莫大な費用と長い年月が必要ですから、まだまだ整備が必要な箇所は全国にたくさんあります。それに、たとえ整備されていても、ダムや堤防などの能力には限界があり、施設では防ぎきれない大洪水が発生する可能性はゼロではありません。ですから、私たちは「大洪水は必ず発生するもの」という意識を持って、対策しなければいけないんです。そこで、重要になってくるのが「水を防ぐ」と書く「水防」です。ここからは国土交通省 水管理・国土保全局 河川環境課の白波瀬卓哉さんと一緒に深掘りしてまいります。
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足立 - 消防はよく聞きますけど、水防は余り馴染みがありませんよね。白波瀬さん、水防とはどういうことなんでしょうか?
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白波瀬 - 水防とは、「みず」を「ふせぐ」と書いて、「すいぼう」と呼びますが、洪水のときや洪水の恐れがあるときに、地域に住んでいる人々が中心となって、水があふれないように堤防に土のうを積んだり、住民に注意を呼び掛けたり、避難を支援することで、水害による人命や財産への被害を防止・軽減する取組のことです。
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足立 - 地域住民の方々が中心となって行う洪水対策ということですね。
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青木 - 簡潔に説明するとそうなんですが、国や地方自治体も、気象や河川に関する情報、水防で使われる資材や器材の提供などを通じて住民の活動を支援しているんですよね。
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白波瀬 - はい。国や地方自治体も水防活動に取り組む住民や企業の皆さんを支援しながら、皆で一体となって「水防」に取り組んでいます。
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青木 - 水防活動は大雨が降っているときに、主に川の近くで行われることが多いので、人目に付きにくく、さらに、その効果も分かりにくいと言われていますが、実は、地域の安全のために重要な役割を担っているんです。そして、国や自治体などが行う治水事業と、住民が中心となる水防活動は、言わば車の両輪、どちらか一方が欠けてもいけない、重要なものなんです。
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足立 - そうは言っても、水防活動って、堤防に土のうを積んだりするんですよね?ただ積めば良いというものでもなさそうだし、重そうだし、誰にでもできる活動ではない気がします。
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青木 - そこで知っておいていただきたいのが「水防団」の存在です。
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足立 - 水防団、聞いたことないですね。どんな活動をしているのでしょうか?
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青木 - そうですよね。ここからは、水防対策の要、地域を守る我らがヒーロー、ヒロインと言っても過言ではない、水防団を深掘りします。
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足立 - 白波瀬さん、早速ですが、水防団はどういった組織なんですか?
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白波瀬 - はい。水防団は地域の住民の方々によって作られている組織で、洪水で川から水があふれそうになったとき、堤防に土のうを積んだり、いざというときには、危なくなった地域の方々の避難誘導や救助活動などを行ったりします。
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青木 - 「自らの地域は自らの手で守る」そうした思いの下に集まった住民で構成され、その団員数は全国でおよそ80万人、水防団の数は2,000以上に上ります。その多くは消防団との兼務ですが、長年に渡り水害との戦いの歴史がある地域では、消防団とは別に専任の水防団が70団ほどあり活動しています。例えば、岐阜県の木曽川、長良川、揖斐川の流域や、大阪府の淀川流域では、特に多くの専任の水防団が組織され活動しています。こうした水防団では、先輩から後輩へ脈々と水防の文化が継承されているそうです。
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白波瀬 - はい。ところが、近年は全国的に水防団の団員が高齢化すると共に減少傾向にあり、地域の水防力の低下が心配されています。水防団員の多くは、普段は会社勤めをされている方も多く、近年は団員の6割ほどがサラリーマンの方です。ですから、いざというときに仕事の都合が付かず対応できないこともあるそうです。
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青木 - そうした課題を抱えながらも水防団の方々の活躍は素晴らしいそうです。ここでは実際に青森県北津軽郡の鶴田町消防団が行った水防活動の事例をご紹介します。昨年、8月9日未明から青森県全域を襲った豪雨により岩木川の水位が上昇し、鶴田町消防団の団員は各所で土のう積みなどの水防活動を行いました。この日、朝7時から夜9時までの間に200人を超える団員が出動し、1,000を超える土のうを積んだそうです。
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足立 - 想像を超える数ですね。それで無事に水防の役目を果たしたということですね。
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青木 - そうなんですが、この話には続きがあるんです。夜9時過ぎになると雨が弱まってきたため、団員には一時待機の命令が下ったそうです。朝から晩まで活動して疲れもピークに達していた頃、一時待機の命令には緊張も緩んだことと思います。ところが、その矢先、鶴田町の野木地区の堤防に、水があふれそうな箇所があるとの一報が入ったため、再び地元の団員20名が出動。土のうを200袋ほど使用し、約15メートルにわたって三段積みにして、水があふれるのを防いだそうです。その作業時間はわずか30分ほど。水位はあと15センチメートルほどで土のうを超えてしまうところまで上昇したそうで、この積み上げた土のうがなければ、鶴田町だけでなく、隣接する弘前市や、つがる市まで影響が及んでいたと推察されるそうです。
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足立 - 間一髪で被害が拡大するのを防いだということですね!
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青木 - 鶴田町消防団では日頃から団員全員が土のうによる水防活動の訓練を行っていて、鍛錬された人材が多く、このときに招集された団員20名は水防の精鋭団員だったそうです。
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足立 - カッコイイですね。
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青木 - この方々がいなかったら、被害が大きく広がっていた可能性がありますからね。
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足立 - 雨が降る夜の作業で視界も足場も悪い中、重たい土のうを運んで積む作業は、一歩間違えれば団員に危険が及ぶかもしれないですよね。それでも、自分たちの地域を自分たちで守るという思いで活動したというお話を伺うと、団員の方々には本当に感謝しかないですね。地域の英雄だなと思いますね。ちなみに、先ほど、水防団員は減っているとおっしゃっていましたよね。新たに募集はしているんですか?白波瀬さん。
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白波瀬 - はい。地域を守るためには、住民の皆さんのご協力が必要です。水防活動は、地域に貢献できる立派な仕事であり、特に若い方の力が必要です。水防団員は各地で募集しており、手当なども支給されます。是非、お住まいの市町村に問い合わせてみてください。
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青木 - そして足立さん水害に備えて、私たちにもできることがありますよね。
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足立 - そうですね。私たちも洪水から身を守るためには、日頃からハザードマップを見て避難経路などを確認しておく必要があるんですよね。
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青木 - その通りです。ハザードマップとは、堤防が決壊した場合に浸水する恐れのある範囲や避難する場所、医療機関の連絡先など、水害時に役立つ情報が詰め込まれている地図です。
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足立 - この番組で何度もお伝えしているので、リスナーの皆さんもきっとハザードマップを見たよ!という方もいるんじゃないですかね。
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青木 - 2021年に行なったアンケート調査によると、ハザードマップを見たことがある人は、およそ7割でした。多くの方が避難に備えるためにハザードマップを見たということです。ところが残りの3割の方は、「これまで水害の危険が迫っていないから」や「水害の危険が無いと思っている」などの理由からハザードマップを見ていない現状があるんです。白波瀬さん、残りの3割の方にも見てもらいたいですよね。
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白波瀬 - はい。これまで水害が起こっていない地域であっても、近年は異常気象により想定外の大雨が降る可能性があります。そうすれば、まさかの事態が起こるかもしれません。ハザードマップは、命を守るための情報が満載です。水害を「ひとごと」とは考えず、お住まいの地域にどのような危険があるのか、いつ、どのように逃げるかを前もって考えておくことがとても重要です。
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青木 - ハザードマップは各市町村のホームページで確認できますし、国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」でも確認できます。
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白波瀬 - 北海道は6月、その他の都府県は5月が水防月間です。梅雨や台風など洪水が起きやすい時期に備え、日頃からハザードマップを見てお住まいの地域がどんな特性のある場所なのかを知り、もしものときの避難経路や避難場所を確認するなど、命を守るための意識を高めてください。また、ご高齢の方や体の不自由な方がいる場合は、早めに避難するなど、ご家庭に合った避難計画を家族で話し合ってみてください。
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足立 - 今日の話を聞いて、「水防団」の人たちがすごいってことが印象に残りました。「水防団」というのは、地域の住民の方々によって作られている組織で、洪水で川の水があふれそうになったとき、堤防に土のうを積んだり、いざというときには、危なくなった地域の方々の避難誘導や救助活動などを行ったりする人たちです。今、「水防団」の団員が減少気味だと聞いたので、気になった方は、是非、「水防団」に入ってほしいなと思いました。
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青木 - 地域のヒーロー&ヒロインですよね。私は、改めてになりますがハザードマップです。ハザードマップを見たことがない人が、まだ3割いらっしゃるとのことで、ハザードマップは、堤防が決壊した場合に浸水する恐れのある範囲や避難する場所、医療機関の連絡先、水害時に役立つ情報が詰め込まれていますから、是非、見てほしいです。
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