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HIV・ハンセン病に対する偏見・差別をなくそう
私たちはだれでも、自由に、人間らしく生きる権利「人権」を持っています。しかし、HIV感染者やハンセン病の患者・元患者の方々は、誤った知識や偏見などから人権が侵害されてしまうことがあります。偏見・差別をなくすためには、一人一人がHIVやハンセン病などに対する正しい知識を持ち、人権を尊重する心を持つことが大切です。
HIVやハンセン病を理由とした人権侵害が起こっています

HIVやハンセン病は、人から人にうつる感染症です。しかし、日常生活における接触で感染することはほとんどありません。ハンセン病は感染したとしても、発病することは極めてまれですし、万一、発病しても早期発見と適切な治療で確実に治療することができます。また、HIVは感染しても、すぐにエイズを発症するわけではありません。最近は治療薬の開発が進み、感染を早期発見し、早期治療することでエイズの発症を抑えることができるようになっています。
このようにHIVやハンセン病は、治療が可能な病気ですが、今なお、誤った知識を持っている方が多く、HIV感染者やハンセン病の患者・元患者の方々に対する偏見や差別が、いまだに解消されていない状況にあります。
例えば、2003年(平成15年)、ハンセン病療養所の入所者であることを理由に、ホテルの宿泊を断られるという事件が起こりました。この報道を受けて、ハンセン病療養所の入所者がいわれのない非難や中傷を全国の人たちから受けました。また、HIVの感染者に対しても、HIVに感染していることを理由に仕事を解雇されたり、医療機関で診療を拒否されたりするなどの人権侵害が起こっています。
こうしたHIVやハンセン病に対する偏見や差別をなくすためには、一人一人が、HIVやハンセン病について正しい知識を持つこと、また、患者・元患者、その家族などが置かれた立場を理解することが必要です。
ハンセン病の悲しい歴史を知っていますか
ハンセン病は古くから知られている病気で、1873年(明治6年)に、ノルウェーのハンセン医師によって、病の原因である「らい菌」(感染菌)が発見されたため、ハンセン病と呼ばれています。日本においては、1907年(明治40年)、患者を収容する目的で「癩予防ニ関スル件」という法律が制定され、その後、1931年(昭和6年)「癩予防法」の制定によって、ハンセン病患者を強制的に療養所に収容し、一般社会から隔離するという「隔離政策」が行われるようになりました。この政策は患者の救済についても目的としていましたが、人々の間には、ハンセン病は伝染しやすい、というイメージが広まり、偏見を強めることとなったと言われています。
よくある誤解・思い込み | 正しい知識 |
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その後、ハンセン病の研究が進み、らい菌は、感染力が非常に弱く、たとえ感染しても発病することはまれであることが明らかになりました。また、1940年(昭和15年)代以降は、治療法が確立され、早期に発見し、適切な治療を行えば、治すことができる病気となりました。
ところが、ハンセン病が感染症であり適切な治療を行えば治ることが分かっても、なお隔離政策が続いたことなどから、それまでの誤解が払拭されず、「感染」というイメージから、ハンセン病患者やその家族は偏見・差別を受けてきました。
ハンセン病と診断された方々は、生涯、療養所から出ることはできず、親や兄弟姉妹と一緒に暮らすことや、結婚しても子どもを生むことは許されませんでした。また、実名を名乗ることができず、亡くなっても故郷の墓に埋葬してもらえないなど、さまざまな苦痛を強いられてきました。この隔離政策は1996年(平成8年)まで継続されていました。
今なお残るハンセン病への偏見・差別をなくしていくために
1996年(平成8年)に「らい予防法の廃止に関する法律」が施行され、明治時代から1世紀近く続いた隔離政策はようやく終わりを告げました。しかし、ハンセン病療養所に入所していた方の中には、完治したにもかかわらず、今でも療養所にとどまる人が少なくありません。高齢で身寄りがないことや、長期間にわたり社会との交流を絶たれてきたこと、ハンセン病に対する偏見や差別が今なお根強く残っていることから、社会復帰が難しい状況になっているのです。
政府としても、ハンセン病の患者・元患者の方々の社会復帰を支援していますが、ハンセン病の患者・元患者の方々が住みよい社会にしていくためには、ハンセン病に対する偏見・差別をなくしていくことが必要です。そのためには、私たち一人一人が、ハンセン病について正しい知識を持つとともに、ハンセン病の患者・元患者の方々、その家族が受けてきた過去のつらい歴史を考えながら、相手の人権を尊重する気持ちを持つことが大切です。
最近では、学校の子どもたちが療養所の見学に訪れ、入所者の話を聞いたり、療養所で地域の人たちとの交流会が行われたりするなど、ハンセン病に対する知識と理解を深めるための活動も広がってきています。
HIV/エイズに対する誤解や偏見
HIV/エイズは、1981年(昭和56年)に世界で初めて症例が発見されて以来、世界中に広がり、2012年(平成24年)時点では、HIV感染者の数は3,530万人と推定されています(参考: UNAIDS『UNAIDSレポート「2013 Report on the Global AIDS epidemic」』)。日本でもHIV感染者・エイズ患者数は増加しており、2012年の新規感染者・患者の報告数は1,449人に上っています(参考:厚生労働省「平成24(2012)年エイズ発生動向」)。
HIVとはエイズを引き起こすウイルスのことです。このHIVによって身体の免疫力が破壊され、本来なら自分の力で抑えることのできる病気(日和見感染症)を発症するのがエイズです。
当初は、治療法がなく、報道では、この病気の恐ろしさのみが強調されて伝えられました。こうして、人々の間に生じた誤解や偏見から、HIV感染を理由に職場への採用が取り消されたり、医療機関で差別的な対応や診療拒否をされたりするといった人権侵害が起こっています。
一人一人の心に「レッドリボン」を
HIVの感染経路は、性的接触、血液感染、母子感染の3つに限られます。握手をしたり、日用品を共用したり、プールやお風呂に一緒に入ったりするといった、日常生活の接触では感染しません。せきやくしゃみなどでもうつりません。つまり、日常生活の中では、性的接触以外で感染することはないのです。
ただし、HIVはたとえ感染していたとしても、自覚症状がほとんどないため、本人も感染に気づかないまま、性的接触などにより、ほかの人に感染を広げてしまうケースもあります。そういう意味では、HIVの感染は、他人事ではなく、だれにとってもごく身近に起こりうることですが、コンドームを正しく使うことによって予防は可能です。また、HIV感染=エイズではなく、エイズを発症するまでには長い潜伏期間があります。現在では治療薬が次々と開発され、HIVの感染を早期に発見し、早期治療を行うことで、エイズの発症を抑えることができるようになっています。HIVに感染しても、適切な治療を受けることで、社会生活を続けていくことができるのです。
アメリカでは、エイズが社会的な問題となってきた1990年(平成2年)頃から、エイズで亡くなった人への追悼の気持ちとエイズに苦しむ人々への理解と支援の意思を示すため、「レッドリボン」運動が始まりました。その運動は、いま、国境を越えた世界的な運動として発展しています。レッドリボンは、エイズに対して偏見をもっていない、エイズとともに生きる人々を差別しないというメッセージです。私たちの周りにも、レッドリボンの輪を広げていきませんか。
よくある誤解・思い込み | 正しい知識 |
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あなたや周りの人の「人権侵害」 一人で悩まず相談を

いわれのない差別や偏見、いじめ、暴力、虐待など、人権侵害を受けて一人で悩んでいませんか。あるいは、皆さんの周りで、人権が侵害され、困っている方はいませんか。そのようなときは、一人で悩まず、法務局が開設している人権相談にご連絡ください。人権擁護委員や法務局の職員が、皆さんの相談をお受けします。相談は無料です。また、相談内容などの秘密も守られますので、安心して相談してください。
<電話での相談は>
- 常設相談

<インターネットでの相談は>
- インターネット人権相談受付窓口(24時間受付)
- パソコン http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken113.html
- 携帯電話 http://www.jinken.go.jp/soudan/mobile/001.html
<取材協力:法務省 文責:政府広報オンライン>
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