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不妊治療の現場から~不妊は珍しいことではありません

令和3年(2021年)12月10日

「5.5組に1組」。これは、「実際に不妊の検査や治療を受けたことがある夫婦の数」です。不妊症の検査や治療を受けたことがある方も年々増えています。今や不妊症は、決して珍しいことではないのです。でも、不妊症に対する偏見や理解不足が、治療を受ける方にとって大きな負担となっています。子どもをほしいと願う人が、前向きに治療に取り組めるために、不妊治療に対して私たちが正しく理解し、偏見をなくしていくことが今、求められています。

不妊治療の現場から~不妊症は決して珍しいことではありません

紹介動画では、「不妊治療をしている方が抱えている問題や不妊症に関する周囲の理解の大切さ」、「不妊症と不妊症に関する周囲の理解の大切さ」について解説しています。
本動画の制作に際して行ったNPO法人Fine理事長 松本亜樹子さん及び東京大学大学院 産婦人科学 大須賀 穣教授へのインタビュー内容の全文を掲載します。

インデックス

1

NPO法人Fine理事長 松本亜樹子さんへのインタビュー

不妊体験を持つセルフ・サポートグループとして活動されているNPO法人Fine理事長 松本亜樹子さんに不妊治療をしている方が抱えている問題や不妊症に関する周囲の理解の大切さについてお伺いしました。

NPO法人Fine理事長 松本亜樹子さんのお写真

Q.不妊治療をしている方が抱えている問題にはどんなものがあるのでしょうか。

松本亜樹子さん(以下、松本さん)
不妊治療には大きく4つの負担があると言われています。それは身体的な負担と精神的な負担、それから経済的な負担、時間の負担です。つまり体と心、お金と時間の4つの負担があると言われています。

Q.具体的な負担の内容を教えてください。

松本さん
身体的な負担で言いますと、やはり治療全体にかかる負担というのが、ホルモン療法をしますので、その副作用で体がしんどいであるとか、それから例えば採卵などになると手術になりますので、そうすると体の負担が辛い、痛いであるとか、それから副作用で苦しいという声をよく聞きます。

Q.負担が大きいのは男性よりも女性でしょうか?

松本さん
不妊治療は男女で一緒に行うものですが、病院に行くのはほとんど女性のため、女性の負担が大きくなってしまいます。

Q.精神的な負担の内容を教えてください。

松本さん
精神的な負担は本当に大きくて、例えばそもそも自分たちが不妊だということを周囲に話したくないとか、人に知られたくないということがとても大きいので、誰にも言えずに夫婦二人で不妊治療のことを抱えてしまうということがあります。

それから周囲から「子どもはまだなの?」とか「早く孫の顔をみせてあげて」とか、「そろそろ子どもつくったほうがいいよ」なんていう声を聞いてプレッシャーになるというのもすごくよく聞く話です。

Q.男性よりも女性のほうが周囲から言われやすいのでしょうか。

松本さん
不妊の原因は本当に男女半々で同じくらいあると言われていますが、どうしても女性のほうが子供を産む性ということがあるので、女性のほうが言われやすいです。

女性も本人がすごくコンプレックスというか自己嫌悪になってしまうというところが精神的負担ではありますし、例えば自分よりも後に結婚をしたのに、その方のほうが先に妊娠する。それを心から祝えない自分がすごく嫌だとか、そうした自己嫌悪みたいな声もよく聞きます。

Q.不妊治療と仕事との両立についてはいかがでしょうか。

松本さん
仕事との両立は大きな課題です。これが時間の負担ということになるのですが、不妊治療は、しょっちゅう病院に行かなければならなかったり、あるいは突然に病院に行かなければならなかったりすることがあります。そうした不妊治療の特性を周囲が分かっていないことがほとんどです。

だから仕事をしているときに仕事との両立が難しくなる。ほとんどの方が周りの人に不妊治療をしていることを言っていないので、「なんでそんなにしょっちゅう休まないといけないの?」とか「最近、早退が多いよね」なんて言われると本当のことを言えないし辛い、周りからの信用も無くしてしまう、ということもあります。

そして、本当のことを言えば言ったで、今度は、私たちはプレマタニティハラスメントと呼んでいるのですが、不妊治療に対するハラスメントを受けてしまうということがあります。「そんなに不妊治療をするのなら、仕事と不妊治療とどっちをやるのか選んで欲しい」とか「周りがこれだけ迷惑をしていることをそろそろ気が付いて欲しい」なんていうことを言われたりして、仕事をとるのか、不妊治療をとるのか、二者択一を迫られるケースというのも決して少なくはありません。

Q.実際に退職する女性もいるのでしょうか。

松本さん
不妊退職といわれる退職ですが、厚生労働省の調査では4人に1人の働く女性が不妊治療をしながら仕事を続けていたけれども両立ができなくて不妊退職を選んでいるというデータもあります。

Q.これまでお伺いしてきて、不妊症は特別なものではないということがまだまだ理解されていないということが分かりました。

松本さん
今は5.5組に1組のカップルが何らかの不妊治療や検査などを受けている時代です。不妊症は決して珍しいことではないと思います。けれども珍しいと思われてしまうのは、やはり当事者が言っていないからなのです。言いづらくて言っていないから。でも不妊治療を受けている方は決して少なくはありません。できれば特別視しないでいただきたい。周りには不妊症の方が多くいるのだということを知っていただきたいと思います。

それから、不妊症の当事者の方も自分自身のことをすごくレアな存在だと思う必要はありません。多くの方が不妊治療を受けているのだから、恥ずかしいことであるとか、また罪悪感を持つ必要もありません。同じように悩んでいる方がたくさんいることを知ることで、周りの方にも相談しやすくなるのではないかと思います。

周りの方も不妊症の当事者の方も、現状の数値をよく理解していただいたうえで、不妊治療を受けている方を決して特別視しないという意識を持っていただけるとありがたいと思います。

Q.実際に不妊治療を受けるまでは、どのような負担があるかを知らなかった方も多くいるのでしょうか。

松本さん

実際、不妊治療を他人事だと思っているうちは情報が頭に入ってこないのです。実際に自分が不妊当事者になってはじめて、こんなに大変なのかと、病院に行くまでに時間がかかることであったり、あるいはお金がとてもかかることであったり、また周りの精神的なプレッシャーというのがこんなにあるのかということが、ほとんどの方にとって想定外だったということをよく聞きます。不妊症や不妊治療に関する知識や情報を早くに取り入れておくことが非常に大事だと思います。

決して他人ごとではないということを考えていただきたいと思います。若いうちから意識しておけば、例えば事前に検査してみるということもできます。検査を受けるか受けないかは一人一人の考えですが、妊孕性といって自分の卵巣予備能力を図るテストがあります。どれだけ妊娠する力があるのか、ちょっとした目安が分かるのです。こういった検査を受けて知っておくこともできます。ブライダルチェックといったものもありますが、例えば結婚をすることを決めたときなどにパートナーと一緒にお互いに検査をしてみるということができるといいと思います。

今、不妊症で悩まれているのは40代の方が多いのです。結婚も出産も先送りしてきて困っている方が多いので、早くに知っておくことはとても大事だと思います。

2

東京大学大学院 産婦人科学 大須賀 穣教授へのインタビュー

子宮内膜症や子宮筋腫を専門とし、それらを原因とした不妊症の治療にも積極的にあたっている東京大学大学院 産婦人科学 大須賀穣教授に不妊症と不妊症に関する周囲の理解の大切さについてお伺いしました。

東京大学大学院 産婦人科学 大須賀穣教授のお写真

Q.不妊症と不妊症に関する周囲の理解の大切さについて教えてください。

大須賀穣教授
不妊症は多くのカップルにみられるとても一般的な病気です。不妊症の原因には様々なものがあります。

まず正常な妊娠を考えてみましょう。正常に妊娠するためには、卵子が順調に発育すること。順調に排卵して精子と卵子が受精すること。そして卵子が卵管の中を通って子宮の中まで運ばれること。そして子宮の中にくっつくこと。このすべてが必要です。どの段階に異常があっても不妊症になります。これらは医学的には無排卵症、無精子症、卵管閉塞、着床不全といったぐあいに呼ばれるものです。自分で分かるような症状が出ないあいだに、知らず知らずのあいだに不妊になっていることも少なくありません。

また、人という生き物は年齢を取るとともに妊娠しにくくなります。特に女性の場合は30歳の半ばを過ぎるあたりから、急激に妊娠しにくくなります。また、年齢を重ねるとともに流産しやすくなっていきます。男性の場合も年齢とともに妊娠させる能力が減っていくということが分かっています。ですので「不妊かな」って思ったら、なるべく早いうちに医療機関等に受診していただくことをおすすめします。

また、不妊症の原因は男性も女性も約半々です。ですから受診の際には、できましたら男性女性一緒に、まずは受診して頂ければよろしいかと思います。

不妊症には周囲の理解もとても大事です。職場や周囲が理解をして、子供を持ちたいとおもう人たちが安心して検査や治療を受けられるような環境をつくっていくことも大切です。

(取材協力:厚生労働省 文責:政府広報オンライン)

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