平成29年(2017年)9月28日
「ソーシャルビジネス」を支援
社会的課題の解決にビジネスの手法で取り組む方を後押し

子育て支援や高齢者・障害者の介護、環境保護、まちづくり・地域活性化など、私たちの周りには、解決しなければならない様々な社会的課題が数多くあります。このような社会的課題の解決に向けて、ビジネスの手法を活用して取り組むのが「ソーシャルビジネス」です。日本政策金融公庫(略称:日本公庫)では、ソーシャルビジネスの担い手の皆さんを、資金支援と情報支援の両面から、積極的に支援しています。
1.ソーシャルビジネスとは?
ビジネスの手法を用いて、地域社会の課題解決に取り組む継続的な事業
私たちの周りには、子育てや介護・福祉、まちづくり・地域活性化、環境保護などの様々な社会的課題があります。このような社会的課題の解決に向けて、住民やNPO法人(特定非営利活動法人)、企業などがビジネスの手法を用いて取り組む事業を、ソーシャルビジネスといいます。
時代の変化に伴い社会的課題は多様化・複雑化しており、行政だけではこうした社会的課題への対応が難しくなっている中で、社会的課題やニーズを"市場"として捉え、それを解決するための取組を、持続的な事業活動として展開する「ソーシャルビジネス」に注目が集まっています。
ソーシャルビジネスが一般企業の営利事業と最も異なるところは、事業の目的として「利益の追求」よりも「社会的課題の解決」に重点を置いていることです。また、ソーシャルビジネスがボランティア活動と異なるところは、社会的課題に取り組むための活動資金を、寄付や行政からの助成よりも、ビジネスの手法を活用して自ら稼ぎ出すことに重点を置いていることです。
ソーシャルビジネスの定義については、 経済産業省「ソーシャルビジネス研究会報告書(平成20年4月)」[PDF]を参考にすると、次のように説明できます。
ソーシャルビジネスの定義
(1)社会性
現在解決が求められる社会的課題(※)に取り組むことを事業活動のミッションとすること
※社会的課題の例:
環境問題、貧困問題、少子高齢化、人口の都市への集中、高齢者・障害者の介護・福祉、子育て支援、青少年・生涯教育、まちづくり・地域おこし など
(2)事業性
(1)のようなミッションにビジネスの手法で取り組み、継続的に事業活動を進めていくこと
(3)革新性
新しい社会的商品・サービスやそれを提供するための仕組みを開発したり、活用したりすること
ソーシャルビジネスは、定年退職した人が自分の強みを社会のために発揮したり、子育てを終えた女性がその経験を生かしたり、若者が社会的課題の解決に自分の生き方を見出したりするなど、「困っている人を支援したい」「自分の能力や技術を社会のために役立てたい」と考える様々な立場の人々が、様々な形で社会と関わるビジネスです。それは、社会的課題の解決と同時に、活動をする人のやりがいにもつながります。また、新たな雇用や新たな市場の創出にもつながります。
さらに、ソーシャルビジネスの多くは、社会的課題の解決のために、当事者である地域住民が主体となって立ち上げるケースが多いため、地域おこしや社会の活性化につながる活動としても期待されています。
また、本業として他の営利活動を行う企業が、「企業の社会的責任(CSR)」の一環としてソーシャルビジネスに取り組む例も現れています。
2.日本公庫の「ソーシャルビジネス支援資金」
子育て・介護サービス分野など、一部の方は特別利率が適用されます

ソーシャルビジネスに対する支援をさらに推進するために、平成27年2月、ソーシャルビジネス専用の融資制度が創設されました。当制度は、ソーシャルビジネスを営もうとする方または営んでいる方に広くご利用いただけるものであり、保育サービス事業や介護サービス事業等を営む方に対しては特別利率が適用されます。当制度は平成28年2月に拡充され、特別利率の適用要件が緩和されるなど、さらに使いやすいものになっています。
ソーシャルビジネス支援資金(企業活力強化貸付)の概要(国民生活事業)
利用できる方
次の1または2に該当する方
1. NPO法人
2. NPO法人以外であって、次の(1)または(2)に該当する方
(1)保育サービス事業、介護サービス事業等を営む方
(2)社会的課題の解決を目的とする事業を営む方
融資限度額
7,200万円(うち運転資金4,800万円)
返済期間
設備資金:20年以内 (うち据置期間2年以内)
運転資金:7年以内 (うち据置期間2年以内)
担保・保証人
利用者の相談に応じます。
■NPO法人の特例
利率を上乗せすることで、代表者保証が不要になります。
利率
返済期間や担保の有無によって、異なる利率が適用されます。
融資制度の詳細は、日本政策金融公庫「ソーシャルビジネス支援資金」ホームぺージからご覧ください。
このほかにも、使いみちに応じた様々な融資制度があります。各融資制度の詳細は、日本政策金融公庫「ソーシャルビジネス支援資金」ホームぺージからご覧ください。
(参考)日本公庫におけるソーシャルビジネス関連の融資実績
ソーシャルビジネス関連の融資実績の推移
NPO法人向け融資実績の推移
申込みから融資を受けるまで
(1)申込み
借入申込書、企業概要書(または創業計画書)などの必要書類を提出します。
(2)面談
資金の使いみちや事業の状況・計画などについての面談を受けます。
(3)融資
融資決定後、契約に必要な書類を送付します。
手続き完了後、融資金が預金口座に振り込まれます。
※申込みから融資が決まるまでの平均所要日数は2週間程度(土日、祝日を含みます。)です。ただし、相談内容や融資の条件などによっては、多少日数を要する場合もあります。お急ぎの場合など詳しくは、最寄りの支店窓口にお気軽にご相談ください。
・日本公庫(国民生活事業)の融資を利用する際の手続きは、下記のホームページでもご覧いただけます。
日本政策金融公庫「手続きの流れについて」
詳しくは、お近くの日本公庫の各支店(国民生活事業)または「事業資金相談ダイヤル」(電話0120-154-505)までお問い合わせください。
・全国の日本公庫の各支店(国民生活事業)は 日本政策金融公庫「店舗案内」ホームぺージ
・事業資金相談ダイヤルはこちら
3.ソーシャルビジネス支援の融資事例
「ソーシャルビジネス支援資金」等による資金面からの支援を推進
ソーシャルビジネス支援について、日本公庫が行った融資事例を紹介します。
(1)廃校を利用した体験型学習塾を運営するNPO法人を支援
三重県桑名市のNPO法人子どもアイデア楽工は、遊園地の企画に長年携わってきた代表者が、廃校を利用して平成25年に創業した子ども育成塾です。元教師や企業のOBなどが先生となって、体育遊びや料理、ロボットづくり、科学工作など、「遊びながら学ぶ」子ども育成プログラムを有料で提供しています。
創業当初の利用者募集のために、各種の広告宣伝や告知イベントを行いましたが、その費用などに日本公庫の融資を利用。効果的な募集活動を行うことができ、事業計画どおりの利用者を集めることができています。
(写真提供:NPO法人子どもアイデア楽工)
(2)エコで便利な「移動式バイオトイレカー」を開発・レンタルする企業を支援
神奈川県海老名市に本社を置く優成サービス株式会社は、警備・建設・道路規制業務を行う企業です。同社では、高速道路や市街地の建設現場で交通誘導や交通規制業務を行う作業員のトイレの問題を解決するため、おがくずで排せつ物を分解する「移動式バイオトイレカー」を開発しました。
これは、水を使わず下水施設も汲み取りも不要、臭いが発生しにくく衛生的。どこにでも設置が可能で、使用後のおがくずは有機肥料に活用されます。
同社はイベント会場などで障害者向けのトイレ設備が不十分な状況が、障害者の外出の妨げとなっていることに注目。そこで車いす用パワーリフトを備えるなど、障害者でも利用可能なように「移動式バイオトイレカー」を改良。各種イベントなどへのレンタルを行っています。
日本公庫では、その公共性と事業性に注目して運転資金を融資し、その資金は「移動式バイオトイレカー」の整備費用などに用いられています。
(写真提供:優成サービス株式会社)
(3)非電化地域の子どもたちに一灯の明かりを贈るNPO法人を支援
電気は、私たちの便利な暮らしに欠かせない大切なライフラインです。しかし、世界には、電気が届かない非電化地域に暮らし、電気がもたらすメリットを受けられない人が大勢います。NPO法人非電化地域の人々に蓄電池をおくる会(埼玉県)は、そうした非電化地域の人々にリユースバッテリーを供給し、生活を支援するため、平成25年に設立された組織です。同法人では、使用済み蓄電池を回収、再生処理し、電気が通じていない家庭に安価で販売する事業を展開。東日本大震災の復興支援では、被災地にもリユースバッテリーを供給しました。
現在は、他のNPO法人などとも協働しながら、海外の非電化地域へのリユースバッテリーの供給や、国内の独自電源向けにリユースバッテリーの販売事業を行っています。ケニアで進めている再生バッテリー活用プロジェクトでは、バッテリー再生器の提供とバッテリー再生技術の指導にあたる予定です。最終的には、現地でのバッテリーリユース、リサイクルの仕組みをつくることを目標としています。
日本公庫では、創業当初の仕入れなどに必要な運転資金を融資しました。
(写真提供:NPO法人非電化地域の人々に蓄電池をおくる会)
4.ソーシャルビジネス支援の取組み
融資事例集、ホームページコンテンツ、ソーシャルビジネス支援ネットワーク等を活用した情報面からの支援を推進
日本公庫では、資金面の支援のほか、経営ノウハウ、資金調達に関する情報、先進的な取組み事例等を事例集やホームページにより提供するなど、情報面の支援も推進しています。また、社会的課題の解決に取り組むソーシャルビジネスを周知していくため、シンボルマークを作成して、広報活動に活用しています。

ソーシャルビジネスマーク
企業、NPO、住民、行政、公的機関など、さまざまな主体が手を取り合って、地域社会が抱える課題の解決に取り組む様子を、ソーシャルビジネス(Social Business)の「S」を用いて表現しています。
(1)融資事例集などの発行
・ソーシャルビジネス事例集『Design your Mission』[PDF]
事業内容を中心に、社会起業家11人の取組みを紹介
・ソーシャルビジネス事例集『社会起業家の知恵~ソーシャルビジネスと融資~』[PDF]
社会起業家10人が自らの経験を踏まえて語る融資の活用方法を紹介
・『ソーシャルビジネスの資金調達入門』[PDF]
ソーシャルビジネスの資金調達手段について専門家が紹介
・ソーシャルビジネス啓発誌『ソーシャルビジネスってなんだろう?』[PDF]
3つの活動分野(子育て支援、まちづくり支援、途上国の支援)を題材に、ソーシャルビジネスをコミック形式で紹介
(2)主なホームページコンテンツ
『ソーシャルビジネスの経営講座』
事業計画、人材確保・育成、広報をテーマとした専門家による動画講座を配信
『お客さまインタビュー』
日本公庫を利用したお客さまの事業内容、日本公庫を利用した経緯等を紹介したインタビューを配信
(3)ソーシャルビジネス支援ネットワークの取組み
地方公共団体、地域金融機関、NPO支援機関等と連携し、経営課題の解決を支援するネットワークの構築に取り組んでいます。ネットワークを構成する各支援機関の施策・サービスをワンストップで提供するとともに、経営支援セミナーや個別相談の実施により、法人設立、事業計画の策定、資金調達、人材育成といったソーシャルビジネスの担い手の皆さんが抱える経営課題の解決を支援しています。
平成29年3月末現在のネットワーク数は102件にのぼります。
ソーシャルビジネス支援ネットワークのイメージ図
コラム
地域におけるソーシャルビジネス支援のネットワークづくり
日本公庫では、富士市、富士市民活動センターコミュニティf、富士商工会議所、富士市商工会、富士信用金庫と連携し、ソーシャルビジネス支援ネットワーク「ふじソーシャルビジネス支援ネット」を立ち上げました。
「毎月21日はソーシャルの日」と銘打ち、毎月21日に定例相談会「ソーシャルなんでも相談会」を開催しており、ネットワークの立ち上げによって、これまで単独の機関では対応が難しかった相談にも、各機関の強みを生かし、連携して対応できるようになりました。
日本公庫では、今後も、融資による支援はもとより、様々な形でソーシャルビジネスの担い手の皆さんを支援していきます。
(図:ふじソーシャルビジネス支援ネット)
(取材協力:財務省、(株)日本政策金融公庫 文責:政府広報オンライン)
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