災害への備えは、特別なことではありません。いつもの暮らしの中での少しの準備、家庭での決めごと、地域での助け合い、そして職場や学校での備えといった日々の取り組みが、いざという時にあなたと周りの人々の命を守る大きな力になります。
1 自分・家族とやること
家族の取り決め
家族で事前に決めておくこと
【集合場所】
いろいろな災害、発生時間などを想定し、優先順位をつけて、3箇所を決める。家族がばらばらにならないように、全員が待ち合わせの場所(避難場所)を確認して、連絡手段を複数持つ。避難所の伝言板で家族を探すため、家族の顔写真を用意しておく。
【非常持ち出し品の置き場所】
いつでも持ち出せるように、置き場所を決める。
身近な避難場所を知っておこう
自宅だけでなく、会社で仕事中、商店街にいる時など、よくいる場所の近くの避難場所と安全なルートを確認しておく。
こどもの引渡しルールの共有
- こどもを預けている場合、情報が伝えられない、迎えができないことを想定して事前にルールを決めておく。
- 安全確認できない場合は引渡しをしない。保護者は一緒に園、学校にいるか避難所に同行する。
- 園、学校から避難する場合の避難所を決めておく。避難訓練等の際に一緒に避難行動して確認しておく。
要配慮者のための日頃からの備え
要配慮者(高齢者、肢体不自由者、乳幼児、妊産婦、傷病者等)を想定した備えを日頃からしておく。
- 家具転倒防止、ガラスの飛散防止などの災害発生時の安全確保
- 周囲に協力を求める、安否確認方法を決めておくなどの避難場所と避難方法の確認
- 入手困難になることを想定した非常持ち出し品や薬など、避難所生活・介助生活における最低限必要な物の確保
地震保険を検討する
地震、噴火、津波による建物や家財の損害による災害後の生活を守る経済的備えとして地震保険の加入を検討する。
災害用品の備え
非常持ち出し袋
避難する際の物資を納めた非常用持ち出し袋は、自分にとって必要な物を考えて準備する。それらをリュックなどに入れ、玄関の近くや寝室、車の中、物置などに配置して、家の倒壊も想定して備える。持ち出せる量は、成年男性で約15Kg、成年女性で約10Kg、こども・高齢者で約6Kgを想定しておく。
貴重品の備え
災害時に身元が確認できる、運転免許証、マイナンバーカード、障害者手帳、母子健康手帳等、身分証明書は常に携帯。ふだんは非常持ち出し品と別に保管。保管場所は家族で共有し、いざという時、家族の誰もがすぐに持ち出せるようにする。災害時の証書類の焼失に備え、銀行・保険・印鑑や家の証書は、口座番号や印鑑の種類等のリストを紙に作成し携帯。
常時携行する災害用品
外出中の災害に備え、必要最小限の防災グッズを用意してバッグ・鞄に入れる。携帯電話、予備バッテリー、LEDライト、非常時の連絡先、マイナンバーカード等の身分証明書。ふだん使いのマスク、ティッシュ、ハンカチ、筆記用具等は有用。女性は生理用品等も。
常用薬・お薬手帳の備え
お薬手帳やマイナ保険証の使用により、災害時でも常用薬や病気の情報が正確に伝わり、適切な治療が受けられる。
注:令和6年(2024年)12月2日以降、従来の健康保険証は新たに発行されなくなりました。マイナ保険証を保有しないかたには、従来の健康保険証の有効期限内に「資格確認書」が無償で申請によらず交付されています。
災害用品に感染症対策も加える
非常用持ち出し袋に感染症対策として、マスク、体温計、アルコール消毒液、手袋を用意する。
女性の災害用品
- 生理用品、鏡・ブラシ、清浄綿、化粧品
- 携帯トイレ、携帯用ビデ
- 被災地での洗濯干しの際に男性の目が気にならないカップインタンクトップ
- 毎日着替えができない時、同じ服を隠せる割烹着
- 着替えの際に目隠しになる自転車用ポンチョ
こどものための備え
幼児の備えとして、食事は栄養面を考えて、大人用の非常食や災害食を取り分けてもいいが、市販の非常食や離乳食を用意しておけば安心。また、ビタミンが不足すると口内炎になりやすいので、野菜ジュースや、飲みやすい粉末などのビタミン剤も用意。歩けるようになったこどものために、靴や着替え、防寒具は必須。避難する際の抱っこ紐もあれば歩きやすくなる。
妊産婦・乳幼児の災害用品
- 母子健康手帳・マイナ保険証(有効期限内の健康保険証又は資格確認書でも可)・お薬手帳・妊産婦は診察券
- 着替え・靴・防寒具・抱っこ紐(両手が使えて便利)
- 非常食・ビタミン剤等
- 清浄綿・オムツ・お尻ふき・ガーゼ(汚れ落とし・乳幼児のお世話等)
- 授乳用ケープ・ミルクセット・離乳食(大人の食事を取り分けても可)
- スプーン・紙コップ・キッチン用ラップ(コップで飲ませる方法も)
高齢者の災害用品
- 常用薬・お薬手帳、必要な補助器具(補聴器他)
- 入れ歯・洗浄剤、着替え、おむつ
- 老眼鏡(古い眼鏡を捨てずに再利用)
- 下着を汚して替えがない時に役立つ尿漏れパッド
- コンパクトで持ち運びやすく、疲れた時に座れる折りたたみ椅子
心のケアとしての災害用品
ぎすぎすしがちな避難生活を和ませる工夫も必要。一緒に避難生活をしているお互いを気遣い配慮しあう。
タバコ、化粧品等の嗜好品や、コロン、エッセンシャルオイルでの匂い対策、おもちゃやお菓子を楽しむ等、なるべく普段の生活に近い環境を確保することが効果的。
備蓄品を確認して備える
食料品の日常備蓄
日頃利用している食料品や生活必需品を少し多めに購入しておく「日常備蓄(ローリングストック)」の視点を持つ。常備品は、いざという時も大切な食料になる。賞味期限の確認もしておく。
常温保存ができる野菜、保存食にもなる乾燥野菜、家庭菜園等も役立つ。
トイレの備え
- 【携帯トイレ(保管用密閉袋・ポリ袋)】5から6回×人数×7日分
- 【トイレットペーパー】5から6回×人数分×7日分(家族4人で8ロール(30mタイプ))程度
- 【ランタン型ライト】周囲を明るくして安全な空間確保
- 【ウェットティッシュ】水がなくても清潔さを保つ
- 【消毒液】感染症対策のために手を清潔に
- 【除菌洗浄液】こまめにトイレを拭き掃除
- 【消臭剤】スプレータイプを多めに
怪我への備え
- 【出血・骨折・やけど・打撲・捻挫への応急手当】清浄綿、救急絆創膏、サージカルテープ、三角巾、包帯、ガーゼ、脱脂綿、消毒液
- 【災害時の混乱防止】応急処置ハンドブック、傷病者情報伝達カード
- 【衛生環境確保・感染症防止】手指消毒液、ゴム手袋、マスク
非常用に役立つキッチングッズ
- 【カセットコンロ・ボンベ】ライフライン復旧前でも温かい食事可
- 【キッチンばさみ・ピーラー】まな板なしで調理可
- 【ポリ袋】手袋にもなり、袋の中で調理可
- 【ラップ】お皿に巻けば水節約
- 【クーラーボックス】保冷剤を入れて冷蔵庫に
- 【キッチンペーパー】食器をふき取って洗い物を楽に
- 【アルミホイル】フライパンを汚さずに調理可能に
- 【水筒・保温タンブラー】余った湯の保存に
在宅避難のための生活必需品
3日から1週間分を目処に水・食糧を備蓄するが、ふだんの買い物から分量を意識する。寒さ・暑さへの備え、調理器具、食品用ラップやウェットティッシュなどの多用途に使える便利グッズを始め、ラジオや眼鏡や生理用品などのふだん使っている、無くなると困るものも意識しておく。
在宅避難のための生活インフラ
平時からガス・電気・水道が止まっている場合の代替として、備蓄水、蓄電・発電機、カセットコンロ等を準備して、排水設備の使用法や近所の給水拠点の確認をしておく。
家具等の転倒防止の備え
家具の転倒防止
居住形態(マンション・戸建て・持ち家・賃貸等)や家具の種類に合わせて様々な固定方法がある。ポール式やL字金具を使用しなくても、収納箱等の身近な素材の活用、複数固定法を組み合わせて効果的な転倒防止もできる。
- 天井との隙間は2㎝以内に
- 粘着マットで固定
- 転倒防止板を家具の下に敷く
- テレビとテレビ台は転倒防止ベルトとキャスター下皿で固定
リビング・キッチンの転倒防止
- 電子レンジは粘着マットや転倒防止ベルトで固定。レンジ台はL字型金具で壁に固定
- 食器棚は避難経路をふさがないように設置。L字型金具で壁に固定。ガラスに飛散防止フィルムを貼る
- 引き出しストッパーを付ける
- 扉に開放防止器具を付ける
- 冷蔵庫は避難経路をふさがないように設置。転倒防止ベルトで固定
寝室の転倒防止
- ベッドの脚に滑り止め
- 窓ガラスに飛散防止フィルムを貼る
- キャスター下皿で固定
- 積み重ねボックスは上下と壁を連結金具で固定
- タンスは避難経路をふさがないように設置。突っ張り棒で固定。転倒防止板を敷く
ペットの備え
ペットの社会化のしつけ
災害時の避難先で他の避難者に迷惑をかけない基本的なペットのしつけが必要。避難所で皆に愛されてトラブルになりにくくなり、もし迷子になっても、声をかけてもらいやすくなり発見されやすくなる。
- 無駄吠えをしない
- 他の人やペットを怖がらない
- 待て・おすわりができる
- トイレは決まった場所でする
- ケージ(クレート)に慣れている
ペットの最低限必要な災害用品
【数日分の食料と水(最低5日分)】食べ慣れているフード、水、食器
【飼育用品】ペットシーツ、キャリーバッグ、ケージ(クレート)、トイレ用品、排泄物の処理道具、予備の首輪、リード
【医療品関係】療法食、薬、ワクチン接種状況などの情報
【迷子防止対策】首輪、迷子札、マイクロチップ(必ず情報登録を行うこと)、鑑札、狂犬病予防法注射済票
2 地域の人とやること
地域と連携
近隣との日頃の交流・訓練
けが人の搬送、高齢者に代わっての買い物・物資運搬、帰宅困難による留守家庭のこどもの世話等。
日頃から災害の際の助け合いを意識し住民同士の交流をする。防災訓練にも積極的に参加する。
近隣の要配慮者を把握
災害時には近隣の住民同士の協力が必要。日頃からあいさつを交わして、ご近所との付き合いの輪を広げておく。
また、要配慮者(高齢者や障がいのある人、乳幼児、妊婦、外国人など)は情報把握、避難などが迅速にできない可能性も。こうした人々が近所にいるかを日頃から把握して、いざという時は民生委員などと協力して要配慮者を支援する。
近所の助けを必要とする人を知る
避難所・避難場所や地域で避難時に助けを必要とする人の情報、地すべり・がけ崩れ・土石流等の土砂災害や洪水・浸水・高潮等の水害の危険性のある場所を、浸水予想区域図等のハザードマップを使って日頃から確認しておく。
こどもの保護
災害時に高まるこどもへの暴力などのリスクに早期に対応する相談・支援体制をつくる。
視覚障害者のかたのための備え
視覚障害のかたや自分だけでの避難が困難なかたを想定した備えを日頃からしておく。
- 慣れた道の点字ブロックや誘導設備が損壊した場合に備えて、事前に複数経路を確認する。被災時は家族や周囲の人の誘導もお願いする。
- テレビ、電話、ラジオ、インターネットなどの手段が使えない時に備えて、地域のかたに事前に様子を見に来てもらうように協力をお願いする。被災時は視覚障害があることを告げて周囲の人に状況を聞く。
- 笛、防犯用ブザーなど、家屋に閉じ込められた時に外にいる人に知らせて助けを求める方法を準備しておく。
コミュニケーションが円滑に取れない人のための備え
コミュニケーションが円滑に取れず、要望が伝えられない人(聴覚障害のかた、知的障害のかた、児童、外国人等)への対応策として事前に、言語カード、緊急連絡カード、支援内容を記載したヘルプカードなどを作成し、必要な事柄を整理して日頃から備えておく。
地元企業・マンション等の地域との連携
地域防災機能を持つには
- どのような役割を持つかの確認
- 共用スペースの整備
- セキュリティの確保
- 継続的な管理と対策の評価体制の整備
- 内外のコミュニケーション促進
が必要となる。
3 職場・学校の人とやること
災害用品の備え
企業備蓄の注意点
企業備蓄では、管理と更新の仕組みが継続的・効果的に機能するように配慮する。
- ①選ぶ基準(目的・物・量)
- ②配置場所(普段レイアウトに配慮)
- ③配布・使用方法(誰が、どの様に)
- ④期限切れの処理(消費・廃棄)
職場や学校に泊まるための準備
職場や学校が自宅から離れている場合に備え約3日分を目処に準備しておく。地震に対して安全な場所(教室・仮眠室・ホール・会議室)を確認し、家具類の転倒防止対策もしておく。
【備え用品】飲料水(1人あたり1日3L)・食料(1人あたり1日3食)・毛布や保湿シート(1人1枚)・簡易トイレ・衛生用品・ビニールシート等の敷物・簡易ラジオ・懐中電灯・乾電池・救急医薬品
転倒・落下防止への備え
オフィスの転倒防止
- 【出入り口】避難経路をふさがないように、出入口の近くに物を置かない。
- 【デスクまわり】パソコンは、粘着マットやストラップ式でデスクに固定し、デスク同士も連結金具で固定する。
- 【壁面収納】L型金具で壁に固定。引き出し・扉をラッチ付きにする。上下で分かれている物は連結金具でつなぐ。上に落下しやすい物をのせない。
- 【コピー機】動かさないときはアジャスターで固定し、ベルト式器具で壁につなぐ。
- 【パーテーション】転倒しにくい「H型」または「コの字型」にレイアウトし、床に固定する。
- 【掲示板】落下しないようにL型金具で固定する。
- 【窓ガラス】飛散防止フィルムを貼る。ガラスの前に倒れやすい物を置かない。(東京防災)
什器・備品の転倒・落下防止
オフィスや倉庫内での什器や備品、物品の転倒・落下への対策。地震でけがをした人の多くが、什器、備品類の転倒・落下・移動によって被害を受けている。また、避難通路、出入口周辺に転倒、移動しやすい家具類を置くと、避難経路を塞いだり、つまずいてケガをしたり、避難の妨げになることがある。このように災害時のけがや避難遅れに直結するため、什器や備品、物品の転倒・落下対策は十分に行う必要がある。
