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児童虐待から子どもを守るために
民法の「親権制限制度」が見直されました

最終更新平成26年3月26日

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子どもを育てることは親の権利であり、義務でもあります。親が子どもを育てる権利と義務は「親権」といって民法で規定されています。近年、その親権を濫用し、子どもに暴力を振るったり、子どもを放置したりするといった児童虐待が増えています。そのような中で、児童虐待から子どもを守るため、民法の「親権制限制度」、「未成年後見制度」が改正され、平成24年4月1日から施行されています。

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後を絶たない児童虐待

全国の児童相談所に寄せられる児童虐待の相談件数は、近年増え続けており、平成24年度の相談対応件数は66,807件(速報値)に上ります。「身体的虐待」、「ネグレクト(養育放棄)」、「性的虐待」、「心理的虐待」によって、子どもを死に至らせる深刻な事件も後を絶ちません。

児童虐待の多くは、本来、子どもを守り育てる場であるはずの家庭で発生し、子どもの保護者である親が、虐待の加害者となっています。こうした児童虐待を早期に発見し、子どもを守るために、中心的な役割を果たしているのが児童相談所です。児童相談所では、児童虐待に関する相談や通報を受けて、家庭訪問をして子どもの安全を確認したり、子どもを緊急に保護する必要がある場合には、子どもを一時的に保護したりして、子どもの安全を守ります。

しかし、虐待する親の中には、親の権利を主張し、「しつけをしただけ」と虐待を認めなかったり、児童相談所が一時保護した子どもを強引に連れ帰ろうとしたりする親もいます。

児童相談所での児童虐待相談対応件数

児童虐待相談の対応件数(資料:福祉行政報告例(厚生労働省))

資料:厚生労働省

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児童虐待防止の観点から、民法を改正

虐待を行う親から子どもを引き離せない背景には、「親権」の問題があります。

親権とは、未成年の子どもを育てるために親が持つ権利と義務の総称で、「民法」に規定されています。親権には、子どもの身の回りの世話をする、子どもに教育やしつけをする、子どもの住む場所を決める、子どもの財産を管理するといったことが含まれています。

しつけと称して子どもに暴力を振るったり、暴言を吐いたり、子どもの世話を放棄したりするなどの児童虐待は、親権の濫用に当たります。このような親権の濫用があったとき、民法では、子どもの親族などが家庭裁判所に申し立てることにより、親権を奪うことができる「親権喪失」という制度が設けられています。しかし、親権喪失では、親権を無期限に奪ってしまい、親子関係を再び取り戻すことができなくなるおそれがあります。そのため、児童虐待の現場では、虐待する親の親権を制限したい場合でも、「親権喪失」の申立てはほとんど行われていないのが実状です。

こうしたことから、親権を奪う以外の方法で、虐待する親の親権を制限できる新たな制度を設けることなどを目的に、児童虐待防止の視点から民法の改正が行われました。

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親権が「子どもの利益のため」のものであることを明確化

親権が子どもの利益のために行われるべきであることは、多くの人が当然のことと考えていることでしょう。しかし、民法にはそれを明確に示す規定がなかったため、親権が子どもに対する親の支配権のように誤解され、親権の濫用による児童虐待にもつながっています。

そこで、今回の改正では、親権が子どもの利益のために行われることを改めて明確にするため、民法の親権の規定の中に、「子の利益のために」という文言が追加されました。

民法 改正前 改正後
第820条 親権を行う者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。 親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。
第822条 親権を行う者は、必要な範囲内で自らその子を懲戒し、又は家庭裁判所の許可を得て、これを懲戒場に入れることができる。 親権を行う者は、第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。

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最長2年間、親権を制限できる「親権停止」の制度を創設

虐待する親から子どもを守るために行う親権制限の制度では、主に次の点が改正されました。

(1)期限付きで親権を制限できる「親権停止制度」の創設

従来の「親権喪失」に加え、期限付きで親権を制限する「親権停止」の制度が創設されました。これは、期限を定めずに親権を奪う親権喪失とは異なり、予め期間を定めて、一時的に親が親権を行使できないよう制限する制度です。停止期間は最長2年間とされ、家庭裁判所が親権停止の原因が消滅するまでに要すると見込まれる期間、子どもの心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して、停止期間を定めます。親権停止を請求できるのは、親による親権の行使が困難なとき、または親権の行使が不適当であることによって、「子どもの利益を害するとき」です。

虐待をする親の親権を制限し、親から子どもを一時的に引き離すことで、子どもの心身の安全を守ると同時に、親権が停止されている間に虐待した親や家庭環境を改善し、親子の再統合を図ることがこの制度のねらいです。

(2)親権喪失の原因の明確化

これまでは、親権喪失の原因については「親権を濫用し、又は著しく不行跡であるとき」と規定されていましたが、「子の利益が著しく害されている」状況があるという点は明示されていませんでした。今回の改正では、親権喪失の原因について、親による虐待または養育放棄(子どもに食べ物を与えない、子どもに医療を受けさせないなどのネグレクト)があるとき、親による親権の行使が著しく困難または不適当であるために「子どもの利益を著しく害するとき」ということが明確化されました。

(3) 管理権喪失の原因の見直し

親権の中には子どもの財産を管理する権利(管理権)もありますが、従来、親の財産管理によって子どもの財産を危うくしたときしか、管理権を奪うことができませんでした。改正法では、子どもの財産を危うくした場合でなくても、親による管理権の行使が「子の利益を害するとき」には、親の管理権を喪失させることができるようになりました。

(4)親権喪失などの請求権を子ども本人や未成年後見人などにも拡大

改正前の民法では、親権喪失などを家庭裁判所に請求できるのは子どもの親族、検察官、児童相談所長(親権喪失のみ)に限られていましたが、今回の改正によって、これに加えて、子ども本人、未成年後見人および未成年後見監督人(※)も請求できるようになりました。これによって例えば、一度親権の停止がされ、未成年後見人が選任されているような場合に、親権停止の期間が満了してしまう前に、未成年後見人が改めて親権停止の審判、あるいは親権喪失の審判を申し立てることができるようになります。

※「未成年後見人」は親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないときに家庭裁判所がその未成年者に対して選ぶ後見人。「未成年後見監督人」は未成年後見人の事務を監督する人。

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未成年後見制度の見直しで、社会福祉法人などの法人が後見人になることも可能に

親権制度の見直しとともに、親権が制限された親に代わって子どもの世話などを行う「未成年後見人」の制度も見直されました。

親権喪失や親権停止、管理権喪失の審判がされ、親の親権が制限されたとき、家庭裁判所では、申立てにより親権者がいなくなった子どもに対して、未成年後見人を選任します。現行の制度では、未成年後見人として選任できるのは、一人、かつ、個人に限られています。しかし、一人の個人が未成年後見人を一手に引き受けることは負担が大きく、適切な未成年後見人の引受け手が見つかりにくいのが実状です。

そこで、未成年後見人選任の選択肢を広げるため、個人だけでなく、社会福祉法人などの法人も未成年後見人として選任できるようになりました。また、併せて複数の未成年後見人を選任することができるようになりました。これによって、例えば、子どもの日々の世話(身上監護)は親戚が行い、遺産などの子どもの重要な財産の管理は弁護士などの専門家が行うというように、それぞれ分担して未成年後見人の責務を果たすことができます。

また、児童福祉法の改正によって、里親に預けられている子どもや一時保護中の子どもに親権者など(未成年後見人を含む)がいない場合は、親権者などが見つかるまでの間、児童相談所長が親権を代行することになりました。

今回の改正では、離婚後の子どもの監護に関する事項についての規定も見直され、離婚の際に子どもの監護について協議する必要な事項として、親子の面会交流や養育費の分担が明示されるとともに、子どもの監護について必要な事項を定めるときには「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」という理念が明記されました。

民法改正に基づく新しい親権制限制度や未成年後見制度は、平成24年4月1日から施行されています。

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<取材協力:法務省  文責:政府広報オンライン>

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