地方が日本の主役になる! デジタル田園都市国家構想
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デジタルの力で地方活性化を目指す「デジタル田園都市国家構想」。地方には、豊かな自然や多様な文化があり魅力にあふれる一方、人口減少、加速する高齢化など多くの課題が。番組では、母子健康手帳をスマホアプリ化し遠方の医療機関と相談できるシステムや、AI活用の公共交通ネットワークの構築など、デジタルの力を利用した各地の課題解決事例をご紹介。また、東京圏への一極集中解消を目指し、地方での子育てや転職なき移住を促す支援策を深掘り!

- ゲスト
内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局
審議官
布施田 英生
ストリーミング(音声で聴く)
- 放送日
- 令和5年(2023年)5月14日
- 再生時間
- 17分17秒
- 配信終了予定日
- 令和6年(2024年)5月13日
文字で読む
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青木 - 「デジタル田園都市国家構想」、以前、この番組でも触れたことがありますが、足立さん、覚えていますか?
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足立 - もちろんです!デジタルの力で地方が抱える課題の解決を目指す、確かそんな構想でしたよね。
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青木 - 正解です!この構想は2021年から始動しているんですが、まだ、余り知られていないようなんです。
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足立 - 確かに、ちょっと難しそうですもんね。
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青木 - 改めて、簡潔にご説明すると、デジタル田園都市国家構想とは、デジタル技術の活用によって、地域の個性を生かしながら地方の課題解決や魅力向上を実現し、「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」を目指す構想です。
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足立 - 地方が抱える課題ってたくさんありますよね。この番組でも、度々話題に上るので、私もいろいろ考えるようになったんです。それで思ったんですけど、その課題を引き起こしている要因は主に「これ」につきるなって思うんです!
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青木 - それは何ですか?
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足立 - ズバリ!人がいない!荒れた農地や空き家が増えているのも、地方の人口が減っているからですよね。
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青木 - そうですね。地方が抱える大きな課題の一つは、正に、人口の減少。日本全体で見ても少子高齢社会なのに、地方は若者が東京など大都市圏にどんどん流出してしまい、より高齢化が加速しています。そして、働ける世代が減り後継者不足などで産業も疲弊し、中には廃業する企業もあります。廃業する企業の中には、後継者不足のため、黒字なのに、廃業するといった企業もあります。働く場所も減り若者はますます都市に流出してしまいます。
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足立 - 働く場所がなければ人口が減るのは当然の流れですよね。
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青木 - そうなんです。でも地方には、豊かな自然や歴史、おいしい食べ物や多様な文化などがあり魅力にあふれていて、これからの地域の活性化に期待がもてる場所なんです。さらに、日本の農林水産業を支えてくれている大事なところでもあります。こういった中で、過疎化や東京圏への一極集中などの社会の課題を、デジタル技術の活用により解決するだけでなく、地方を今よりもっと魅力的にして、活性化を加速していこうというのが「デジタル田園都市国家構想」なんです!
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足立 - なるほど。具体的には、どんなことをしているんですか?
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青木 - ここからはスペシャリストと一緒に深掘りしていきましょう。内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局審議官布施田英生さんです。
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足立 - 布施田さん、デジタル田園都市国家構想では、デジタルの力で地方を活性化して「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」を目指すということですが、具体的にはどんなことをしているんですか?
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布施田 - まず、地方の社会課題の解決や地方の魅力を向上させるために、重要な要素として四つの取組を進めています。一つ目は「地方に仕事をつくる」二つ目は「人の流れをつくる」三つ目は「結婚・出産・子育ての希望をかなえる」四つ目は「魅力的な地域をつくる」です。
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足立 - 私の場合「結婚・出産・子育て」に関することは身近なので特に気になっちゃいますね。
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青木 - 布施田さん、既に、これらの重点ポイントを押さえたデジタル技術を活用した事例があるんですよね。
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布施田 - はい。例えば、宮城県丸森町では母子健康手帳をスマートフォンのアプリ化して、保護者に必要な情報を適したタイミングで提供したり、保健師さんなどにオンラインで相談できるシステムを構築して、妊娠、出産、子育てをしっかり支援しています。
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青木 - この町には産婦人科や小児科のある医療機関がなく、ちょっとした通院でも長い移動時間をかけなければ診療してもらえない状況でした。また、出産直後は複数の予防接種を受けなければなりませんが、そうしたスケジュールの管理がしやすくなるなど、このアプリが医療サービスの向上に役立っているんです。
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布施田 - はい。さらに、保護者と自治体がデータを共有することで、子育ての地域のイベント情報や、自治体からの支援金などの情報も提供されますので、保護者にとっても、自治体にとっても役立っています。
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青木 - また、最近はネットにこどもの健康や子育てに関する情報がたくさんあって、その中から正しい知識や確かな情報を取捨選択するのは難しいですよね。でも、母子健康手帳アプリでは町が主体となって正確で信用性の高い情報の発信を行うので、安心して活用できるそうです。
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足立 - 何より、オンライン上で、直接保健師さんなどに相談できるシステムは助かりますよね。妊娠中や子育て中は不安なことがたくさんあると思うんですけど、医療施設が遠いと、不安やリスクを抱えながらも様子見してしまう場合もあると思うんです。だから、オンラインなら必要に応じて相談できますから安心だなと思いました。
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青木 - また、四つの取組の一つ「魅力的な地域をつくる」に関しても、デジタルを活用している好事例もあります。布施田さん、オンデマンド交通というものは高齢者や観光客などにとって便利なシステムですよね。
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布施田 - はい。オンデマンド交通とは、事前に予約することで希望の場所で乗り降りできる交通機関のことです。最近では、複数のお客さんが乗り合うタイプが多く、アプリなどによる予約受付や、AIによる効率的な配車ができる持続可能な公共交通ネットワークとして注目され、既に多くの地域で活用されています。
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足立 - 自然豊かで魅力的な地域でも交通機関がないと観光したくても「行くのどうしようかな」と思いがちですけど、こうした乗り合い型の交通ネットワークがあると、観光客の方は助かりますね。それこそ、地方では車がないと移動が難しいじゃないですか。高齢者が免許返納しづらいという課題がありますけど、こうした課題の解決にもつながりますよね。
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青木 - そうですよね。そして、足立さん、昨年、「Digi田甲子園」を紹介したこと、覚えていますか?デジタルを活用して地方の課題を解決して魅力を向上する事例を集め、その中から優れた取組を表彰するプロジェクトでした。「夏のDigi田甲子園」は自治体を対象として開催され、「冬のDigi田甲子園」は民間企業や団体を対象として開催され好事例がたくさん集まりました。
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足立 - 「夏のDigi田甲子園」を取り上げたときは、まだ募集中でしたよね?どんな事例が表彰されたんですか?
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青木 - 実は、先ほどご紹介した母子健康手帳アプリは、「夏のDigi田甲子園」で準優勝した事例なんですよ。
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布施田 - はい。そして「冬のDigi田甲子園」は、損害保険会社が福井県で実施した、デジタル技術を活用した新たな交通安全対策が優勝しました。これは、ドライバーが踏み込むアクセルや急ブレーキなど運転データを集めて、危険なエリアを特定したマップを作り提供することで、交通事故を未然に防ぐことに貢献しています。他にも様々な地域の課題解決の優れた事例が「デジタル田園都市国家構想」の公式ホームページで紹介されていますので、是非、ご覧ください。
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青木 - きっと参考になる事例を見付けることができると思います。さて、ここまでは、デジタル田園都市国家構想を実現するためのデジタルを活用した事例をご紹介しましたが、ここからは、東京圏へ人が集まり過ぎている課題を解決するための支援策を深掘りしていきます。新型コロナウイルスの影響でテレワークが進んだことや地方の魅力が再認識されていることなどを背景にして地方移住への関心が高まっています。内閣府が行った前回の調査によりますと、東京圏に住んでいる人のうち、地方移住へ関心を持つ層は全年齢層で増加していまして、特に20代ではその傾向が強かったんです。
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足立 - 働き方が柔軟になって、海や山の近くや田舎で仕事や子育てがしたいとなったときに、絶対東京に住まないと働けないってことでもなくなりましたよね。企業の地方移転や、地方にサテライトオフィスを作るという話をよく聞くようになりましたね。
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青木 - そうですね。デジタル田園都市国家構想では、地方に仕事や人の流れを作り、さらに、子育て環境も改善するなど、東京圏に人が集まり過ぎる課題を解決するための支援策を打ち出しているんですよね、布施田さん。
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布施田 - はい。テレワークやサテライトオフィスなど、東京圏ではなくても、地方から仕事ができる環境作りを支援しています。それとともに、東京圏の企業が地方に移転する際の支援も「転職なき移住」として支援しています。また、一定の条件がありますが、東京圏から地方へ移住して起業や仕事を行うなど地域の活性化に貢献される場合には支援金を支給しています。
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足立 - いくらぐらい支援してもらえるんですか?
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布施田 - 移住して地域の中小企業などに就職したり、テレワークで移住前の業務を継続する場合など要件がありますが、要件を満たして移住先の自治体に申請すれば、移住支援金として、世帯なら最大100万円、単身者なら最大60万円支給されます。
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足立 - 思っていたより支給してもらえるんですね。
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青木 - これは知っているか、知らないかで大きな違いですよね。でも、足立さん、もっとあるんですよ。この支援事業、今年度はさらに拡充されていまして、なんと、18歳未満のこどもと一緒に移住する場合には、今まではこども一人当たり最大30万円だったのですが、これからは、100万円が加算されるようになるんです。つまり、こどもが二人いる世帯には最大200万円が加算されるので、最大300万円も支給されるんです。
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足立 - 移住するだけですよね?
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布施田 - また、これに加えて、移住して、地域の課題解決に役立つ社会的事業を起業する場合は別途、起業支援金として最大200万円が支給されます。
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足立 - 地方の魅力や資源を活用して起業するということは、その地域に雇用や賑わいを生み地域を活性化させることができますよね。
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青木 - この支援事業は、正に、デジタル田園都市国家構想の重点ポイントなんです。
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布施田 - はい。地方への移住を支援する事業には自治体ごとの取組もありますので、お考えになっている移転先の自治体に問い合わせていただくようお願いします。そして、企業の方は、地方で地方創生につながる取組を検討される際には「企業版ふるさと納税」をご活用ください。デジタル田園都市国家構想を推進する取組は、今回ご紹介した取組以外にも多岐にわたります。まずは、デジタル田園都市国家構想とはどのようなものなのか、是非、公式ホームページをご覧になってください。これからは地方が日本の主役になる、そんな未来が始まっています!
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足立 - 今日の話を聞いて印象に残ったのは、移住支援金が、想像以上だったことです。移住して、地域の中小企業などに就職したり、テレワークで移住前の業務を継続する場合などの要件を満たして移住先の自治体に申請すれば、移住支援金として、世帯なら最大100万円、単身者なら最大60万円支給。さらに、18歳未満のこどもと一緒に移住する場合には、これからは、100万円が加算されるというのは、すごいなと思いました。移住するだけで、お金が貰える時代なんてあるんだと思いました。
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青木 - 私が印象に残ったのは、社会課題の解決や地方の魅力を向上させるために、重要な要素の四つの取組です。布施田さんがお話していましたよね。一つ目は「地方に仕事をつくる」二つ目は「人の流れをつくる」三つ目は「結婚・出産・子育ての希望をかなえる」四つ目は「魅力的な地域をつくる」色んな取組がありますけれど、「デジタル田園都市国家構想」って何だろう?と思っている方は、この四つの取組を進めていることを、まず覚えていただきたいです。